この章では、世界で行われている主要な宗教についての幾つかの分類を示してみたいと思います。これによって、主な宗教についての概括的(おおまかに全体からみたさま)な理解を得ることを目指します。
分類とは、辞書に「ある基準に従って、物事を似たものどうしにまとめて分けること」(『大辞林』第3版)と書かれています。世界に現れている複雑な現象(私たちに感覚されるものごと)は、この分類という作業を通じて整理され、その結果、より系統的に理解することが可能となります。そのため従来から経験科学(第1章参照)の世界では、分類は重要な手法の一つとなってきました。むろん宗教学の分野でも、これまで世界の宗教を様々に分類することが試みられています。ここではそのほんの一端をお示しすることで、皆さん自身の中でより整理されたかたちで宗教を理解していくためのよすが(たよりにするところ)にしていこうと思います。
ここで注意しておきたいことがあります。それは、ある分類が示されたとしてもそれは唯一絶対のものではないということです。分類は、普通対象となるものごとの特定の部分に注目して行うのが普通です。たとえば、ニワトリ、飛行機、鶴、イルカ、ミサイルの五つを分類しようとするとき、飛べるか飛べないかという点に注目すると[飛行機、ミサイル、鶴]と[ニワトリ、魚]のグループに分けることができますが、生き物かそうでないかを基準にすると[ニワトリ、魚、鶴]と[飛行機、ミサイル]に分かれます。つまり、どの部分に注目するかによって分類は様々となるわけです。しかも、このときつかった基準(視点)はまったく分類者の意思によっている点には注意を向けておいて良いでしょう。このことを一般には恣意的(しいてき)であるといいますが、分類基準のこうした恣意性のゆえに分類されたものも唯一絶対のものではないということになるわけです。ちなみに、今日の科学理論では、対象となるものの類似点と相違点は同じ数だけあげられることがわかっています(「みにくいアヒルの子の定理」)。つまり、違いや同じ点に注目しておこなう分類は、科学理論上は成り立たないというわけです。分類は、あくまでも研究者が目の前の対象を理解するための便宜上のものであることを理解しておきましょう。

