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デュシャンの秘密
 
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マルセル・デュシャンの秘密 (概要)   ⇒ ENGLISH
 
 20世紀後半の芸術動向に多大な影響を及ぼした マルセル・デュシャン(1887-1968) が、中国の老荘思想に傾倒していたことを明らかにしてみよう。 ここにいう老荘思想とは、哲学思想としての『老子(道徳経)』と『荘子』、 そしてそれらに深く関係してきた道教を意味している。
 
 アルトゥーロ・シュワルツはその著『マルセル・デュシャン全作品集』で、 《春の青年と少女》(1911)がデュシャンの芸術実践における重要な転換点であり、 それ以後の主たるテーマが錬金術に基づいていると論じている。
 
 錬金術は中国において、霊薬の「金丹」を錬成する意味で『錬丹術』と呼ばれたきた。 『錬丹術』は老荘思想と密接な関係を有していたが、 中国古典の最たるものである『易経』もまた、老荘思想に取り込まれていた。
 
        ⇒老荘思想と『易経』
 
 デュシャンがその『易経』の卦「漸」に関する注釈をもとに、 《階段を降りる裸体、No. 2》(1912) に至るいくつかの絵画作品を 制作したことをまず解明してみよう。
 
   『錬丹術』は「外丹」と「内丹」に区別されるが、 北京・白雲観の『内経図』 はその「内丹」の図解である。 《彼女の独身者達によって裸にされた花嫁、不二》(又は《大ガラス》)(1915-23) が、多くの点でその『内経図』に一致することを次に論じてみよう。
  【石川虚舟註】題名末尾の『不二』( même )は、「さえも」と誤訳されてきた。
 
 さらに、デュシャンの 「レディメイド」 と呼ばれるいくつかの作品と 『老子』の「無の用」 との類似性、そして 《お前は私を》(1918) と『荘子』の「斉物論」との類似性を指摘してみよう。
 
     吉積 健著 『マルセル・デュシャンの秘密』 (2004)、冒頭文より