あさいはり施術所  浅井整骨院
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(5)感覚・知覚研究



 連合主義心理学者によれば、「心」とは「意識」であり、「意識」は「観念の連合」によって形成され、「観念」は「経験」から生まれるという。
 ロックは経験の入り口は「感覚」であるといい、バークリーも「知覚の経験論」者として、「知覚しなければ、存在はない(存在するということは、知覚すること)」と言い、共に「観念の元である感覚・知覚を重要視した。
 当時、感覚・知覚に対する研究は、哲学・心理学者だけではない。医学・生理学者や光や音研究する物理学者達が注目し、研究をリードした。
           
     5.1) 色覚の研究
       5.1.1) アイザック・ニュートン(1642-1727:イギリス)…『光学』(1704)で光の物理的性質と色にする研究
           ・太陽光をプリズムを用いて7色に分ける→分割された光をレンズで集光、白色に戻ることを確認
           ・「光線は色がついていない(The Rays are not coloured)」→色を感覚としてとらえている。
           
       5.1.2) ジョン・ドルトン(1766-1844:イギリス)…近代原子論を築いた化学者。色覚異常の研究。
           自分の色覚が他の人々と違うことに気付く→自分と同じ色覚のものが少数いることを発見
           
       5.1.3) トーマス・ヤング(1773-1829:イギリス)…色覚の3色説
     光を波動と考え、色覚は網膜上の感覚粒子が光の波動と共振することによって生じると考えた。
           人の視覚はわずかな色の違いが分かるし、空間的位置の違いもわかる。
           →網膜上のすべての点で、
            @1つの網膜上の感覚粒子がすべての波動に共振できるとは考えにくい
 A1つの網膜上にすべての波動に共振するよう、多くの感覚粒子が存在するとは考えにくい            →少数の粒子で、さまざまな色に対応できる仕組みがあると考えた。
  最初、赤、黄、青に対応する3種の粒子が存在し、その他の色は、このうち2種の粒子  共振することで色の感覚が生じると仮定した。
             後に、赤、緑、菫に訂正
           →『ヤング−ヘルムホルツの3色説』に発展
           
       5.1.4) ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832:ドイツ)
           詩人、文学者「若きウェルテルの悩み」「ファウスト」。
科学者、形態学を提唱「植物のメタモルフォーゼ」。『色彩論』(1810)→明順応、暗順応、色応、残像、明るさ対比、色対比、色と感情など優れた直感的観察
           
     5.2) 特殊神経エネルギー説
       5.2.1) チャールズ・ベル(1774-1842:イギリス)
       5.2.2) フランソワ・マジャンディ(1783-1855:フランス)
           脊髄の前根と後根がそれぞれ運動性、感覚性のものであることを発見
           →神経線維が運動性と感覚性に機能的に分化している
           →『ベル−マジャンディの法則』
           
       5.2.3) ヨハネス・ミュラー(1801-1858:ドイツ)…『人体生理学ハンドブック』(1834)
「感覚とは、(脳の)感覚領が、神経を媒介として、且つ外的原因の作用の結果として、外界事物ではなく、感覚神経自体の性質と状態に関する知識を受け取ることによって成り立つ。このような感覚神経の性質は各感覚で異なる。各感覚はそれぞれ固有の性質すなわちエネルーを持つ」
           →『特殊神経エネルギー説』
     5.3) 空間知覚の生得説と経験説
われわれは、視覚・聴覚・触覚などを通して、3次元空間の広がりを知覚することができる。3次元空間を知覚する能力は、生まれながらの能力(=生得説)なのか、それとも過去の経験蓄積によるもの(=経験説)なのか。
       5.3.1) ジョージ・バークリー(1685-1753:アイルランド)…『視覚新論』(1709)→空間知覚の経験説
→網膜上では、奥行きに対応した手がかりは与えられていない。しかし他の手がかりにより行きが知覚できるのは、過去経験による触覚との結びつきによるもの
           
       5.3.2) イマニュエル・カント(1724-1804:ドイツ)…哲学者。『純粋理性批判』(1781)
           →感覚の生得説
           →空間と時間の感覚は先天的直感。特殊神経エネルギー説
           
5.3.3) ヨハネス・ミュラー(1801-1858:ドイツ)→空間知覚の生得説。ゲッチンゲン大学に心理学験室開設。
           →神経線維の空間的配列がそのまま知覚に反映する
           
       5.3.4) ルドルフ・ヘルマン・ロッツェ(1817-1881:ドイツ)…哲学者。ミュラーの師
固有の感覚特性は皮膚表面だけではなく、網膜上にも存在し、網膜の位置によって変化する。            →局所示標…皮膚や網膜のそれぞれの位置が持つ感覚特性
 局所示標自体は、空間感覚とは結びつかず、網膜の場合、ある網膜位置が対象によって刺激 されたとき、その対象を注視するための眼球運動とそれぞれの経験指標とが経験的に結びつ             いて空間性を獲得するという考え
           
5.3.5) エワルト・へーリング(1834-1918:ドイツ)…生理・心理学者。色覚について『反対色説』提唱
           →ロッツェの局所指標と似た空間感覚を仮定し、生得説にたって独自の空間知覚説を主張
           
     5.4) ヘルムホルツの貢献
           ヘルムホルツ(1821-1894:ドイツ)…『生理光学ハンドブック』(1856-66)『聴覚論』(1863)
           ・『ヤング−へルムホルツの3色説』…3種の視覚神経の興奮の比率が感じられる音を規定
・『共鳴説』…内耳の蝸牛の基底膜は、入口から奥へ位置に応じて幅が規則的に変化している という事実に基づき、そこにピアノの弦のように並ぶ様々な長さの繊維の内、どれが刺激音             に共鳴するかによって音の高さが弁別できるという説
           
 三色説や共鳴説は、空間知覚の生得説者であるミュラーの特殊神経エネルギー説を受け継 でいるが、知覚については経験説の立場に立つ。
           
           ・『無意識的推論』…『生理光学ハンドブック』で次のように述べている。
 「われわれの前方のある場所に、ある性質ををもつ対象が存在するという判断に至る心的活 動は、意識的活動ではなく、無意識的活動である。無意識的活動がもたらす結果と、推論と             よばれる活動の結果は等しい。
  われわれの感覚に及ぼす作用から、その作用の原因となるものの観念を得るという点につ             いて、それらの無意識的活動は推論と等しい役割を果たしている。
  われわれが直接、知覚するものは、常に神経の興奮、すなわち作用であって、決して外的             対象そのものではない。通常の意味の推論とこの「無意識的活動」が違っているのは、
            初論が意識的思考によるものであるという点である」
           
 無意識的推論は、過去経験による連合と反復によって形成されたもので、抵抗しがたく、識的に修正できないものと考えた。ヘルムホルツは様々な知覚現象をこの無意識的推論の説説明している。→無意識的推論説は、知覚に関する研究に様々な面で影響を与えた。

 (6)精神物理学