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絵本および童話その2 (2008年3月4日更新)



この「福島正実SF童話賞」の福島正実さんは、僕がまだSF少年だった頃の『SFマガジン』の編集をされてた方です。
その選考委員の方が書いておられた言葉が、自分の書きたい物語の理想の姿そのままなので、ここに抄録して引用します。

「子どもたちの想像力をかきたてる物語。日常の生活空間を超えて物語を楽しんでもらいたい。」 「子どもの目線で
「子どもをワクワクさせ、不思議な思いに引きずり込んでくれる読み物がほしい。」 「SFの常道ともいえる文明批評」
幼い読者たちにページをめくる喜びを味わわせ、新しい世界を体験したという感動と満足感をのこしてくれればよい。
センス・オブ・ワンダーに満ちたアイデア、スリルとサスペンスに富む物語のおもしろさ。あっとおどろくラストの意外性。
「小学生でも読みこなせる、SF的なおもしろさを表現。」 
「着想を面白く感じても、手垢のついていないアイデアなどというのは、ないと考えたほうが良い。選考委員会が求める新鮮さとは、アイデアを物語にどう生かすかにかかっているのである。

◆E「福島正実SF童話賞」
(第1〜3と、5回は大賞作なし)
受賞回  題   名  作 者 名  ストーリー展開型
感   想
 4 地球をかいにきたゾウ宇宙人 オカダヨシエ 事件
遭遇型
A
SFファンとして見ると、中途半端な設定。子どもに親しみやすい設定のつもりなんだろうけど、微妙。そこらの動物と変わらない。オチも土地を買いにゾワラニア星で相談してくるという終わり方で、物語として中途感がする終わり方。たぶん、主人公に葛藤がないから、悪い意味でメルヘン的になっている。
ぼくのじしんえにっき 八起正道 事件
体験型
1989年刊行ということは、震災前なんだけど、よく描けている。祖母やとしこちゃんという「死」も逃げずにきっちり描けている。ともすれば重くなる「死」を「そつぎょう」という表現で抽象化することで、生々しさから解放されており、優れている。 ○B
ママはドラキュラ? 丸岡和子 事件
疑似
体験型
A 合理的解釈で、ママはドラキュラでなかったことになっているけど、これをまとまっていると評価すべきなのか。違う。これでは疑似ファンタジーで止まっている。自己満足SFだ。
天才えりちゃん金魚を食べた 竹下龍之介
パパがワニになった日
馬場真理子 事件
解決型
A 直ちゃんは、朝、とうさんの部屋でワニを見てびっくり。母親を呼ぶが、実はワニはとうさんが変身したもの。原因を探ろうと、医者にも診せるが、分からずじまい。魔法使いと噂される人に見てもらうと、どうやら動物園のワニととうさんが同時に変身願望をもって同調したせいみたい。ワニパパと直は、動物園でパパの姿をしたワニに、変身プロセスを逆にすて元に戻るよう説得して出かける。それは成功するが、ラストでニュースが流れる。変身現象が広がっていると。このラストが座布団10枚あげたくなる素晴らしさだ。作品世界が広がる。さりげに動物も人と変わらず生きているエピソードがあるのがいい。 ○A
同上 めいたんていワープくん 武馬美恵子 反復
謎解き解決型
A 壊れたワープロが、実は独自知能を持って、少女とみこと事件の謎を解決する話。ところが、ワープくんが、故障してしまい、とみこたちは二人で解決するはめになる。ラストで正常化したワープくんがただのワープロになるが、リハビリだと納得して探偵を続ける決心をする。スリリングな展開は面白いだが、子ども向けといった誤魔化しを感じる。 −B
10 気まぐれなカミさま 黒田けい 事件
体験型
A 願い事を叶える不思議なメモという設定。カミさまはご神木の「神」であり「紙」であるというオチ。願い事が叶うのが表側だけで裏へ書くのは駄目というその1点だけで話をまとめているのは凄い。「ちゃんと努力もしたけどね。」とにっこり笑う、というラストの一文も上手いと思う。 +B
11 未来からきたカメときょうりゅう 藤本たか子 事件
解決型
親友のカズマとけんかしたカズマ。蹴飛ばしたしいたけが未来から来たタイムマシンで、そこには3千年後のカメと恐竜型ロボット生命体が乗っていた。その上、二人はカズマのたんこぶにテレポートしてくるという「笑撃」の設定。怒りエネルギーで未来へ帰るというハチャメチャ解決も、二人の葛藤を解決する手段になっているのは上手い。どうせ嘘なら、ここまで大嘘つきたいもの。
12 ボンベ星人がやってきた 竹内宏通 事件
体験型
A 地球に来たボンベ星人が極度の恐がりで、頭に白いパンツ、青と水色のしましまTシャツ、黄色いスカートという自分たちと同じ恰好じゃないと、会わない。そこから地球人は皆、その恰好をして、もらった本でボンベ語を習ってUFOを作ろうと勉強する。やがてボンベ星人は還るが、実はすべて芝居で、人類が戦争しないようしむけたのだったというオチ。ちょっと作為的なオチだけど、ヘンテコな恰好や気弱な宇宙人というキャラ設定が上手いと思う。「そのあいだだけ、地球で戦争がおこらなかった。」というラスト一文が効果的。 −A
13 ぼくのわがまま電池 大塚菜生 事件
体験型
未来人からもらった電池をはめるとオモチャが巨大化する話。馬鹿馬鹿しいけど意外と思いつかない。そこにいじめられっ子の僕と、いじめっ子のカイダがからんでくる展開。結構、楽しめた。子どもだましな浅さが人物描写にあるけど。
14 お手本ロボット51号 中松まる 事件
解決型
A ヨシオというお手本ロボットがクラスに転校生としてくるが、バカというキーワードに反応して壊れてしまう。煙を吐き、首がはずれ、爆発5分前ということで、学校中はパニックになる。出動した消防士は、またかと言い、教育省に連絡するが、知らないと突っぱねられる。そして、主人公ぼくの方をヨシオは追いかけてくるが、実はぼくも民間用ロボットだったことが明かされる。予備の部品をヨシオに渡して、二人で共通の敵を倒すために、世界へ飛び立っていく。
 馬鹿馬鹿しい設定で中身がない。アイデアは出来そうでできない面白さがある。だた子どもはぼくがロボットで顔をパカッと外すなんてのはブラックすぎるのではないか。
15 100年目のハッピーバースデー 石田ゆう子 事件
解決型
A 事故で冷凍睡眠カプセルに入ったユウキが、タイムマシンで過去に戻る時間旅行もの。結局、飛行機事故で死ぬはずだった兄ヒロキがタイムマシーン発明のメイ博士の父だったということで未来が変化する予定調和な展開。SFマインドは分かるが、未来と過去の行き来に終始して、成長パターンになってない。
16 わらいゴマまわれ! 神季佑多 事件
体験型
A 道でいきなり透明人間トメオからコマを渡されるタカシという設定が秀逸だ。そのわらいゴマ〈わらわら〉を使って怖い担任ハネゴンを笑わせることに成功。その場にトメオがいるらしいと思わせておいて、ラストでハネゴン=トメオと思わせるのも上手い。展開もコマから始まって昔遊びになり、学芸会の劇と自然と繋がり、ハネゴンの婚約発表となって、投げられたトイレットペーパーがハネゴンにまとわりついて、正体を推測させるのも凄い。そして、ラストで、いやトメオは本物の透明人間でハネゴンとは別人かと思わせる余韻ある終わり方も上手い。 ○A
17 ママがこわれた 後藤みわこ 生活
体験型
A 死をテーマにしつつ、いじめっこのカミキリの意外な素顔やロボット開発者のパパと、上川さんの交流などヒューマンドラマになっている。掘り下げがもの足りなく感じるが小学生向けや枚数からして仕方ないことなのか。ラストで留守番ロボットが言う「こわれた」がお腹のことだったというオチでそれなりに大団円になる。
18 ぼくらの縁むすび大作戦 廣田衣世 生活
体験型
担任の熊の助の恋を手助けしようと奔走する僕に、幽霊出身の下級神様が協力してくれる話。ありがちな失敗の連続と、相手のリン先生が実は冴えない熊の助が好きだったというありがちなオチ。つまらんと思う。ファンタジー設定もみすぼらしい。
19 グッバイ!グランパ 服部千春 生活
体験型
A お父さんが子どもの頃に亡くなったお祖父さんが、死期の迫ったお祖母さんを迎えに地上へ現れる。その姿が孫のさやかだけに見られるのは死の危険があったから。ライバルの孫慎吾の駆けっこを助けたりもする。かなりご都合主義的な設定な気がするが、人の死を爽やかに描いているのは確か。 +B
20 宇宙ダコ ミシェール ながたみかこ 事件
反復型
A 掛け合い漫才的に事件や物語が進行していく。ラストも「このタコーッ」で終わる軽いノリだが、読ませる勢いがあるのは確か。
21 ゆうれいレンタル株式会社 山田陽美 事件
成長型
K 病弱な弟の勇にやきもちをやく主人公優真。幽霊の純との交流で家族との仲が深まっていく話。危篤の勇を助けるために純が勇と合体する。そして、ラストでは、捜しだした純の両親の元に、勇を連れて行き、父親とキャッチボールさせる。「にっこりわらってピースサインした。」という終わり方も悪くない。ただ子どもだましの気がしてならない。
22 ぼくが地球をすくうのだ! 石井キヨシ
23 ヌルロン星人をすくえ!
千東正子 事件
反復
成長型
K 未来の地球が舞台。校外学習として他の星を助けに行く小学生おさむ。進化リングでヒューマノイド化した愛犬チャッピーと、難易度10のなまけものヌルロン星人の住む星を訪れる。コンピューターシップ「春」の増やせるビームなど妙ちきりんな科学装置を使うが、効果無し。偶然逃げ出したチャッピーのクローン犬のお陰で、滅亡の危機から救う。微妙だけど、まあ発想が面白いかな。 +B
同上 恋するトンザエモン 小野靖子 事件
反復
成長型
K 日記の守り神トンザエモン(ぶたの鼻をしている)との出会い。彼が私の友人まどかちゃんに一目惚れ。学校の給食に魔法をかけてひと騒動。まどかのお父さんの恋人トモエオさんの出現。トモエオさんの料理への意地悪な魔法。明るいトモエオさんの過去と、大事なスカーフ。熱い紅茶からまどかちゃんを守り凍らせるトンザエモンの魔法。それが最後の魔法で日記に戻るドンザエモン。まあ面白い。 +B
24 めざせ よりよい生活 石井ゆみ