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K.ASADA ARCHITECT & ASSOCIATES


2005.3.11-12
「日光金谷ホテル」 「いわむらかずお絵本の丘美術館」を
巡るツアーに参加しました。 

コーディネーターは稲山正弘氏(木質構造家)です。多くの建築家、そうそうたるメンバーが参加されておりました。流石、東京主催のツアーだと思いました。大阪からの参加は、私を含めたった3名でした。
■ いわむらかずお絵本の丘美術館+アトリエ
 
設計は野沢正光氏、構造設計を稲山氏が担当。設備設計は、私が以前東京で勤務していた頃にお世話になった科学応用冷暖研究所の高間氏です。

・いわむらかずお絵本の丘美術館
梁間方向は相欠き平面トラス
桁方向はT型ビーム式木造ラーメン構造
大工さんが作った模型は分解できる。
地元馬頭町の樹齢80年の杉材(いい杉材だった)を柱や横架材に用いた建築。

梁間方向は相欠き平面トラス(方杖トラス)、桁方向をT型ビーム式木造ラーメン構造とした建物。
美術館の中に木造架構の模型があり、それを用いて色々解説していただきました。

稲山氏らしい仕口、構造形式だと思いました。
・アトリエ棟
交差梁と合掌垂木によるトラス構造
アトリエの方形屋根の骨組
交差梁の間に角材を挟み込んでボルトで緊結。交差梁同士を直接緊結出来なかったとのこと。
交差梁と合掌垂木により、トラス構造を形成しています。
特にアトリエの方形屋根の架構は面白い。

X,Y方向の交差梁が空中で重なるのを避けるために卍組の手法を用いて、部屋内から見て左上がりの交差梁が常に内側に来るようにずらして配置しています。
但し、交差梁の中央の交差部が離れているとトラスが形成されないので、交差梁の間に角材を挟みこんでボルトで緊結していました。
稲山氏に角材を挟まずに交差梁同士を直接緊結できなかったのかお伺いしたところ、「そうしたかったが、絶対に組めない」と言われてしまいました。

この小屋架構は面白いが、強引に遊んでいるような印象を受けました。

いずれにせよ、このような木架構は、仕口がゼロタッチできちっと締まることで初めて釣り合いと剛性が取れる。「締りの良い仕事」が要求されます。
腕が良くて、理解力のある棟梁、大工さんがいて初めて出来る仕事だと実感しました。

P.S 
いわむらかずおさんの絵本は、3歳の息子の愛読書の一つ。
ほのぼのとした絵で、動物たちが主人公の絵本です。
日々の生活や日々の観察を絵本づくりに生かすという素晴らしいコンセプトのもとに、いわむらかずおさんはこの地で活躍されているそうです。
■ 日光金谷ホテル
 
「日光金谷ホテルに泊まれる」ということでこの見学ツアーに申し込んだようなものです。箱根の「冨士屋ホテル」と同様、近代和風建築の歴史あるホテルです
ホテルの耐震診断を依頼された稲山氏が、調査において非常にユニークな構造であることを発見し、今回のツアーに結び付いたそうです。

本館は明治26年、新館は明治34年、別館は昭和11年に建てられました。
新館 ボールルーム上階の床を支える
構造は吊構造である。
新館 壁は木摺り。
別館 屋根裏
別館 2寸角材の柱と幅2寸の梁の仕口
初日は、新館1階のボールルーム(スパン13.63m)上部の2階床を支える構造を見学しました。

ボールルーム上階は倉庫ですが、壁仕上げ及び一部は下地まで取り除かれていて、どのように床を支えているのかが良く分かりました。
スパン13mを支える床梁のせいは、通常1m以上になります。しかし、実際はそれほど大きいものではなく、せいぜい300弱ぐらいで、小屋組のトラスから間仕切壁の中で床を吊るというものでした。
そのために径32mmの棒鋼(吊ボルト)が用いられていました。時代的に、この鉄は錬鉄ではないだろうかという意見が聞かれました。

翌日は、朝9時からぞろぞろと別館や本館の屋根裏に入り、架構を確認しました。

別館の骨組は洋風でした。
特にこの別館は、2寸角材(60x60)を使用し、柱(壁交差部)4本、間柱は2本を組み合わせ、一般の梁にあたる部材を柱及び間柱の間に挟み込みボルトで締めていました。

壁は柱・間柱の両側に木摺りを張って、漆喰塗りで仕上げてありました。
壁の下地厚さは、柱が梁を挟む形なので、60+60+60=180。その両側に木摺りという厚みになります。
この木摺りがかなり厚みのある板で、ピッチも細かく張ってあるので、建築基準法の木摺りの壁倍率より、かなり耐力があるのではと思いました。
後日、この木摺り壁の耐力を調べるために試験をするそうです。

今回の耐震補強のための調査は、このホテルをこれからも大切に維持し広く利用してもらいたいというホテル側の思いからだそうです。
古い建築を壊し、新しい建物に建替えることは簡単ですが、やはり良い建築は残してみんながどんどん利用していくことが、絶対に必要だと思います。