⑷宗教学は宗教を科学的に学ぶ学問領域である。

前節でも述べたように宗教学的研究は、実際の宗教を観察して、それを体系的に理解しようとする分野ですが、その際、科学的であることが重要な要件となります。では科学的であるというのは、どういうことなのでしょうか。それは、誰にでも観察可能な対象を実証的に考える姿勢のことをいいます。ここで実証的というのは、事実にもとづいて考察し、自身の考えの正しいことを明らかにしていくことです。そしてその考察にあたっては、できるだけ先入観をもつことなく中立的に行うことが必要となります。
 このように事実に基づいて考察を加える科学の領域を経験科学と言いますが、これには大きく分けて二つがあります。ひとつは「自然科学」と呼ばれる分野でもう一つは「人文科学」です。これらは研究対象を何にするかで区別されます。すなわち自然科学の領域では、その対象は自然現象です。たとえば、天体の動きを探る天文学、生物の生態や体のつくりなどを考える生物学、地球の成り立ちや動きについて考える地球物理学などがそれにあたります。一方、人文科学は、文化現象をその研究対象とします。文化とは、人間の営みの結果としてあらわれた現象をいいます。大まかに言えば、人が手を加えて出来ている全ての物事です。我々の扱う宗教学はこの人文学の一分野に位置づけられます