聖なるかな
聖なるかな・・・・・・
〜epilogue〜
広大な庭を焼き尽くして、ようやく火は消し止められた。 ”楽園”といわれた園は跡形もなくなった。 ただでさえ燃えやすい植物に、さらにガソリンがまかれていたらしい。 だがその焼け跡からは、だれの遺体も発見されていない。
「ま、そう簡単に死なないとは思ったけどね。」
その焼け跡を見つめながら、ところどころが焦げた服を着た快斗が呟いた。 すでに一夜が明けてしまっている。
「優人さんも、生きているのかな・・・・・・」 「さあね。ま、できればもう会いたくないね。借りは返したし、用はない。」 「お前なぁ・・・」
けろっと言い放つ快斗に新一は呆れながらも苦笑する。
「そういえば、最後の優人さんの言葉・・・」 「ああ、”すべてわたしがもっていく”だったっけ?」 「あれは、どういう意味だったんだろうな。」 「さあ?本人に聞かないとわからないけどね。たぶん、”すべての罪”を自分ひとりで負って逝こうと思ったんじゃないか?」 「・・・・なるほどな。」
快斗の答えに新一はうなずいた。快斗は新一の顔をじーっと見つめる。
「俺たちって気味のわりぃくらい似てるよな。」 「そうだな。やつに、俺はお前の半身かって聞かれたよ。」 「・・・・・・・なぁ名探偵、もし俺が暴走したとき・・・・・きちんととめてくれる?どんな形でも。」
真剣に見つめてくる快斗に新一も見つめ返す。
「やだね。」 「へ?」
きっぱりと言う新一に快斗は目を瞬かせた。
「自分のことぐらい自分で責任持て。俺は今あいにくと自分のことで精一杯なんだ。 他人の面倒みてる暇なんかねぇんだよ!」
絶句していた快斗だったが、急に笑い出した。そして新一に抱きついて笑い続ける。
「な、なんだよ・・」 「さいこ〜、名探偵!厳しいなぁ〜」
もし本当にそうなったら、彼はきちんととめてくれる。それが快斗にはわかっていた。 わかっていたけれどもあえて頼んでみた。 だがこの名探偵は、自分でなんとかしろと言う。 自分の足できちんと歩いて行け、と。それが彼のやさしさの表現。 いつまでも笑いをとめる気配のない快斗に新一は眉をひそめる。
「それより、話ってなんだよ!いいかげん話せ!」 「あ、ああごめん。」
快斗はまだ体を震わせ、新一の肩口に顔を埋めたまま話す。
「実はさ、手を組まないかと思ってね。どうやら敵さんが一緒のようだし。 俺が手に入れた情報はきちんと名探偵にも教える。」 「そのかわり、俺が手にした情報はよこせって?」 「はじめはそのつもりだったんだけどね?」
顔をあげた快斗は、今まで見たことがないような清々しい表情だった。
「今は、こうしてそばにいてくれればいいや。」 「はぁ〜?なんだよ、それ。」
わけがわからない、という顔の新一に快斗は笑みを深くする。
「返答は?」
こいつの言うとおり、同じ組織を相手にしているのなら、協力した方が何かといいだろう。 味方も多い方がいい。こいつの情報網も使えるし。 そしてなにより、新一はキッドに、そしてこの黒羽快斗という男に少し興味がわいていた。
「Yes、だよ。」 「じゃあよろしく、名探偵。」 「・・・・その名探偵ってのやめろよ。キッドのときならともかく。」 「それじゃあ、新一。・・・・・話したいことがある。キッドのこと、俺自身のこと。聞いてくれる?」 「いいぜ?」 「それとさ、たまにでいいから・・・・・・・・愚痴を聞かせてもいい?」 「たまに、ならな。」
END 02/1/4
今回のお話は書いていてなんだか難しかったです; わけわからないわ!という方、すみません(汗) そして、このようなものを押し付けてしまった麻希利さま、本当にすみません(大汗) なんだかんだで快斗くん新一くんの出会い編でした。
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