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海外の言語教育
現在の日本の外国人児童生徒の受け入れ状況は、過去に移民を多く受け入れ言語教育を行ってきたカナダやアメリカ、オーストラリアの外国人児童生徒の受け入れ状況と酷似しており、このような海外での言語教育を参考にし、日本の公立学校における日本語指導の発展に生かされる可能性は多いにあると期待します。

■カナダの言語教育

イマージョン・プログラムは、1960年代にカナダで始まり、目標とする言語だけを習うのではなく、その言語環境で他教科を学び、その言葉に浸りきった状態(イマージョン)で、その言語獲得を目指すプログラムです。
カナダでは歴史的に英語とケベック州を中心にフランス語が使用されており、当時フランス語系の保護者からフランス語と話すカナダ人の文化や伝統も理解できるような実験的教育プログラムを作ってほしいという要望があり、公用語として英語とフランス語を認めることになりました。
現在では、カナダだけでなく、世界各国で実施されており、スペイン語、フランス語、日本語、中国語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、アラビア語など様々な言語がイマージョン・プログラムに取り入れられています。

■オーストラリアの言語教育

1987年、オーストラリアの初等、中等教育課程において「英語及び英語以外の言語(LOTE: Language Other than English)」に関する政策”The National Policy on Languages”が承認され、1988年から各州の初等、中等教育課程で段階的に施行されることになりました。LOTEには、日本語を始め、アラビア語、中国語、フランス語、ドイツ語、ギリシア語、インドネシア・、マレー語、イタリア語、スペイン語の学習が奨励されています。海外日本語教育機関調査では、毎年学習者の増加が報告され、2003年の調査結果では、オーストラリア全土で38万人を突破し、そのうち初等、中等教育課程において学習する割合が97%を占めることが報告されました。このように、オーストラリアの日本語教育の発展の背景には、1995年からLOTEと同時期に導入された「アジア言語文化特別教育プログラム(NALSAS)」の影響も受けていると言えます。この「アジア言語文化特別教育プログラム(NALSAS)」には、日本語、中国語、韓国語、そしてインドネシア語が優先学習言語に指定されています。しかしながら、大学などの高等教育課程においては、学習者の伸びは、ほとんど大きな変化を見せていません。また、学校教育以外での取り組みとしては、極めて学習の機会が限られていると言えます。1995年に導入されたNALSASですが、2002年末をもって打ち切られました。このプログラムでは、言語教師の雇用、各言語の特別講習、教員養成、教材作成、アジア各国との交換留学などに予算が組まれていました。その後、連邦政府は、NALSASに取って代わる「Asian Language Professional Learning Project (ALPLP)」という新しいプロジェクトを打ち出しました。このプロジェクトでは、Intercultural Language Learning(異文化間言語教育)に主眼を置き、新しい教授法などが教育現場に導入されることが期待されています。オーストラリアの初等・中等教育は、各州政府の所管で、外国語教育の取り組みやカリキュラム、入試形態には、それぞれ若干の差異が見られますが、それぞれの州において日本語教育に積極的に取り組んでいると言えます。


■イギリスの言語教育

1970年代、イギリスでは英語教育が十分な成果を上げていないという問題意識から「言語意識」を深めるための言語意識運動が行われました。1988年には全国統一指導要領として「ナショナル・カリキュラム」が示されました。このカリキュラムは、5歳から16歳の間を4つの段階としてキーステージ(KS) 1(5〜7歳)、KS2(7〜11歳)、KS3(11〜14歳)、KS4(14〜16歳)から構成されています。国語としての英語の領域としては、話すこと、聴くこと、読むこと、書くことがあります。各領域は「学習のプログラム」と「到達目標」から構成されています。話すことと聴くことの「知識・スキル・理解」の「学習のプログラム」としては、グループディスカッション、相互交流、劇、標準英語、言語の諸相(Language variation)がある。ここで興味深いのは「劇」で、これを通して身体活動を含めた自己表現や、脚本の激化を通した作品理解、批評力の育成が目指されています。読むことについては、古典、異文化テキスト、印刷・電子媒体による情報テキスト、メディア・動画テキスト、言葉の組み立てと種類があります。書くことについては、作文、プラン・草稿があり、具体的な例としては本づくり、詩集作り、脚本や門が足りを核といった創造的表現活動があげられます。また、英語を社会に生きる主体的な一市民として習得すべき社会的規範ごと位置づけ、英語を母語としない児童・生徒の多種多様な言語文化背景を視野に入れ、コミュニケーション力重視へと質的転換をなしてきています。


■アメリカの言語教育

アメリカでは、1930年代は「経験カリキュラム」が主流で、1950年代〜1960年代は教科カリキュラム(学問中心カリキュラム)が主流でいわばカリキュラムの両極をなすものでした。19960年代の中ごろから標準化運動が盛んになり、英語教育の統一的標準を求めようという動きが生まれ、1996年には「ナショナル・スタンダード」が公表された。以下が柱となります。@多様なテキストを扱う、A知識・スキルはテキスト・情報と関連させる、Bさまざまな生きた情報を活用する、C他者を理解し、自己の言語特色を生かす、D社会の一員として自己実現を果たす。しかしながら、アメリカでは、カリキュラムの開発は、州、学区などによって行われるため、「ナショナル・スタンダード」が画一的に使用されているわけではありません。

2002年には、メキシコやラテンアメリカからの移民が増加し続けるという社会的背景を受け、社会の中で誰一人として取り残される子供がいないようにという目的で、No Child left behind Actという法律が出されました。この中で特に学習の基礎となる読書が非常に重視されています。1990年代から2000年代にはリテラシーの概念の再研究が行われ、具体的には、メディア・リテラシー、ビジュアル・リテラシー、クリティカル・リテラシーなどが研究テーマとなり、現代社会におけるさまざまな問題やマイノリティーの理解、人権の保護とアイデンティティーの確保の実践として、リテラシーが取り入れられています。


■インターナショナル・スクールの言語教育

世界にあるインターナショナル・スクールの中で、児童生徒が転校しても教育の高い質を保つ目的でカリキュラムを提供しているのが、国際バカロレア機構(IBO)です。IBOのプログラムでは、初等・中等前期教育課程、中等後期課程のそれぞれにおいて、PYP(Primary Years Program)、MYP(Middle Years Program)、DP(Diploma Program)が実施され、異なる文化や言語背景の児童生徒であっても言語と学習内容の理解をともに促進し、学習する態度の育成、国際的な視点からさまざまな問題の解決に取り組み、自己表現、創造的批判的思考を身につけることを目指しています。今日IBOが認定したカリキュラムに基づき授業を行っている学校は、世界120カ国に及び、1,786校の学校がIBカリキュラムを利用し、参加生徒数は20万人に達しています。