原子番号1番である水素を発生させ、その性質を調べる。
水素の発生には21mm試験管を使い、反応させる亜鉛はあらかじめ硫酸銅につけたものを適当量いれて用意しておく。
発生用試験管にはゴム栓・ゴム管・ガラス管をつけ水上補集する。
発生には6mol/l塩酸15mlを測り取り発生用試験管に加えたならばすばやくゴム栓をするとともに水を入れたポリビーカーにつけさせる。
以上の操作により水上捕集の方法で集気ビンに4本ためる。
1本目:そのまま点火
点火には30cm程度の針金の先にろうそくを点けたものを用いる。
集気ビンのふたを取り去ると同時にガスバーナーの種火で点火したろうそくを近づける。
点火後、ろうそくはすぐに吹き消す。
→炎の色を観察。水素は無色の炎で燃える
2本目:空気と混ぜて点火
空の集気ビンにふたをし、水素の入った集気ビンの上に逆さにのせる。
ふたを2枚あわせて引き抜いたならば、2〜3秒程度で元に戻し、それぞれの集気ビンに対して1本目と同様に点火する様子を観察する。
→空気(酸素)と混ぜることにより、勢いよく燃焼。
→水素は軽い気体なので水素を下にするとよく混ざる。
演示:水素のシャボン玉
水素はキップの装置により発生。誘導管の先をうすめた中性洗剤の中につけ、シャボン玉をつくる。
ガスバーナーの種火を近づけ、点火。
演示:酸水素鳴気
ひびの入っていない集気ビンに水素と酸素を2:1の割合で入れておき、ろうそくの炎で点火する。
→大きな音とともに爆発。
3本目、4本目:空気と混ぜて点火
2本目と同様の操作で行うが、今度は空気を下に水素を上にして行う。
3本目は2本目と同様、2〜3秒 4本目は30秒〜1分程度接しておく。
→水素は軽い気体なので短時間では空気と混ざらない。。しかし、長時間では拡散により混ざる。
5本目:逆さにして空気中で点火
逆さに集気ビンをもち、ふたを取ったならばすぐさま火のついたろうそくを深く差し込む。ろうそくの炎が消えたならば、ゆっくりとろうそくを出すことにより、再び点火。手早く行うと5〜6回は消火・点火が繰り返される。
→水素中ではろうそくは燃えない。水素の炎は無色で見えないが集気ビンの口のところで燃えている。
アルカリ金属の性質を知るとともにその化合物の性質について学ぶ
21mm試験管の底を平らにし、マグネットスターラーでかき混ぜられるように変形する。
この試験管はビーカーの水浴にいれ28〜31℃ぐらいを保つようにする。
飽和食塩水5mlをこの試験管にいれ、誘導管を通してアンモニアを十分に吸収させる。
※アンモニアは濃アンモニア水を加熱して発生させる。
アンモニアが飽和に達したならば、二酸化炭素を気長く通じる。
※二酸化炭素の発生にはキップの装置を用いた。
15〜20分程度で炭酸水素ナトリウムが析出してきて白濁が確認できる。
白濁した後、なお5分程度反応させ、吸引ろ過でろ過する。
得られた炭酸水素ナトリウムは試験管にうつし加熱、発生した気体を石灰水に導き二酸化炭素であることを確認する。
加熱後に残った炭酸ナトリウムには塩酸を注ぎいれ、炭酸塩であることを確認する。
アンモニアソーダ法で二酸化炭素を反応させている間に以下の演示を行う。
伝導性・展性を見る。
Li、Na、Kの小片をナイフで切り、新しい切り口を見せる。薬さじでつぶしてみる。
電球の平行線の内、一本を途中で切り銅線をつけたものを用意し、Naの固まりにさし伝導性のあることを確認。
→すべてやわらかくナイフできれるが、金属の特徴である展性・延性、電導性などがある。
水との反応
300mlのビーカーに90mmのろ紙をひき、Li、Na、Kの小片をおいた後、洗ビンから水を加える。
→Li以外は炎をあげて燃える。炎色反応が確認できる。
反応後の水溶液
フェノールフタレインを加えたビーカーの水にLi、Na、Kの小片を入れ、反応を見る。
→特にKの反応は激しく多量の水に浮かべても炎をあげて反応する。反応後の水は塩基性のため赤く染まる。
PETボトルに二酸化炭素を入れておき、6mol/l NaOHを15mlほど注ぎいれ、すぐさまふたをしておく。
→2〜3分程度で音とともにPETボトルがへこむ。
アルカリ土類金属の性質を知るとともにその化合物の性質について学ぶ
水との反応
ビーカーに水を入れフェノールフタレインを数滴加えた後、Caの単体をいれる。
→アルカリ金属の反応と比較。
同様に試験管中で行い、試験管の口をガスバーナーの種火に持っていく。
→水素の確認
SによるCaの酸化
試験管にCaを数粒入れ、その上に3cmほどの硫黄末をいれガスバーナーで強熱する。
→突然、明るく輝いて反応。
炭酸カルシウムの性質
大理石2gを乳鉢で細かく砕く。薬さじの小さじいっぱい程度は試験管にうつし、水5mlとフェノールフタレインを加える。続いて塩酸を加える。
→CaCO3の水溶性および塩基性の確認。
大理石から生石灰
残った大理石はスタンドに固定した幅1cm長さ10cmぐらいのといにのせてガスバーナーの最強の炎で5分程度加熱する。
→途中から大理石は明るく輝き、CaCO3→CaO+CO2の反応がおこる。
生石灰から消石灰
反応後の大理石は生石灰になっているので、乾いた試験管をといにかぶせすべて試験管にうつす。ここに水1mlを加える。
→発熱があることを確認。
消石灰から石灰水
上の試験管にさらに15mlの水を加え、よく振った後、ろ過する。この石灰水は以下の3つの反応に使用する。
・フェノールフタレインを1滴加える。
→炭酸カルシウムよりも濃い赤色になる。
・ガラス管で呼気をいれる。
→白濁。炭酸カルシウムの生成。
・水で2倍に薄め、炭酸水素ナトリウムを加熱して発生した二酸化炭素を通じる。
沈殿が消失したら、沸騰石を2〜3粒入れ加熱する。
→始め白濁。続いて沈殿が消える。さらに加熱すると再び白く濁る。
・6mol/l HClおよび6mol/l NaOHを試験管に3mlずつとり、小さじ1杯程度のMg末を加える。
反応がおこったならば、試験管の口をガスバーナーの種火に近づけてみる。
→Mgは塩酸とのみ反応し、水素発生。
・同様にSiについて行う。Si末は常温では反応がおこらないので、それぞれ加熱してみる。
→Siはアルカリとのみ反応し、水素発生。
・同様に5×5cm程度のアルミホイルを折り畳み行う。
→Alは酸・アルカリいずれとも反応し、水素発生。
直径12〜13cmの植木鉢を三脚にセットし、その下には砂を入れた砂皿をおく。
固めの洋紙をろ紙の要領でおり、その中にFe2O3 15g、Al末 8gをよく混ぜ合わせていれる。
小さじ1杯程度の塩素酸カリウム真ん中に盛り、5cm程度のマグネシウムリボンを立てる。
マグネシウムリボンに点火。
→大きな炎とともに溶けた鉄が植木鉢の穴からこぼれおちる。
同素体をもつ硫黄・炭素・酸素・リンの同素体を作り、性質の違いをみる。
斜方硫黄(S8)
試験管に3ml程度の硫黄末をいれ、CS2 5ml程度に溶かす。
ろ紙を漏斗に取り付けるが、水でぬらさない。そこへ上のCS2溶液を注ぎ、ろ過する。
ろ液は時計皿にだし、自然に乾燥させる。
→ひし型の結晶が現れてくる。
単斜硫黄(S8)
試験管に10ml程度の硫黄末をいれ、遠火でゆっくりと溶かす。
※部分的に温度が上がると赤みを帯びてくるのでよくない。よく振りながら加熱する。
ろ紙をおり、手で持つ。そこに上の融解液をいれ、じっともつ。
表面が固まってきたらろ紙を一気に開く。
→内部に針状の結晶ができている。
ゴム状硫黄(Sn)
上で使った試験管に5ml程度の硫黄末を補い、段ボールで試験管をまいて強く加熱する。
沸騰するぐらいまで加熱すると全体に赤黒く変色する。これを、100ml用ビーカーにいれた水に流し込む。
→硫黄はゴム状になり、弾力がある。冷えれば硬くなる。
ダイヤモンド
ガラス切りの人工ダイヤモンドを見せる。
黒鉛
割り箸の半分をアルミホイルで固く巻き付け、ガスバーナーの最強の炎で5〜10分間加熱し続ける。
→高温で炭化した場合、黒鉛分が多くなり、伝導性がよくたたけば乾いた金属的な音をだす。
不定形
割り箸の半分を試験管にいれ短いガラス管を通したゴム栓でふたをする。
スタンドに試験管の口をやや下向きに固定し、緩やかに加熱する。
途中で発生する煙はガラス管の先にガスバーナーの炎を持っていき燃やしてしまう。
煙が出なくなるまで行う。
→低温で炭化したものは不定形で、吸着力が強い。
試験管に溜まった液は蒸発皿にとりだし、リトマス紙を使い液性を調べる。
→試験管の中に溜まる液体は木酢液で酢酸エタノールなどを含む。
上の2種類の木炭について、伝導性・吸着力などを比較する。
酸素からオゾン
オゾン発生装置があればそれをつかう。
オゾン発生装置がない場合には、リービッヒ冷却管の一端をゴム栓で閉じ、もう一方から飽和食塩水をいれ、銅線を通したゴム栓でふたをする。冷却管の胴の部分にはアルミホイルを巻き付ける。
通常、水を通す通路にゴム管を取りつけ、酸素を通じる。
中心の銅線と胴体のアルミホイルに電極を取り付け、ネオントランスまたは誘導コイルで放電させる。
発生したオゾンは、ヨウ化カリウム水溶液に希硫酸をくわえた試験管に通じる。
→しばらく放電を続けていると、オゾンの生臭い臭いが漂ってくる。ヨウ化カリウムはオゾンにより酸化されてヨウ素をつくり、赤褐色に変色してくる。
赤リンから黄リン
長さ30cm程度のガラス管の一端を溶かして閉じておく。
ガラス管の一番奥に米粒程度の赤リンをいれ、スタンドに水平にとめる。
ガラス管の口のあいている側にはガラスウールを軽くつめて、赤リンの部分を緩やかに加熱する。
気化したリンは、ガラス管の加熱していない部分に黄リンとなって付着する。
ガラス管がさめたならば、CS2 2ml程度を注ぎいれ黄リンをとかす。
この溶液を乾いたろ紙に流しだし、しばらく放置する。
→CS2が蒸発すると、煙を上げはじめやがて自然発火する。
炭素・珪素の単体については、すでに学習済み。今回は性質について、授業の始めに確認しておく。
発生
ギ酸 2mlに水2mlと濃硫酸2mlを混合したものを試験管に加える。
ガラス管を通したゴム栓をし、ゴム管を通じてガラス管に導き、緩やかに加熱しながら、水上補集により集気ビン2本集める。
性質
1本目:燃焼
集気ビンのふたを取り去り、すぐにガスバーナーの種火を差し出して点火。
→青白い炎をあげて燃える。
2本目:石灰水との反応
石灰水5mlを集気ビンに入れ、振ってみる。
→反応無し。
ふたを取り、点火したら再びふたを閉め、振ってみる。
→一酸化炭素は燃焼により、二酸化炭素に変わる。
水ガラスを5倍体積に希釈したもの10mlを三角フラスコにいれる。
指示薬としてフェノールフタレイン1滴、マグネットスターラー用回転子をいれ、マグネットスターラーの上に置く。
ビュレットには0.1mol/l HClをいれ、10mlまで一気に、以降三角フラスコの様子を見ながら徐々に加えていく。
→15ml程度のところで、一気にゲル化し固まる。フェノールフタレインは薄い赤色を示す。
気体のアンモニアを200ml用注射器に100mlとる。
石英管にスチールウール適量をつめ、三方活栓をへて捕集用注射器へとつなぐ。
石英管を加熱しながらアンモニアを往復させると分解がおこり、体積が200mlに増加する。
得られた気体は、酸化銅をつめた石英管の先に塩化カルシウム管をつなぎ、酸化銅の入った石英管を加熱しながら別の注射器との間を往復すると水素が水にかわり、塩化カルシウム管に吸収され、体積が50mlに減少する。
→アンモニアの製法であるハーバー法の反応式を理解させる。
発生
塩化アンモニウム 2gと水酸化カルシウム 3gを紙の上で薬さじを使い混ぜ合わせる。
乾いた試験管に上の混合物を入れ、スタンドに水平よりやや口を下向きにして固定する。
L字管を通したゴム栓をし、L字管の先は上向きにする。
試験管全体を加熱していくとアンモニアが発生するので、乾いた試験管をL字管にかぶせ、あつめる。
集まったことの確認にはガラス棒に濃塩酸をつけ、捕集用の試験管の口のところに近づける。
→試験管からアンモニアがあふれ出ていれば、白煙を発生する。NH3+HCl→NH4Clの反応による。
白煙が確認できたら試験管の口を親指でふさぎ、水槽の水の中でゆるめる。
→アンモニアは極めて水に溶けやすいので、いきおいよく水が浸入してくる。
以上の操作を繰り返し、2本集める。
性質
以下の試薬でアンモニアの性質を調べる。
・リトマス紙
・フェノールフタレイン
・ネスラー試薬
希硝酸・濃硝酸・発煙硝酸等の性質の違いを確認するとともに、二酸化窒素・一酸化窒素の性質について学ぶ
希硝酸
約6mol/l
酸化力を持つ
濃硝酸を希釈する
揮発性
濃硝酸
約13mol/l
酸化力を持つ
揮発性
分解して二酸化窒素に変わるので、褐色ビンに保存
発煙硝酸
濃硝酸に二酸化窒素を溶かしたもので、特に酸化力が強い。
青リトマスを赤く変色
希硝酸 1mlを水で10mlに希釈する。
これを青リトマスにつける。
→赤く変色。酸性。
金属と反応して水素を発生。
上の希釈した硝酸を氷水でよく冷やしておく。
マグネシウム末を小さじで1杯程度入れ、親指で試験管の口をふさぎ、発生した気体をためる。
ガスバーナーの種火の中に差し出す。
→キュンという音をたてて燃焼。水素の発生。生徒にやらせた場合燃焼する確立は5割程度でした。
塩基との反応
0.5mol/l 炭酸ナトリウム水溶液を5ml試験管にとり、フェノールフタレイン1滴を加える。
→炭酸ナトリウムの塩基性により、赤く変色。
希硝酸 1mlを加える。
→炭酸ナトリウムが中和され、フェノールフタレインの色が消える。二酸化炭素発生。
イオン化傾向の小さい、金・白金・銀・水銀・銅は酸化力のない酸には溶けない。
しかし、酸化力を持つ酸は、銀・水銀・銅を溶かす。
試験管に銅片を、1.5cm程度の高さまでいれ、配布する。
濃硝酸 5mlをはかりとり、銅片に注ぎ込む。
すぐにL字管を通したゴム栓をはめ、下方置換で乾いた試験管3本に集め、ゴム栓でふたをしておく。
捕集が終わったらすぐにL字管を外し、水道水を注ぎ込む。その後、銅片を水洗いし、試験管に入れたまま返却
→濃硝酸は相手を酸化し二酸化窒素を発生。
2HNO3→H2O+2NO2+(O)
銅は酸化されて酸と反応
Cu+2HNO3+(O)→Cu(NO3)2+H2O
上の二つの式をあわせて
Cu+4HNO3→Cu(NO3)2+2NO2↑+2H2O
赤褐色の気体・刺激臭・空気より重い などを確認
温度による変化
二酸化窒素の入った試験管の内、1本を氷水につける。
他の1本をガスバーナーの炎で軽くあぶる。
→二酸化窒素は温めると色が濃く、冷やすと色が薄くなる。
2NO2=N2O4+Q による。
水への溶解
水槽に半分程度の水を入れ、二酸化窒素の入った試験管のゴム栓を水の中ではずす。
→水が浸入し、無色の気体が残る。
水槽から試験管を持ち上げ、空気を中にいれると、薄く褐色に変化する。
→無色の気体はNO。空気に触れて二酸化窒素に変化。
水溶液の反応
二酸化窒素の入った試験管に水を3ml入れ、よく振って溶かす。
これに濃硫酸 3mlを数回に分けて加え、氷水で冷やしておく。
0.5mol/l 硫酸鉄(2)水溶液 3mlを上の液と混ざらないように静かに加える。
→下層と上層の硫酸鉄の間に褐色環ができる。
褐色環ができた溶液をよく振り混ぜる。
→褐色環が消え、全体に無色になる。
NO3-の確認の褐色環反応である。二酸化窒素の水への溶解は単純な溶解でないことがわかる。
この褐色環は熱に弱く、振り混ぜて消失しない場合でも加熱してやると消失する。
銅片を試験管に、1.5cm程度の高さにまでいれ、配る。
希硝酸 8mlを注ぎいれ、L字管を通したゴム栓でふたをする。
L字管の先にはゴム管・ガラス管をつけ、試験管2本・ゴム栓2個を水槽の水に沈め水上補集の準備をする。
試験管を加熱し、発生が早くなれば火からはなす。
試験管に溜まった気体は水槽の中でゴム栓をし、取り出す。
→銅と希硝酸では主に一酸化窒素が発生。
2HNO3→H2O+2NO+3(O)
銅は酸化されて酸と反応
Cu+2HNO3+(O)→Cu(NO3)2+H2O
上の二つの式をあわせて
3Cu+8HNO3→3Cu(NO3)2+2NO↑+4H2O
1本目
そのままゴム栓を外し、試験管の中の様子を見る。
→試験管の口から徐々に褐色に変化する。
空気中の酸素と反応して二酸化窒素に変化した。
2本目
硫酸鉄(2)水溶液 3mlを一酸化窒素の試験管に注ぎいれる
→黒く変色。
上の溶液をガスバーナーで加熱。
→黒色の物質は消え、鉄(2)イオンが酸化され、鉄錆になる。
<工業的製法>・・・オストワルト法
石英管に白金線をらせん状に巻いていれる。
一方には8mol/l アンモニア水を入れた洗気ビンを、もう一方には1l以上の容量をもった吸引ビンを取り付け、水流ポンプにつなぐ。
吸引ビンにはそこに届く程度のガラス管を通したゴム栓をしておく。
石英管を加熱しながら水流ポンプでひいてやると、吸引ビンの中がやや褐色に、続いて白くくもってくる。
適度のところでやめて、少量の水を加え、溶かしておく。
→以下の反応により硝酸がが生成。
4NH3+5O2→
<窒素の酸化>
容量 1l程度の三つ口フラスコの真ん中の口には軽くゴム栓をしておく。
両側の口には銅線を通したゴム栓をし、誘導コイルもしくはネオントランスにつなぐ。
フラスコ内の銅線の間隔を5cm程度に保っておけば、放電が起きしばらくしてフラスコ内が褐色に変化する。
→以下の反応により硝酸が生成。
<実験室的製法>
硝酸ナトリウム 7g、水 2ml、濃硫酸 5mlをレトルトもしくはなす型フラスコにゴム栓にアルミホイルを巻いて保護したL字管をつけたものにいれる。
スタンドに斜めに取り付け、金網の下から加熱する。
試験管を氷水で冷やしながら、蒸留し2〜3ml集める。
以上の方法でできた硝酸は褐色環反応で確認する。
希硫酸
3mol/l
濃硫酸を6倍希釈
※濃硫酸の希釈には必ず水に濃硫酸を加えるようにする。
不揮発性
濃硫酸
18mol/l 98% ほとんど水を含まない
比重 1.86
粘っこい液体
不揮発性
加熱により酸化力を持つ
○亜鉛との反応
希硫酸
希硫酸 3mlに亜鉛の小粒をいれる。
→水素を発生して溶ける。
Zn+2H+→Zn2++H2↑の反応 希硫酸は強酸
濃硫酸
濃硫酸 2mlに亜鉛の小粒をいれる。
→反応無し。
濃硫酸はほとんど水を含まず、電離度が小さい。濃硫酸は弱い酸性。
○銅との反応
希硫酸
希硫酸 3mlにさびた銅片をいれる。
→反応無し
さらに加熱。
→反応無し
ただし、銅の錆(CuO)はとけて、きれいになる。
CuO+H2SO4→CuSO4+H2O 酸化により、銅は希硫酸に溶ける。
濃硫酸
21mmの試験管に底から、1.5cm程度の銅片をいれて配る。
濃硫酸 4mlを加え、L字管を通したゴム栓をつけ、スタンドに固定する。
→この時点で反応無し。
捕集は下方置換で行い、集気ビン2本用意する。
試験管の底をガスバーナーで加熱すると白煙があふれ出てくるので集気ビンに集める。
→熱濃硫酸は相手を酸化して二酸化硫黄を発生。
H2SO4→H2O+SO2+(O)
銅は酸化されて酸と反応
Cu+H2SO4+(O)→CuSO4+H2O
上の二つの式をあわせて
Cu+2H2SO4→CuSO4+2SO2↑+2H2O
無色の気体・刺激臭・空気より重い などを確認。
水に溶けて亜硫酸
H2O+SO2→H2SO3
1本目
花びらをいれる。色が消えたならば取り出して、過酸化水素(10%)にしたす。
→亜硫酸の還元作用により、還元漂白。過酸化水素にいれて、酸化され色がもどる。
ろ紙によう素のよう化カリウム溶液をしたし、集気ビンに差し入れる。
→亜硫酸の還元作用により、よう素の色が消える。
H2SO3+H2O+I2→H2SO4+2HI の反応による。
水でぬらした青リトマスを差し入れる。
→赤く変色。亜硫酸は弱酸性。
2本目:二酸化窒素との反応
別に用意した試験管に底から1.5cm程度の銅をいれ、濃硝酸 3mlをいれる。
L字管を通したゴム栓をつけ、集気ビン 1本分、二酸化窒素を集める。
捕集が終われば、すぐに水道水をいっぱいにいれ、発生をとめる。
二酸化硫黄の集気ビンと二酸化窒素の集気ビンの口同士をあわせ、ふたを引き抜く。
→二酸化窒素と二酸化硫黄が混ざるとニトロシル硫酸の白色固体が集気ビンの内壁に付着する。
集気ビンの中の気体を捨て、10mlの水で両方の集気ビンの中をきれいに洗い、試験管に戻す。
※気体を捨てるときは、屋外またはドラフターの中で行う。
集めた水に塩化バリウム1滴をくわえる。
→硫酸が生成し、白色沈殿ができる。
硝酸法
前回の二酸化硫黄と二酸化窒素の反応による硫酸の製法について確認する。
2SO2+NO2+NO+O2+H2O→2NO-SO3-OH(ニトロシル硫酸)
2NO-SO3-OH+H2O→2H2SO4+NO2+NO(硫酸)
<工業的製法>・・・接触法(演示)
白金線をらせん状にまいて石英管の中にいれる。
一方にはL字管をつけ、300ml用 フラスコの底に届くぐらいの長さにしておく。
もう一方には二酸化硫黄 100mlと酸素 100mlをいれた200ml用注射器をつなぐ。
白金線を加熱しながら、ゆっくりと注射器の中の気体を押し出すとフラスコに重い白煙が立ち込める。
→工業的には、硫黄または黄鉄鋼をやいて、二酸化硫黄を発生させ、V2O5触媒で酸化する。
S+O2→SO2
2SO2+O2→2SO3 (V2O5触媒)
H2O+SO3→H2SO4
しかしここでは、亜硫酸水素ナトリウムと希硫酸で発生させた二酸化硫黄を白金触媒で酸化している。
NaHSO3+H2SO4→NaHSO4+H2O+SO2↑
2SO2+O2→2SO3 (Pt触媒)
H2O+SO3→H2SO4
後の実験のためフラスコに水10mlを加え、溶かしておく。
硫酸イオンの検出には塩化バリウムを加えると白色沈殿を生じることを利用する。この反応について確認していく。
バリウムイオンとカルシウムイオンの比較
同じアルカリ土類であるバリウムイオンとカルシウムイオンで沈殿の違いを見る。
ともに0.5mol/lの硫酸ナトリウム水溶液の1mlを水で5mlに薄めたものを2本用意する。
一方には、0.5mol/l 塩化バリウム水溶液、他方には同じ濃度の塩化カルシウム水溶液をそれぞれ一滴加える。
→塩化バリウムはすぐさま白色沈殿を生成。
塩化カルシウムは一滴では沈殿しないが、試験管の内壁をガラス棒でこすっていると沈殿ができる。
硫酸イオンと炭酸イオンの比較
ともに0.5mol/lの硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムの1mlを水で5mlにうすめておく。
両方に塩化バリウムを一滴ずつ加える。
→どちらも白色沈殿を生成。
両方に6mol/l 塩酸を1mlずつ加える。
→硫酸バリウムは不変。
炭酸バリウムは塩酸で酸性にすると沈殿は溶けてしまう。
亜硫酸イオンと硫酸イオンの比較(演示)
先に発生させた二酸化硫黄をフラスコに100mlとっておき、水10mlにとかしておく。
一方、接触法で発生させた三酸化硫黄も水10mlにとかしておく。
両方を試験管にとり、塩化バリウムを一滴ずつ加える。
→二酸化硫黄を水に溶かしたものは、うっすらと白く濁る。
三酸化硫黄を水に溶かしたものは、濃い白色となる。
二酸化硫黄を水に溶かしたものには6mol 水酸化ナトリウム 1ml、続いて6mol/l 塩酸 1mlを加える。
→亜硫酸はアルカリ性で白色沈殿。酸性にもどすと沈殿は消える。亜硫酸は弱酸。
亜硫酸にはさらに10% 過酸化水素水を1ml加える。
→亜硫酸は酸化されて硫酸となり白色沈殿。
グラニュー糖を50mlのビーカーの半分程度までいれる。
全体を水で湿らせて、15ml程度の濃硫酸をいれる。
→水蒸気をあげながら、黒い固体が盛り上がってくる。C12H22O11→12C+11H2O の反応による。
グラニュー糖を薬さじに2〜3杯程度、塩素酸カリウムを薬さじ1杯を混ぜ合わせた後、蒸発皿に入れ砂皿の上に置く。
濃硫酸を駒込ピペットにとり、数滴落とす。
→発火して勢いよく燃焼。
○銅との反応
適当な大きさの銅板の一部をサンドペーパーで磨き、新しい表面をだしておく。
少量の硫黄を銅板にのせ、指の腹でこする。
→すぐさま銅と硫黄は化合し、黒色の硫化銅に変化する。
Cu+S→CuS
○鉄との反応
300メッシュ程度の鉄粉1gと硫黄末0.6gを紙上でよくよく混ぜる。
廃棄してもよい試験管に上の混合物を入れ、スタンドに斜めに固定する。
ガスバーナーで混合物の入っている部分を包み込むように強熱する。
→明るく輝き反応して硫化鉄になる。一部が輝き出すと加熱をやめても反応は進む。
Fe+S→FeS
上の操作でできた硫化鉄を蒸発皿に入れ、6mol/l塩酸3mlを注ぐ。
→硫化水素の気体が発生する。
FeS+2HCl→FeCl2+H2S↑
発生した気体に酢酸鉛をつけたろ紙を近づける。
→硫化鉛ができ、黒変する。Pb2++S2-→PbS↓
硫化水素水は、先に作った硫化鉄に塩酸を加えて発生させてもよいが、時間節約のためあらかじめ用意して三角フラスコに入れ、ゴム栓をして配る。
→三角フラスコに硫化鉄の塊を5〜6個入れ、6mol/l塩酸を注ぐ。発生した気体は誘導管を通じ、1000ml程度(10班分)の水に15分程度通じておく。
酸性
三角フラスコの硫化水素水に青リトマスをつける。
→硫化水素水の酸性のため赤く変わる。
還元作用
よう素のよう化カリウム溶液のところへ硫化水素水を一滴ずつ加える。
→よう素(I2)は還元されてよう化水素(HI)に変わる。硫黄により白濁。I2+H2S→2HI+S↓
(演示)
二酸化硫黄と硫化水素を別々の臭気ビンにとり、臭気ビンの口を合わせて、気体を混ぜる。
→硫黄がビンの内側につく。2H2S+SO2→2H2O+3S
金属イオンとの反応
硫酸銅、硝酸カドミウム、硫酸亜鉛、酢酸鉛、硫酸鉄(2)の各0.5mol/l水溶液および0.1mol/l硝酸銀水溶液を試験管に0.5mlずつわけとる。
上で用意した硫化水素水をすべての試験管に等分に加える。
→この時点でほぼ中性。CuS(黒)、CdS(黄)、ZnS(白)、PbS(黒)は沈殿する。
上の各試験管に6mol/l水酸化ナトリウム1mlずつを加える。
→上で沈殿しなかったFeS(黒)が沈殿。
上の試験管に6mol/l塩酸2mlずつを加えて、親指でふたをし、一度逆さにして戻す。
→ZnS、FeSの沈殿は消える。
※硫化水素水は弱酸性であるため、H2S←→2H++S2-の平衡を保っている。
酸性でS2-減少のため、沈殿ができにくく、アルカリ性でS2-増加のため沈殿ができやすくなる。
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Cu2+ |
Cd2+ |
Zn2+ |
Pb2+ |
Fe2+ |
Ag+ |
硫化物 |
CuS |
CdS |
ZnS |
PbS |
FeS |
Ag2S |
色 |
黒 |
黄 |
白 |
黒 |
黒 |
黒 |
酸性 |
○ |
○ |
× |
○ |
× |
○ |
中性 |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
○ |
アルカリ性 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
フッ素の発生と性質については説明にとどめている。
○発生
21mmの試験管に酸化マンガン(4)小さじ半分程度と濃塩酸4mlをいれた後、L字管を通したゴム栓をつけ、斜め45°にスタンドに固定する。
ガスバーナーで試験管を加熱して、発生してきた塩素は、乾いた集気ビン1本に下方置換で集めた後、水5mlを入れた試験管の中に30秒程度通じて塩素水をつくる。
○性質
気緑色の気体、刺激臭、空気より重い(分子量71)、水に少し溶ける→水に溶けて塩素水、などを確認する。
花びら
臭気ビンの中に花びらを一枚入れる。
→酸化漂白。H2O+Cl2←→HCl+HClOによりできた、次亜塩素酸による。
青リトマス
青リトマスを水でぬらして近づける。
→赤変。H2O+Cl2←→HCl+HClOによりできた、塩酸による。
よう化カリウムでんぷん紙
よう化カリウムでんぷん紙を水でぬらして近づける。
→紫。2KI+Cl2→2KCl+I2で生成したよう素がでんぷんと反応。
アルカリとの反応
6mol/l水酸化ナトリウム5mlを臭気ビンに加え、よく振った後、においをかぐ。
→塩素はアルカリに吸収される。Cl2+2NaOH→NaCl+NaClO+H2Oの反応により、プールの殺菌剤もしくは漂白剤のにおいになる。
強酸との反応
上の集気ビンに12mol/l塩酸5mlを加える。
→塩素が発生。NaClO+2HCl→NaCl+H2O+Cl2↑の反応による。強烈な塩素のにおいおよび色が戻ってくる。
KBr、KIとの反応
0.1mol/lの臭化カリウムおよびよう化カリウムをそれぞれ試験管に2mlずつとる。
最初に作った塩素水を1mlずつそれぞれに加える。
→臭化カリウム:2KBr+Cl2→2KCl+Br2の反応により臭素の水溶液。黄〜黄褐色。
→よう化カリウム:2KI+Cl2→2KCl+I2の反応によりよう素のKI溶液。赤褐色。(よう素は水に不溶)
上のそれぞれの反応液に二硫化炭素3mlを半分ずつ加える。
→二層に分離し、二硫化炭素は下に沈む。
臭素の二硫化炭素溶液。黄〜黄褐色。
よう素の二硫化炭素溶液。紫色。
○発生
臭化カリウム数粒、二酸化マンガン小さじ半分、水1mlと濃硫酸1mlとを混ぜた溶液の内、半分を試験管に入れ加熱する。
→臭素の蒸気が発生。2KBr+MnO2+2H2SO4→K2SO4+MnSO4+2H2O+Br2の反応による。
○性質
赤褐色の液体、気化しやすく刺激臭、水に少し溶ける→臭素水、など一般的性質について確認する。
○発生
よう化カリウム数粒、二酸化マンガン小さじ半分、水1mlと濃硫酸1mlとを混ぜた溶液の内、半分を試験管に入れ加熱する。
→よう素の蒸気が発生。2KI+MnO2+2H2SO4→K2SO4+MnSO4+2H2O+I2の反応による。
○性質
黒紫色の固体、昇華性、水に溶けない→KI水溶液、有機溶媒に溶ける、よう素でんぷん反応、など一般的性質について確認する。
○発生
発生については反応式のみ。
→CaF2+H2SO4→CaSO4+2HF
○性質
腐食性
スライドガラスの片面に溶かしたろロウをぬってかためておく。
シャープペンシルの先で字などをかくようにロウを削り取る。
ふっ化水素酸をぬり、5分程度放置する。
水洗いしロウをはがす。
→ロウをはがした部分は腐食され、模様として残る。
○発生
<工業的製法>・・・水素と塩素の化合(演示)
・さらし粉と希塩酸で塩素を発生させ、1000ml以上のメスシリンダーに下方置換によりためる。
キップの装置で水素を発生させ、先につないだガラス管に火をつける。
水素の炎を塩素の入ったメスシリンダーの中にゆっくりと入れていく。
→水素の炎はうす緑になり、塩化水素に変わる。あとには塩化水素の白煙が上がる。
・上と同様にして発生した塩素と水素を一つのナイロン袋に300ml程度ずつ入れる。
上方より点火したマグネシウムリボンを近づける。もしくは点火する。
→大きな音をたてて爆発。水素:塩素=1:1の気体は塩素爆鳴気と呼ばれる。
※この反応は光により進行するので、日光の当たるところで水素と塩素を混合してはいけない。
<実験室的製法>・・・食塩と濃硫酸(生徒実験)
水3mlと濃硫酸3mlを別々にはかりとり、水に濃硫酸を数回に分けて加え、水道水で冷やしておく。
21mmの試験管に食塩3gおよび上の硫酸をいれた後、L字管を通したゴム栓をつけ、斜め45°にスタンドに固定する。
ガスバーナーで試験管を加熱して、発生してきた塩化水素は、乾いた試験管に下方置換で受け取る。
試験管いっぱいにたまったことはガラス棒につけたアンモニア水を近づけることにより確認する。
→塩化水素はアンモニアとふれあうと、白煙を発生する。NH3+HCl→NH4Clの反応による。
試験管にとった塩化水素は親指でふたをし、半分程度水を入れた水槽の中につけ、親指をゆるめる。
→勢いよく水が浸入し、ほぼ試験管の中いっぱいにまで水位があがる。
再び、親指でふたをし、とりだしたならば試験管台に立てておく。
以上の操作で試験管2本とる。
○性質
無色の気体、刺激臭、空気より重い(分子量36.5)、きわめて水に溶けやすい→水に溶けたものを塩酸という、などを確認する。
とった水溶液は以下の試薬で確認する。
青リトマスもしくはメチルオレンジ
→赤変。水素イオンの存在。
0.1mol/l 硝酸銀
→白色沈殿。塩化物イオンの存在。