明けの明星、曙の子よ。 お前は地に投げ落とされた、もろもろの国を倒した者よ
―― 『イザヤ書』 ――
〜II〜
「蘭!」
屋敷の廊下で固まっている3人を見つけて新一はそばへと駆け寄る。 3人はある部屋の中を見て震えていた。新一も部屋の中をのぞいた。
「っ!これは・・・」
部屋の壁に男性がはりつけにされていた。そう、まるで十字架にはりつけにされたイエス・キリストのように。 男性の体からは血が流れ、白い壁にいくつもの血の筋をえがいている。新一は 近づいて脈を確かめるが、すでに止まっていた。
「ちょうど前を通りかかったら、中から何か割れるような大きな音がして・・ノックしても返事がなかったし、鍵もかかってなくて、開けたら・・・・」
蘭が目に涙をためながらも新一に状況を説明した。やはり何度もこういう場面に 出くわしているため、他の2人よりは幾分か落ち着いてみえる。 青子はこんな体験が初めてなのか、声も出せず真っ青になって蘭にしがみつき、がたがたと震えていた。
「蘭、警察を呼んでくれ!園子と中森さんも、外に出るんだ!」 「わ、わかった!」 「何かあったんですか!?」
蘭たちと入れ違うように優人が走ってきた。そして、部屋の中を見ると、みるみる顔色を変えた。
「父さん!!」 「なんだって!?」
駆け寄ろうとする優人を、新一は慌ててとめる。
「近寄ってはいけない!彼はもう亡くなっています!今警察を呼んでいますから!」 「そ、んな・・・・!父さん・・・っ!」
優人は涙を流しながらその場に膝を落とす。
(遺体はまだ暖かかった。殺されてからそんなに時間は経っていない・・・・)
新一は割れている窓に目を向ける。
(蘭たちが聞いた割れた音はあれだな。犯人があそこから逃げたのか?だとしたら・・・・・やばいな)
蘭たちが聞いた音が犯人が逃げるときのものならば、犯人はまだ近くにいるということになる。外にはゲームの参加者などまだたくさんの人たちがいた。
ふと、新一は自嘲気味に笑う。どんな死体を見ても動揺せず、冷静に分析する 自分に。
「優人さん、僕たちもいったん外に出ましょう。」
新一は座り込んでいる優人を立たせて外へと誘導する。
「優人さん、里見氏が狙われた心当たりはありますか?」
その言葉に優人は体を強張らせ、立ち止まった。
「・・・・何か、ご存知なのですね?」 「・・・・・君に相談するべきか迷っていました。しかしこんなことになるなら、もっと 早く話せばよかった・・っ!」
優人は頭を抱えた。
「どういうことです?」 「・・・・・君に見せたいものがあります。」
優人は内ポケットから1枚の小さなカードを取り出した。 そこに書いてあったのはたった一言。
” With Ruin・・・・” ―― 破滅とともに・・・・ ――
「これは?」 「少し前に私宛に届いたものです。・・・・工藤君は”ルシファー”のことをご存知で?」 「”ルシファー”って、あの堕天使のことですか?」 「そう、かつて天上でもっとも輝いていた天使。神に仇なし、堕とされた高慢なる 魔王。・・・・・この家でも”ルシファー”と呼ばれている人物がいるんです。」 「え?」 「かつて栄光ある将来を約束され、この家をさらに高みへと導くだろうと期待されていた人物。5年前、それらすべてを捨て、私たちの前から姿を消した人・・・・」 「誰のことなんですか?」 「・・・・・・・里見明人、私の双子の兄です。」
外に出ると、ちょうど警察が到着したところだった。青子はいまだに顔色が悪く、 快斗がその肩を抱いて慰めていた。 情聴取のため、蘭、園子、青子の3人と優人が呼ばれる。事情聴取に新一も ついていこうとすると、後ろから腕を引かれる。
「黒羽?」
腕を引いたのは快斗だった。
「ちょっと話があるんだけど。」 「・・・・・・」
快斗の目がまっすぐ新一の目を見つめる。
「・・・わかった。」
蘭たちは、新一たちを残して再び屋敷の中へ入っていった。 新一と快斗は騒いでいる人たちから少し離れたところへ移動する。
「話って?」
快斗は新一に背を向けたまま話し始める。
「・・・・・結構前になるかな、いつも通り仕事が成功してビルの屋上にいたときにいきなり狙撃された。寸前で気づいてかわせたが、もう少しでやられるところだったよ。逃げたふりして影に潜んで様子をうかがっていた。しばらくしたら2人の男が屋上にやってきたよ。1人は全身黒ずくめの長身の男。」 「!まさか・・・・黒の組織・・・?」 「・・・・・・・」
快斗は新一が呟いたことにゆっくりと振り向いた。
「そして、もう1人の男はこう呼ばれていた。”ルシファー”」 「なんだって!?」
To Be Continued・・・・ 01/12/13 事件発生!コナンはこうでなければいけませんねv |