商売、“人材”直行便に期待
「わたしらの長年の夢でしたんや」-大阪のしにせ昆布店「天満大阪昆布」社長、喜多条清光さん(四〇)ら大阪の昆布業者約十五人が六月、「幻の昆布」を求めて宗谷海峡を越える。なにわ名物・塩昆布に、サハリン(旧樺太)産の昆布が使われれば、約半世紀ぶりのことになる。
大阪の昆布は、全国消費量の五割を占める。その大半は北海道産。戦前は、全国水揚げ高の三分の一が品質抜群といわれるサハリン産だった。しかし、終戦後、入荷はばったり途絶え、業界では「伝説の昆布」と言われてきた。この昆布にあこがれた喜多条さんは四年前、墓参団に参加して、サハリン・ホルムスク市の市長に「昆布を輸入したい」と訴えた。ゴルバチョフ大統領の来日の話が出てから、本気になった。その成果が、約百業者が参加して今月二十二日に発足する「サハリン昆布輸入促進協議会」である。
一行は初の直行便でサハリンヘ飛ぶ。一週間かけて、各地の昆布をじっくり見て回る予定だ。今月十九日、京都で開かれる関西政財界人と大統領との昼食会で、昆布が話題になるとは思えない。
「でも、日ソがいいムードになれば、サハリンでの取引もやりやすうなるはず」と、そろばんをはじいている。
ペレストロイカの新風を関西の人たちに実感させたのは、八九年秋、大阪を舞台に日本で初めて開かれたソ連のファッションショーだった。
だが、今、ソ連経済は市場経済への移行に伴う混乱の真っただ中にある。ソ連の対日輸入代金の未払い分は四億五千万ドルにものぼっている。
経済界には悲観論が多く、先駆的な取り組みも、ビジネスとしての成果に直結させるのは容易ではないが、それでも粘り強さを発揮しているのが関西だ。
「商売の神様」故松下幸之助氏の創設したPHP研究所(京都市)はソ連の人材育成のため、この二年間に計百五十人を招き、京都の研修所で松下イズムを特訓。今秋も五十人を受け入れる。
さらにソ連政府の強い要請で、同研究所の江口克彦専務らが大統領補佐官グループに説明する日程も上がっている。
関西財界の拠出で昨春設立され、途上国の人材育成にあたる太平洋人材交流センター(大阪市)も、宇野収・関西経済連合会会長の意向で、ソ連の研修生を受け入れる方針を固めた。関西とソ連の人的交流は飛躍的に伸びるはずだ。
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