規定とは、物事を一定の形に定めること、と辞書には書かれています。これとよく似た言葉に定義というものがあります。定義とは、「概念の内容や用語の意味を正確に限定すること」(『日本国語大辞典』小学館)ということですが、この言葉には、学問的により“厳密な”というニュアンスが含まれてしまいます。しかしながら宗教を厳密に定義することは極めて難しく、宗教学者の数だけ宗教の定義があるといっても過言ではないのが現状です。そこで本書では、あえて定義ということばは使わず、より幅を持たせて規定という言葉を使用しておきます。
ところで、宗教を規定するならば、どのような表現で表すことができるのでしょうか。これは言い換えれば、宗教を短い言葉で言い表すならば、いったいどのように言えるのか、ということです。世の中で行われている宗教は、きわめて複雑なあり方を示していますから、宗教を規定しようとするならば、よほど宗教の本質を捕まえた表現とならなければなりません。ですから、宗教の規定を知ることは、逆に宗教という文化の核心を垣間見ることにつながると言えるでしょう。そこにこそみなさんが宗教の規定を学ぶ意義があるわけです。
この章では、宗教の規定についてのいくつかの事例を確認することを通して、宗教が持つ中心的な要素に対して大まかな理解を得ることを目指そうと思います。