石川虚舟
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石川虚舟/俳句集
 
石川虚舟のオブジェ
 
 
 
 
雲雀より空にやすらふ峠哉
(笈の小文)
 
廓庵和尚 『十牛図』
「第七 忘牛存人」

 
「第八 人牛倶忘」

  (部分/天理図書館蔵)
 
 
ドイツ近代詩を研究する手塚富雄は、1954年にハイデガーを訪問する。
ハイデガーはまず、
「九鬼周造之墓」 の写真を示した後、
鈴木大拙の禅の考察は、広大な世界に開かれ、興味深いと述べる。
次いで、ドイツ語訳で読んだ芭蕉の俳句の中で、
非常に感銘を受けたという次の句が話題にされる。
Wer vermag es, stillend etwas ins Sein zu bringen? / Des Himmmels Tao.
その場で、日本語表記とローマ字表記が手塚に求められる。
 
ひばりより上にやすらふ峠かな
Hibari yori, ueni yasurahu, touge kana
 
ハイデガーはそのローマ字表記を黙読し、
そのような単純な表現の中に広大な世界を感じとることができる、
単純であることは無内容ではない、と感想を述べる。
       ⇒ 『 老子 』 第45章 (大弁は訥のごとし)
手塚レポートの英語訳では、その句は次のような表記である。
Higher than the lark, ah, the mountain pass! - quietly resting.
 
さらにハイデガーは、日本の「ことば」は「物」(Ding)を意味するのではと述べ、
Erscheinung (appearance) とWesen (essence)のそれぞれに対応する、
学術語ではない日本の慣用語は何かと、ハイデガーは問う。
手塚は、仏教用語に由来はするが、
「色」と「空」をそれぞれに対応する慣用語と考えると答える。
cf. Tezuka Tomio,'An Hour with Heidegger', in
Reinhard May; Heidegger's hidden sources, 1996 (First published 1989 in German), p.60-61.
 
因みに芭蕉のこの句は、『笈の小文』では中七「空にやすらふ」になる。
 
 ⇒ ハイデガーの秘密