.三猿について教えて下さい。
三猿とは、見猿・言猿・聞猿のことです。「みざる・いわざる・きかざる」って読みますね。皆さんも何処かで耳にされたことがあるのではないでしょうか。本来は、不見・不言・不聞の意味で「不」を「ざる」と読むことから、語呂合わせで「猿」となったものです。つまりある種の処世訓(世間で生きていくための技術)を言ったものというわけです。三猿の由来については、古くは伝教大師最澄に帰してきました。しかしながら今日では、この三猿は中国に由来することが明らかにされています。ところで、この三猿は、庚申堂(こうしんどう)の本尊の青面金剛(しょうめんこんごう)と共に描かれます。庚申信仰とは、庚申(かのえさる)の夜、人の身体の中にいる三尸(さんし)という虫が抜け出して、罪を天帝に報告するため、庚申の夜には寝ないで三尸が抜け出さないようにするという信仰で、このことを守庚申(しゅこうしん)とか庚申待(こうしんまち)などといいました。もとは中国の道教に由来する延命・長寿のお祀りでした。各地に庚申をまつる庚申堂が建立されますが、そこに三猿が描かれていたというのです。『都名所車(みゃこめいしょぐるま)』には「金蔵寺とて庚申の社あり」とありますが、これについて『山州名跡志(やましろめいせきし)』には「中ごろニ三猿堂ヲ造テヨリ已来、件ノ寺号を不呼シテ庚申堂、御猿堂ト称ス(なかごろに三猿堂をつくっていらい、その寺の本当の名前でよばず、庚申堂とか御猿堂と呼んでいる)」とあって、三猿をまつる堂が庚申堂と呼ばれていることがわかります。(参考図 静岡県鳳林寺蔵)
参考文献 飯田道夫『庚申信仰』(人文書院 1989)
