小さな復活
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小さな復活
Aさんが、小さな復活をしました。食べない、目が開かない、しゃべらない、・・・無い無いづくしのAさんが、ご飯を食べだしました。果物を食べだしました。 主治医・介護施設の職員・Aさんの子Bさんなどのチームプレーを書いてみます。 高齢者ケアは色々なケースがあり、考え方があり、その対応も違ってきます。 自分の最も親しい(親・兄弟など)親族とか親友とかのターミナルに遭遇したことがない 方は非常にドライな考え方で簡単に話します。しかし、当事者は悩み苦しみその対応につい て考え続けているのです。一人一人皆違います。全てが正しいのです。 |
小さな復活
@ カンファレンス会議 Aさんが生活している介護施設では3ヶ月に1度程度(2011年から6ヶ月に一度に変更 あり)のカンファレンス会議があります。 その会議には、施設の職員(相談員・介護士・看護師・栄養士)家族が参加しています。 (家族が参加するようになったのは4年前位) 最近Aさんの食事が進まない、水分摂取も基準から大きく落ちていると報告がありました。 Bさんの観察でも水分の摂取が不足してくるとAさんの気力がなくなり、食事(高カロリー 栄養飲料)も進まなくなり、目も開かない状態が多くなります。 どのようにすれば解決するかを議論しました。 A 家族の出来ること 家族として出来るだけ付き添い水分の摂取をこころがける (可能な限り栄養分豊富な飲み物) 職員も夜間など時間が許せば水分を補給摂取してもらう。 それでしばらく様子を見る。夜勤の職員の方々が見回りの折に水分を摂取を試みました。 水分はポカリスエットを家族が用意する等々で観察していましたが、改善の様子がありま せん。そこで主治医の先生と相談することとしました。 ※ 延命について 延命については今までに色々と書いてきましたが、正解が見つかりません。 見つからないというよりは正解がないということでしょうか。 人それぞれ、家族の形態、環境などなど多くの要素があり、食べ物を口にしなくなった らそれ以上は延命だからお終いにしようという人、胃ろうや鼻管栄養補給はして欲しいと いう人など、意見が違います。 延命の意味も以前に記しましたが、終末期の病気の方、老衰の方等その状況により違い ます。Aさんの場合は「YES・NO」がはっきりとしていますし、笑顔も見せてくれます。 自分で食べられない、自分で動けない、自分で何もできない、しかし、自分の意思は しっかりとあるのです。 それでも延命だからといって、そのままにしておくのでしょうか。 Bさんはそれは出来ないでしょうし、相談される私も出来ません。 一生懸命にお世話をしたいと考えています。 B 主治医の先生と打合せ 主治医・介護施設の職員・看護師・家族が集まり、主治医の意見を伺うことにしました。 主治医 「水分の点滴をしましょう」と結論を出して下さいました。 看護師 「どのような状態で点滴をすればいいのですか」 主治医 「1日当たりの尿の量の基準を決めておきます。1日当たりの基準300g以下に なれば Aさんに点滴をして下さい」 「尿パッド取り換え時に重さを量り、もともとの重さを差し引いて下さい」 看護師・介護士 「了解しました」 家族 「仕事は増えますがよろしくお願い致します。家族でできることがあればどんな ことでもご指示ください」 C Aさんの現状 排尿の数値により、点滴をはじめまして1カ月位からAさんは少し意欲がでてきました。 ホームでの誕生日会でAさんが普通にケーキを食べました。職員も家族も手を叩いて 喜んでくれていました。小さな復活です。 ホームで生活している方が食べ物を口にすることをこれだけ喜んでくれる介護職の方々が いると 思うと本当にうれしくなりました。 現在は、ご飯50%とか、みそ汁、パンとか色々なものを口にするようになりました。 家族は、出来るだけ高カロリー栄養食品を食べて貰い、果物など(アボカド・バナナ・ ミカン等々)食材として選んでいます。 H22年10月には、秋の外出(介護施設の行事)で職員の方々とホテルでケーキを食べ、 海岸で海を眺め、Aさんが“すごい”と話されました。表情豊かに過ごす時間さえ持てるよう になりました。ただただ、主治医・相談員・看護師・介護士等々の皆様に感謝です。 ※ Aさんが面会時に何回笑ってくれたか、何をしゃべってくれたかが楽しくて楽しくて 通っています。限りある生命です。 永遠に生命が続く訳ではありませんが、少しでも笑って貰い、苦しまずに医師には老衰と 書いてもらいたいと願って、Bさんは頑張っていると話しています。 Aさんは、天使のように可愛くなりました。損得を考えない純真な人になりました。 Top page |