あさいはり施術所  浅井整骨院
 〒581-0084 八尾市植松町6-4-8 TEL072-922-3367

適用疾患

治療法

Q&A

付近図

医療心理学

出典・資料

スタッフから

出典・資料


患者様にとって、なぜこのような治療を行うのか、疑問に思われることでしょう。
 その理由は、東洋医学の原典『霊枢』という書物にあります。
 その冒頭、九鍼十二原篇は『霊枢』81篇のダイジェスト、と、いわれる部分。
 当院の治療の理由・根拠がここにありますので、訳文※と共に掲載します。

 治療の実際は、東洋はり医学会並びに日本はり医学会の諸先生方から手ほどきを受けたものです。
 両医学会は、『素問』『霊枢』『難経』を基とした伝統的日本鍼灸術で治療をすすめていく、
 実践的医学学術学団体です。

 ※東洋はり医学会初代会長 福島弘道先生解説 「和訓 鍼経霊枢 巻之一 九針十二原篇の臨床解説」
   を参照しています
     鍼経霊枢 巻之一 九鍼十二原篇

序 段   書 き 下 し 文   訳 文
黄帝問於岐伯
曰.
余子萬民.
養百姓.
而收其租税.
余哀其不給.
而屬有疾病.
余欲勿使被毒
藥.
無用?石.
欲以微鍼.
通其經脉.
調其血氣.
營其逆順出入
之會.
令可傳於後世.
必明爲之法.
令終而不滅.
久而不絶.
易用難忘.
爲之經紀.
異其章.
別其表裏.
爲之終始.
令各有形.
先立鍼經.
願聞其情.

岐伯荅曰.
臣請推而次之.
令有綱紀.
始於一.
終於九焉.
請言其道.
黄帝、岐伯に問ふて曰く

「余、万民を子とし、
百姓を養ひ、
而して租税を収む。
余、其の給せずして、
疾病あるに屬するを哀れむ。
余、毒藥を
被らしむることなく、
へん石を用ふることなく、
微鍼を以て、
其の經脉を通じ、
其の血氣を調え、
其の逆順出入の会を
営し、
後世に傳ふべくしめんと欲す。
必ず明らかに之が法を為り、
終ありて滅びず、
久しくして絶えざらしめん。
用ひ易く、忘れ難く、
之が經紀を為り、
其の章を異にし、
其の表裏を別ち、
之が終始を為り、
各々形あらしめん。
先ず鍼經を立てん。
願はくば其の情を聞かん。」
と。
岐伯答えて曰く、
「臣請ふ推して之を次し、
綱紀あらしめ、
一より始め、
九に終らん。
請ふ、其の道を言はん。」
黄帝、岐伯に問ふて言う、

「余は、すべての民をわが子のように思い、
あらゆる職業につく民を庇護し、
租税を収めさせて国政を営んでおります。
しかし天寿をまっとうしない内に、
疾病にかかってしまう民を哀れに感じています。
余は、劇薬(副作用の強い薬)を
与えることなく、
メス(石はり)を用いた外科治療を施すことなく、
なるべく小さな鍼を使って、
疾病におかされた經脉を通じさせ中を流れる血氣を調整し、
正しい血氣の出入りによって
自然適応作用が
円滑に営まれるように治療する、
そのような知見を後の世に正しく伝えたいと願っております。
必ずこの真理を明らかにして、
余が死んだ後も、この真理が滅びることなく、
永遠に絶えることのないようにしたいのです。
そのために、利用しやすく、覚えやすいように
医術経典を編纂するにあったっては、
内容によってそれぞれの章に分け、
原因結果の関係を明確にして、
医術経典の初めから終わりまで、
一貫した形態を備えたものにしたいのです。
まず初めに鍼術の經典から編纂するつもりです。
どうか先生のお考えを聞かせて下さい。」
と。
岐伯は答えて言いました、
「私は推考しつつ本経を編集したく存じます。
順序立てて述べ記すことにしましょう。
あらゆる基礎となる第一章から始め、
全ての終わりであり始まりともなる第九章で終りましょう。
では、その道理を述べていくことにしましょう。」
 第一段   書 き 下 し 文  訳  文
小鍼之要.
易陳而難入.
粗守形.


上守神.


神乎神.

客在門.
未覩其疾.
惡知其原.

刺之微.
在速遲.


粗守關.

上守機.

機之動.
不離其空.
空中之機.
清靜而微.
其來不可逢.

其往不可追.

知機之道者.
不可掛以髮.

不知機道.
叩之不發.

知其往來.
要與之期.
粗之闇乎.
妙哉工獨有之.

往者爲逆.
來者爲順.
明知逆順.
正行無問.
迎而奪之.
惡得無虚.
追而濟之.
惡得無實.

迎之隨之.
以意和之.
鍼道畢矣.

小鍼の要は、
(1)陳べ易くして(2)入り難し。
(3)粗は形を守り、


(4)上は神を守る。


神なるかな神。

(5)(6)(7)(8)客、門に在るも、
(9)未だ其の疾を観ざれば、
(10)悪んぞその原を知らんや。

(11)之を刺すの微は、
速遅にあり、


(12)粗は関を守り、

(13)上は機を守る。

(14)機の動は、
其の空を離れず。
(15)空中の機は、
清静にして微なり。
(16)其の来るには逢ふべから
ず。
(17)其の往くをば、追ふべから
ず。
機の道を知る者は、
(18)掛くるに髪を以てすべから
ず。
機の道を知らざるは、
(19)之を叩けども發せず。

(20)其の往来を知りて、
(21)要は之と期を與にす。
(22)粗の闇いかな。
(23)妙なるかな。工、獨り之を
有つ。
(24)往く者を逆となし、
(25)来る者を順となす。
(26)明らかに逆順を知りて、
正しく行ひて、問ふことなし。
(27)迎えて之を奪へば、
悪んぞ虚なきことを得んや。
(28)追ひて之を済はば、
悪んぞ實なきことを得んや。

之を迎へ、之に随ひ、
意を以て之を和する。
鍼道畢んぬ。

小鍼を用いるための奥義は、
(1)言うは易しく、(2)習得するのは難しいのです。
(3)ヘタな医者(下工)は病状にのみにとらわれ、教科書通りの
鍼の刺し方に固守するものですが(故に、技術として身につける
ことが出来ないのです)、
(4)優れた医者(上工)は刺し入れた鍼先にからみつく気を
とらえて、適切に処置するので、その奥義に達することが
出来るのです。
ああ、神(動詞:血氣を適切に補瀉すること)こそ、
神(名詞:正しく生命力を活性化する方法)なのです。
(5)(6)(7)(8)それゆえ、邪気(客)がツボ(門)より侵入しても、
(9)患者に抵抗力が残っていて、病状となって現れていない時
(10)ヘタな医者(下工)では、どのような邪氣によって冒された
のか、察することは難しいのです。
(11)この(邪氣が侵入しているが、病症が現れていない)時、
邪氣を排除するための微妙さは、その手さばきにあります。
いつ抜き、いつまで留めるか、その時機をどのようにとらえる
ことができるかが重要なのです。
(12)ヘタな医者は○○に効くツボといって、どのツボを使おうか
考えますが、
(13)優れた医者は生きて働いているツボの気の去来(正気の
到る時、邪気の去る時)に対応するのです。
(14)生きて働いているツボの所作は、人体の気の流れの中の
部分であり、その流れから離れて存在するものではありません。
(15)気の流れの中で、生きて働いているツボは、
至微至妙なものです。
(16)従って、既に気が至っている時には、それ以上、
氣を補ってはいけません。
(17)また邪氣が除かれた時には、それ以上、氣を瀉して(氣を
奪うこと)は、いけません。
生きて働いているツボの道理を知っている者は
(18)髪の毛ほどのわずかな狂いもなくその所作を捉えています。
生きて働いているツボの道理を知らない者は、
(19)戸を叩いても応答が無い様に、
鍼をしてもその効果は発揮されないのです。
(20)氣の去来を知って、
(21)全く的確にそれに対処しています。
(22)しかしヘタな医者はこの点に暗いのです。
(23)素晴らしいことに、優れた医者(上工)は
この感覚を有しているのです。
(24)気が既に去り、脉気が虚して小となったものを「逆」とします。
(25)気が到来して、脉気が平になったものを「順」とします。
(26)気の逆順の道理をよくわきまえている者は、鍼を正しく刺す
ことができるので、治療に行き詰まることはありません。
(27)つまり、気の流れに逆らって氣を瀉すなら、
邪氣を除けないことがあるでしょうか(いいえありません)。
(28)また、気の流れに従って氣を補うなら、
生気を充実させて健康体にすることが出来ない
ことがあるでしょうか(いいえありません)。
ゆえに気の流れに逆らう瀉法、従う補法を用いて、
脉気のバランスをとる(平にする)目的意識を持って、その状態を
調和させるのです。
これで鍼術が目指す道(目標:脉気のバランスを取ること)
の解説を終わります。
 第二段   書 き 下 し 文   訳  文
凡用鍼者.
虚則實之.
滿則泄之.

宛陳則除之.

邪勝則虚之.

大要曰.
徐而疾則實.

疾而徐則虚.

言實與虚.
若有若無.
察後與先.
若存若亡.

爲虚爲實.
若得若失.
虚實之要.
九鍼最妙.

補寫之時.
以鍼爲之.
寫曰必持内之.
放而出之.
排陽得鍼.
邪氣得泄.
按而引鍼.
是謂内温.
血不得散.
氣不得出也.
補曰隨之.

隨之意.
若妄之.
若行若按.
如蚊虻止.
如留如還.
去如絃絶.

令左屬右.
其氣故止.
外門已閉.
中氣乃實.

必無留血.
急取誅之.
持鍼之道.
堅者爲寳.
正指直刺.
無鍼左右.
神在秋毫.
屬意病者.
審視血脉者.
刺之無殆.
方刺之時.
必在懸陽.
及與兩衞.
神屬勿去.
知病存亡.
血脉者.
在愈横居.
視之獨澄.
切之獨堅.
凡そ鍼を用ふる者は、
(29)虚するときは則ち之を實し
(30)滿つるときは則ち之を瀉
す。
(31)宛陳するときは則ち之を除

(32)邪勝つときは則ち之を虚し
す。
大要に曰く、
(33)「徐ろにして、疾きときは
則ち實し、
(34)疾くして徐ろなるときは
則ち虚す」と。
(35)實と虚とを言ふは、
有るがごとく、無きがごとし。
(36)後と先とを察するは、
存するがごとく、亡きがごとし。

(37)虚となり、實となるとは、
得るがごとく、失ふがごとし。
虚實の要は、
九鍼最妙なり。

補寫の時は、
鍼を以て之をなすなり。
寫は、必ず持ちて之を
内れ、
放ちて之を出すを曰ふ。
陽を排して鍼を得れば、
邪気泄るるを得る。
按じて鍼を引く。
是を内温と謂ふ。
血、散るを得ず。
気、出ずるを得ざるなり。
補とは、之に随ふを曰ふ。

之に随ふとは、意、
之を妄りにするがごとく、
行くがごとく、按ずるがごとく、
蚊虻の止まるが如く、
留るが如く、還るが如く、
去ること弦の絶つが如し。

左をして右に屬せしむ。
其の気、故に止まる。
外門以て閉じ
中気乃ち実す。

必ず血を留むることなかれ。
急に取りて之を誅せ。
鍼を持つの道は、
堅き者を寶となす。
正しく指し、直刺し、
鍼を左右にすることなかれ。
神は秋毫に在り、
意を病者に屬し、
審らかに血脈を視る者は、
之を刺すに、殆きことなし。
之を刺すの時に方りては、
必ず懸陽及び
両衛と與に在れ。
神屬し去ることなかれ。
病の存亡を知れ。
血脈は
愈に在り横居す。
之を視れば独り澄み、
之を切すること独り堅かれ。
一般に鍼を刺す原則は、
(29)氣が不足しているときは、
氣を補って充実させ、
(30)邪気が多すぎるときには、
これを瀉してちょうど良い状態(平という)にし、
(31)悪血が滞っているときは、
刺絡によってこれを除き、
(32)邪気が盛んな時には、
瀉法を加えて、これを排除しなければなりません。
さらにその手さばきを大まかにいうと、
(33)「静かにゆっくり刺入した鍼を、催氣によって気を補い、
パッと抜くと生気が補われます。
(34)一方、速やかに刺入した鍼を、その邪を引き抜く様に
ゆっくり徐々に抜き去ると、邪氣は除かれるのです」と。
(35)さて、実というのは、気が充実していることで
虚というのは、まるで気が無いように不足していることです。
(36)経絡治療を行なう前と後とを比較すると、
無かなったものが現れたような感じがしたり、
存在したものが無くなったような感じがします。
(37)あるいは虚や、実になるという感じは、
何か得たような、あるいは何か失われたような感じがするものです。
虚実の操作を行うには、
九種類の鍼を用いて行うのが最も適しています。
つまり補寫を行なう時には、
適切な鍼を用いて、刺鍼を行うのです。
瀉法についていうと、必ず目的意識を持って鍼を入れ、
(皮膚表面に)下圧をかけて、鍼を抜けば
陽分にある邪氣は、
自ずと排出することが出来るのです。

鍼孔に下圧をかけて鍼をゆっくり抜きますと
『内温』といって、患者は温かみを感じます。
これは滞っていた血が動いたことを意味し、
気が漏れ出ることなく、調ったことを現わします。
補法というのは、気の流れる方向に従って気を補うことです
気の流れる方向に、従うというのは、
気の流れに逆らわないということです。
気ままに鍼をするのでは無く、
自然にやさしく鍼を進めていきます。
それは、蚊や虻が皮膚に止まって、人に気付かれないように
嘴を刺し入れ、気付かれずに抜いて飛んでいくような感じです。
鍼を抜くときは、引き縛った弓の弦が突然切れたときの
弓の引き手のように、刺し手に持った鍼を抜き去ります。
このとき、左の押し手は、右の刺し手の抜鍼と同時に
間髪を入れず鍼孔を閉じますと、刺鍼によって流れ込んだ気は
漏れることなく患者の体内に留まります。
鍼孔はすでに閉じられていますから、補われた気は患者の
虚した経絡を満たすことになります。
必ず気の流れを充実させて、血が滞ることがあってはいけません。
その為に抜鍼の鍼は素早く鍼を引いて下さい。
鍼の原則は、
堅い脉を寶と言います。
虚経を間違うことなく判別し、虚経に鍼をして下さい。
しかし、虚経を左右同時に鍼をすると失敗します。
神気は秋に抜け替わったあとの柔らかい毛のように微妙です。
意識を患者に集中し、、
血脈の虚実をしっかりを判別する者は、
患者への鍼を間違えることはありません。
患者へ鍼をするとき、
必ず患者の皮膚の艶や眉間の状態を観察して下さい。
患者の神気の存在を確かめ、
神気を奪うような施術をしてはいけません。
患者の病の原因である気血の状態(有無)を判別して下さい。
血脈の状態は
患者の愈穴を観察して下さい。愈穴を観察すれば、
虚している経の愈穴は他と比較して色が薄く、
その愈穴の周囲はより堅く感ずるでしょう。。
 第三段   書 き 下 し 文   訳  文
九鍼之名.
各不同形.
一曰?鍼.
長一寸六分.
二曰員鍼.
長一寸六分.
三曰?鍼.
長三寸半.
四曰鋒鍼.
長一寸六分.
五曰ハ鍼.
長四寸.廣二分
半.
六曰員利鍼.
長一寸六分.
七曰毫鍼.
長三寸六分.
八曰長鍼.
長七寸.
九曰大鍼.
長四寸.
?鍼者.
頭大末鋭.
去寫陽氣.
員鍼者.
鍼如卵形.
揩摩分間.
不得傷肌肉.
以寫分氣.
?鍼者.
鋒如黍粟之鋭.
主按脉.
勿陷以致其氣.

鋒鍼者.
刃三隅.
以發痼疾.
ハ鍼者.
末如劔鋒.
以取大膿.
員利鍼者.
大如釐.
且員且鋭.
中身微大.
以取暴氣.
毫鍼者.
尖如蚊虻喙.
靜以徐往.
微以久留之.
而養.
以取痛痺.
長鍼者.
鋒利身薄.
可以取遠痺.
大鍼者.
尖如挺.
其鋒微員.
以寫機關之水
也.
九鍼畢矣.
九鍼の名は、
各々形を同うせず。
一に曰く、ざん鍼。
長さ一寸六分。
二に曰く、員鍼。
長さ一寸六分。
三に曰く、てい鍼。
長さ三寸半。
四に曰く、鋒鍼。
長さ一寸六分。
五に曰く、ハ鍼。
長さ四寸。広さ二分半。

六に曰く、員利鍼。
長さ一寸六分。
七に曰く、毫鍼。
長さ三寸六分。
八に曰く、長鍼。
長さ七寸。
九に曰く、大鍼。
長さ四寸。
ざん鍼は、
頭大に、末鋭なり、
陽気を去寫す。
員鍼は、
鍼卵形の如し。
分間を揩摩す。
肌肉を傷ることを得ず。
以て分気を寫す。
てい鍼は、
黍粟の鋭なるが如し。
脈を按ずるを主る。
陥することなかれ、
以て其の気を致すなり。
鋒鍼は、
刃三隅にして
以て痼疾を發く。
ハ鍼は、
末劍鋒の如し
以て大膿を取る。
員利鍼は、
大きさ釐の如く、
且つ員にして、且つ鋭、
中身は微しく大なり。
以て暴気を取る。
毫鍼は、
尖りて蚊虻の喙の如く、
静かに以て徐に往く。
微にして以て久しく之を
留めて、養ひ、
以て痛痺を取る。
長鍼は、
鋒利し、身薄く、
以て遠痺を取る。
大鍼は、
尖りて挺の如く、
其の鋒は微しく員にして、
以て機関の水を寫す。

九鍼畢んぬ。
九つの鍼をその名に従って観察すると、
各々の用途に従って適切な形となっています。
一つ目には、ざん鍼。
長さ一寸六分。
二つ目は、員鍼。
長さ一寸六分。
三つ目は、てい鍼。
長さ三寸半。
四つ目は、鋒鍼。
長さ一寸六分。
五つ目は、ハ鍼。
長さ四寸。広さ二分半。

六つ目は、員利鍼。
長さ一寸六分。
七つ目は、毫鍼。
長さ三寸六分。
八つ目は、長鍼。
長さ七寸。
九つ目は大鍼。
長さ四寸。
ざん鍼は、
頭が大きく、末は尖っており、
陽の気の邪気を除く(寫す)時に使います。
員鍼は、
皮膚に接する所が卵形のように丸くなっており。
皮膚を撫でさすって、皮下にある気を整えるます。
肌肉を傷つけて、
肌肉の間を流れる気が泄れる(寫す)ことがありません。
てい鍼は、その先が
黍(きび)や粟(あわ)のように小さく丸くなっており、
経脉を軽く圧すことを主目的とするものです。
しかし決して皮膚が凹むほど強く圧していけません。
それによって経気を調えます。
鋒鍼は、
その鍼先が三角に尖っており、
それによって痼疾を治療します。
ハ鍼は、
その先が刀剣のようになっているので
それによって深い所の膿を取り除きます。
員利鍼は、
釐(唐牛の尾)のように大きく、
丸く、かつ先が鋭っていて、
中程は僅かに大きくなっています。
それによって著しい邪気を取ります。
毫鍼は、
その先が尖っていて、まるで蚊や虻の喙のようです。
極めて静かに刺入し、それによって微妙な気の動きを
観察しながら、しばらく催気を施しながら鍼を留めて、
気を経脉に循らし、
それによって痛み、痺れを取ります。
長鍼は、
鍼先が尖って、鍼体が薄いので、
それによって深い所にある痺れを取ります。
大鍼は、
鍼先が尖っている挺(てこ)のような形で、
その鍼先は僅かに丸みをおびており、
それによって関節の邪水を取ります。

これで九鍼の解説を終わります。
 第四段   書 き 下 し 文   訳  文
夫氣之在脉也.
邪氣在上.
濁氣在中.
清氣在下.
故鍼陷脉則邪
氣出.
鍼中脉則濁氣
出.
鍼大深.
則邪氣反沈.
病益.

故曰.
皮肉筋脉.
各有所處.
病各有所宜.
各不同形.
各以任其所宜.

無實無虚.

損不足而益有
餘.
是謂甚病.
病益甚.
取五脉者死.
取三脉者?.

奪陰者死.
奪陽者狂.

鍼害畢矣.
夫れ気の脈に在るや、
(38)邪気は上に在り、
(39)濁気は中に在り、
(40)清気は下に在り。
(41)故に陥脈に鍼すれば、
邪気出づる。
(42)鍼して脈に中るときは、則
ち濁気出づる。
(43)鍼すること、大いに深きと
きは、
則ち邪気反って沈み、
病は益す。
故に曰く、
(44)皮肉筋脈は、
各々処する所あり。
病は各々宜しき所あり。と。
各々形を同じうせず。
各々以て其の宜しき所に任か
すなり。
実することなかれ。虚すること
なかれ。
不足を損じて、
有余を益す。
是れを甚病と謂ふ。
病ひ益々甚し。
(45)五脈を取る者は、死し、
(46)三脈を取る者は、おそる。

(47)奪陰の者は、死し、
(48)奪陽の者は、狂す。

鍼の害畢んぬ。
生命エネルギーとしての気が存在するなら
(38)気を主とする邪気は最も浅い皮毛に在り、
(39)血の主どりである濁気は中程の経脉・肌肉に在り、
(40)邪気を受けていない清気(正気)はさらに下に在ります。
(41)故に経脉の陥なるところに鍼をすれば、
邪気を除くことが出来ます。
(42)鍼をして経脉に中るときは、
血の変化である濁気が除かれます。
(43)しかし、さらに深く鍼をすると、
かえって邪気が沈み、
病は益々激しくなります。

故にこれらを理論的に考察すると、
(44)皮・肉・筋・脉は、
各々適切に処理する所があるということです。
病には各々治療すべき所があります。
それゆえ九鍼はそれぞれに対応して形が異なります。
それぞれ形態に応じて
治療を対応させることが肝心です。
用鍼の選択が不適切であれば、実がさらに実することとなり、
虚はさらに虚することになります。
正気が虚損すれば、ますます病が激しくなります。
これを甚病といい、
病がさらにひどくなるのです。
(45)治療家が五脉すべてを虚にしてしまえば、
患者は死んでしまいます。
(46)治療家が三脉(陽分の脉)を虚にしてしまえば、
患者はおどおどして不安になります。
(47)つまり陰分の脉が虚してしまえば、患者は死んでしまい、
(48)陽分の脉が虚してしまえば、
患者は健全な精神を保てなくなります。
これで鍼の害の解説を終わります。
 第五段   書 き 下 し 文   訳  文
刺之而氣不至.
無問其數.
刺之而氣至.
乃去之勿復鍼.

鍼各有所宜.
各不同形.
各任其所爲.

刺之要.
氣至而有效.
效之信.
若風之吹雲.
明乎若見蒼天.

刺之道畢矣.
之を刺して、気至らざるは、
其の数を問ふことなかれ。
之を刺して気至らば、
乃ち之を去れ。復た鍼すること
なかれ。
鍼は、各々宜しき所あり。
各々形を同じうせず。
各々其の為す所に任かするな
り。
刺の要は、
気至りて效あるなり。
效の信は、
風の雲を吹くがごとし。
明乎として、蒼天を見るがごと
し。
刺の道畢んぬ。
患者に鍼をして、催気の目的を達成することが出来なければ
鍼数を気にすることはありません。
鍼をして、催気の目的を達成することが出来たならば
すぐに鍼を抜き、再び鍼をしてはいけません。

その為に鍼をして適切な所があり、
鍼の形態もそれぞれ異なっているのです。
病態、組織の応じて、それぞれの鍼を使い分ける
必要があります。
鍼をすることの重要性は、
催気の目的を達成して、治療効果を出すことです。
治療効果があるときは、
風が天空を覆う雲を吹き払って
太陽の輝きの元に、青空を見るように、
晴れ晴れしく感じるのです。
これで刺鍼の目的(目指す道)の解説を終わります。
 第六段   書 き 下 し 文   訳  文
黄帝曰.
願聞五藏六府
所出之處.
岐伯曰.
五藏五兪.
五五二十五兪.
六府六兪.
六六三十六兪.
經脉十二.
絡脉十五.
凡二十七氣.
以上下.

所出爲井.
所溜爲栄.
所注爲兪.
所行爲經.
所入爲合※.
二十七氣所行.
皆在五兪也.
節之交三百六
十五會.
知其要者.
一言而終.
不知其要.
流散無窮.
所言節者.
神氣之所遊行
出入也.
非皮肉筋骨也.

覩其色.
察其目.
知其散復.
一其形.
聽其動靜.
知其邪正.
右主推之.
左持而禦之.

氣至而去之.


黄帝曰く、
「願はくば、五藏六府の出る所
の處を聞かん」
岐伯曰く、
「五藏は五兪。
五五。二十五兪。
六府は六兪。
六六。三十六兪。
經脈は十二。
絡脈は十五。
凡そ二十七気は、
以て上下す。

出づる所を井と為す。
溜る所を栄と為す。
注ぐ所を兪と為す。
行く所を經と為す。
入る所を合と為す。
二十七気、行く所は、
皆五兪に在るなり、
(53)節の交は、三百六十五
會。
其の要を知る者は、
一言にして終る。
其の要を知らざる者は、
流散し窮まりなし。
節と言ふ所の者は、
神気の遊行出入する所なり。

皮肉筋骨にはあらざるなり。

(49)其の色を観て、
(56)其の目を察し、
其の散復を知る。
其の形を一にし、
其の動静を聽き、
(50)其の邪正を知る。
(51)右は、之を推すを主り、
左は、持ちて之を禦す。

(52)気、至りて之を去る。


黄帝が次のようにおっしゃいました。
「五藏六府の気が出入りする所を教えて頂けないだろうか」

岐伯が答えて言います。
「五藏には五兪(正しくは肉月+兪)あるので、
五五。二十五兪。
六府には六兪あるので、
六六。三十六兪。
經脈は(1年の月の数に合わせて)十二。
絡脈は(任脈の尾翳、督脈の長強、脾の大包絡を加え)十五。
経脉と絡脉を併せて二十七気は、その中を流れる気血が
上下流動して留まることはありません。

指の端から気が出る所を井穴と言います。
(体幹の方に進んで)溜る所を栄穴と言います。
注ぐ所を兪穴と言います。
行く所を經穴と言います。
入る所を合穴とと言いますが、
二十七気の行く所には、
全て五兪(正しくは肉月+兪)穴が在ります。
(53)しかし全身の経穴は(1年の日数に合わせ)、
三百六十五穴あります。
その重要点は、
一言で言い得てしまいます。
その重要点が分からなければ、
治療家は何をして良いか分からなくなってしまいます。
ここで言われている経穴と言ふ所は、
生命エネルギーである神気が出入する所であり、
今まさに生きて働いている穴です。
(経穴書に書かれている)皮・肉・筋・骨は、
神気が出入する所ではなく、その目安に過ぎません。
(49)従って(患者の治療に当たっては)、体表に現れる色を観察し、
(56)患者の目の色を診て、
患者の病の状態を知ることが出来ます。
観察・刺鍼(治療)技法を統一して、
患者の気血の動きをを観察することによって、
(50)邪気と正気の状態が分かるのです。
(51)刺し手である右手は、鍼を圧すことを主作用としており、
押し手である左手は、鍼体を支えて生命エネルギーである
気の働きを制御します。
(52)そして気が至れば(目的を達成たなら)、
直ちに鍼を抜き去ります

 第七段   書 き 下 し 文   訳  文
凡將用鍼.
必先診脉.
視氣之劇易.
乃可以治也.
五藏之氣.
已絶於内.
而用鍼者.
反實其外※.
是謂重竭.
重竭必死.
其死也靜.
治之者.
輒反其氣.
取腋與膺.
五藏之氣.
已絶於外.
而用鍼者.
反實其内.
是謂逆厥.
逆厥則必死.
其死也躁.
治之者.
反取四末.
刺之害.
中而不去.
則精泄.
害中而去.
則致氣.
精泄則病益甚
而q.
致氣則生爲癰
瘍.


凡そ、将に鍼を用いんとせば、
必ず先づ脈を診し、
気の劇易を視て、
乃ち以て、治すべきなり。
(54)五藏の気、
巳に内に絶し、
而して、鍼を用ふる者、
反って其の外を實する。
是れを重竭と謂ふ。
重竭は、必ず死す。
其の死するや、静かなり
之を治する者は、
輒ち其の気に反して、
腋と膺とに取れ。
(55)五藏の気
已に外に絶し、
而して鍼を用ふる者、
反って其の内を実する。
是を逆厥と謂ふ。
逆厥するときは則ち必ず死す。
其の死するや、躁がし。
之を治する者は、
反って、四末に取れ。
刺の害は
中りて而かも去らざるときは、
則ち精泄るる。
中らずして去るときは、
則ち気を致す。
精、泄るるときは則ち病ひ、
益々甚しく、而かも翌モし。

気を致すときは、則ち生じて、
癰瘍となる。

鍼を使って患者の治療を行おうとするなら、
必ずすべきことは、最初に脉を診て、
経絡の気の流れの劇易(虚実)を把握してから、
治療にあたらねばなりません。
(54)そうでないと、五藏の気のうち、
陰分の気が既に尽きている患者に対して、
(その訴えに振り回されて)、鍼治療を行えば
病症に従って陽分を補うことになるでしょう。
これは重ねて竭(つく)す、「重竭」と言います。
これによって、陰陽の差が益々大きくなるので、
患者は、必ず死にます。
そのような患者が亡くなるときは、静かに亡くなります。
このような重篤な患者を治療しようとすれば、
患者の気の状態にかかわらず、
その患者の腋窩と乳の上に鍼をするとよいのです。
(55)また五藏の気のうち
陽分の気が既に尽きている患者に対し、
(その訴えに振り回されて)、鍼治療を行えば、
病症に従って陰分を補うことになり、逆に陰気を過剰にします。
これを逆厥といいます。
逆厥するとき、患者は必ず死にます。
そのような患者が亡くなるときは、のたうちまわって亡くなります。
このような重篤な患者を治療しようとすれば、
(急性劇症ですから、変動経絡の)末端に井穴刺絡を行いなさい。
鍼治療で失敗するのは
目的とする場所で十分補えているのに、鍼を抜かないでいると、
せっかく補えた精気が泄れてしまうのです。
目的とする邪気が存在する場所で抜鍼できなければ、
邪気が残ることになります。
精気が泄れてしまうと病は益々甚だしくなり、

邪気が残ると「癰傷」と言って、
刺鍼部が化膿してできものが出来ます。

 第八段   書 き 下 し 文   訳  文
五藏有六府.
六府有十二原.
十二原出於四
關.

四關主治五藏.
五藏有疾.
當取之十二原.
十二原者.
五藏之所以稟
三百六十五節
氣味也.
五藏有疾也.
應出十二原.
十二原各有所
出※.
明知其原.
覩其應.
而知五藏之害
矣.
陽中之少陰.肺
也.
其原出於大淵.
大淵二.
陽中之太陽.心
也.
其原出於
大陵二.
陰中之少陽.肝
也.
其原出於太衝.
太衝二.
陰中之至陰.脾
也.
其原出於太白.
太白二.
陰中之太陰.腎
也.
其原出於太谿.
太谿二.
膏之原.
出於鳩尾.
鳩尾一.
肓之原.
出於「栫D
「梭黶D
凡此十二原者.
主治五藏六府
之有疾者也.

脹取三陽.
屐侮謗O陰.




五藏に六府あり、
六府に十二原あり。
十二原は四關に出づ。


四關は五藏を治するを主る。
五藏に疾あらは、
当に之を、十二原に取るべし。
十二原は、
五藏の以て、三百六十五節の
氣味を稟くる所なり。

五藏に疾あるや、
応は、十二原に出ずる。
十二原は、各々出るに所あ
り。
明らかに其の原を知り、
其の応を観て、
而して五藏の害を知るなり。

陽中の少陰は、肺なり。

其の原は、太淵に出づる。
太淵は二なり。
陽中の太陽は、心なり。

其の原は、太陵に出づる。
太陵は二なり。
陰中の少陽は、肝なり。

其の原は、太衝に出づる。
太衝は二なり。

陰中の至陰は、脾なり。

其の原は、太白に出づる。
太白は二なり。

陰中の太陰は、腎なり。

其の原は、太谿に出づる。
太谿は二なり。
膏の原は、
鳩尾に出づる。
鳩尾は一なり。
肓の原は、
・・に出づる。
・・は一なり。
凡そ此の十二原なる者は、
五藏六府の疾あるを、治する
を、主る者なり。
脹は、三陽に取る。
・泄は、三陰に取る。




人体には五藏と対を為す六腑があります。
六腑に繋がる経絡には左右それぞれ六つ、
合計十二の原穴があります。
その十二原穴はいずれも手の肘関節より先、
足の膝関節より先、即ち四関に存在します。
従って、四関より先にある要穴は五蔵を治することを主どります。
つまり、五藏に病がある時は、
まさにこの十二原穴によって病の診断治療ができるのです。
十二原穴は、
各五蔵に配当される三百六十五の穴に出入りする気を
受けている所です。

五蔵に病がある時は、
その反応が、十二原穴に現れるのです。
十二原穴には、各々対応する五蔵の症状が出る所です。
それ故、はっきりと病の原(もと)を知って、
十二原穴に現れている反応を観察すれば、
五蔵がどの様な害(邪気)に犯されているかを知ることが
出来るのです。
(そこで原穴の名前を解説すると、
陽中の少陰(横隔膜の上にあり、少し陰気を受けている)蔵は
陽臓ですが、のが、
肺です。
肺の原穴は、太淵と言い、
太淵は手の左右にそれぞれ一つ、計二つあります。
陽中の太陽(横隔膜の上にあり、最も陽気を受けている)蔵は
心です。
心の原穴は、太陵と言い、
太陵は手の左右にそれぞれ一つ、計二つあります。
また横膈膜より下にある臓器は、肝、脾、腎ですが、
陰中の少陽は(横膈膜より下にあり、少し陽気を受けている)蔵は
肝です。
肝の原穴は、太衝と言い、
太衝は足の左右にそれぞれ一つ、計二つあります。
陰中の至陰(横膈膜より下にあり、最も陰気が少ない)蔵は、
脾です。
脾の原穴は、太白と言い、
太白は足の左右にそれぞれ一つ、計二つあります。
陰中の太陰(横膈膜より下にあり、最も陰気が多い)蔵は、
腎です。
腎の原穴は、太谿と言い、
太谿は足の左右にそれぞれ一つ、計二つあります。
膏の原穴は、
鳩尾と言います。
鳩尾は任脉(正中線)上に一つあります。
肓の原穴は、
[ぼつおう] と言います。
[ぼつおう] は任脉(正中線)上に一つあります。
上記の原穴すべて併せた十二原穴は、
五藏六府の病の治療を主るのです。

その治療法の一部を挙げると、「脹」といって、
腹の張る病には足の三陽(胃経、膀胱経、胆経)を用い、
?泄と言って未消化便を下すときは、
足の三陰(脾経、腎経、肝経)を用いて治療します。
 第九段   書 き 下 し 文   訳  文
今夫五藏之有
疾也.
譬猶刺也.
猶汚也.
猶結也.
猶閉也.
刺雖久.
猶可拔也.
汚雖久.
猶可雪也.
結雖久.
猶可解也.
閉雖久.
猶可決也.
或言久疾之不
可取者.
非其説也.
夫善用鍼者.
取其疾也.
猶拔刺也.

猶雪汚也.
猶解結也.
猶決閉也.

疾雖久.
猶可畢也.
言不可治者.
未得其術也.
刺諸熱者.
如以手探湯.
刺寒清者.
如人不欲行.
陰有陽疾者.
取之下陵三里.

正往無殆.
氣下乃止.
不下復始也.
疾高而内者.
取之陰之陵泉.
疾高而外者.
取之陽之陵泉
也.

今、夫れ五藏の疾あるや、
譬ふれば、猶ほ、刺のごとき
なり。
猶ほ、汚のごときなり。
猶ほ、結のごときなり。
猶ほ、閇のごときなり。
刺は、久しきと雖も、
猶ほ抜くべきがごときなり。
汚は、久しきと雖も、
猶ほ雪ぐべきがごときなり。
結は、久しきと雖も、
猶ほ解くべきがごときなり。
閇は、久しきと雖も、
猶ほ決すべきがごときなり。
或るひとの言ふ。久疾の取る
べからざるとは、
其の説にあらざるなり。
夫れ善く鍼を用ふる者は、
其の疾を取るや、
猶ほ、刺すを抜くがごときな
り。
猶ほ、汚を雪ぐがごときなり。
猶ほ、結を解くがごときなり、
猶ほ、閇を決するがごときな
り。
疾、久しきと雖も、
猶ほ、畢るべきがごときなり。
治するべからざると言ふ者は、
未だ、其の術を得ざるなり。
諸々の熱を刺す者は、
手を以て湯を探るが如くせよ。
寒清を刺す者は、
人の行くを欲せざるが如くせ
よ。
陰に陽疾ある者は、
之を下陵の三里に取れ。
正しく往すれば、殆きことなし。
気下れば、乃ち止めよ。
下らざれば、復び始むるなり。
疾、高くして内なる者は、
之を陰の陵泉に取れ、
疾、高くして外なる者は、
之を陽の陵泉に取るなり。


今、五藏に病のある患者を診察すると、
例えば、さながらトゲが刺さったようです。
あるいは汚れた布のように、
あるいは、結ばれた紐のように、
あるいは、閉じて通じない水門のように
種々様々になっており一様ではない。
これらの病を治療しようとすれば、
刺されたものを抜くように、
汚れた布を洗い雪ぐように
結ばれた紐を解くように、
更に閉じた水門は開いて水を流すように、
各々その変化変動のありさまに応じて
適宜適切な処置をしなければならないのです。

従って慢性の疾患を治すことが出来ないなどという
人もいますが、その説は正しくありません。


つまり、よく病を治すことの出来る上工(優れた医者)は、
さながら刺したるトゲを抜くように、
汚れた布を雪ぐように、
結ばれた紐を解くように、
閉じた水門を開くように、
適宜適切な処置を行うのです。
そうすれば、いかに慢性の疾患といっても、治療すること
が出来るのです。
故に治療することが出来ないというのは
その人が上工の技術を身につけていないからです。
(厳しく反省しなければなりません)
その治療法の一例を具体的に言いますと、
例えば、数脉を現している種々の熱症に応じる手法は
熱い湯加減を手でみるように、パッパッと行って下さい。
また遅脉を現している種々の冷えの症状に応じる手法は
人との別れを惜しむように、入念な手法で行って下さい。
次に刺鍼部位と方法について述べれば、
陰分である臓腑が急に病が起こった場合は、
足の三里穴に施術します。
決して怖々行ってはいけません。自信を持って行いなさい。
そして、目的を達成した(気が下る)なら、直ちに施術を止め
なさい。気が下らなければ、もう一度やってみます。
病が、横隔膜より上で、内(陰臓)に発したなら
陰陵泉穴に施術します。
病が、横隔膜より上で、外(皮膚・筋等)に発したなら、
陽陵泉穴を用いて施術します。

 これにて、九鍼十二原篇の解説を終わります。