絵合わせ玩具
絵合わせ玩具
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正六面体が二つから成り立つ写真の玩具、絵が一致すればその音が出る仕掛けになっている。新品の単三電池3本を入れ、
動作させてみたが何の反応も示さない。 振ってみるとカサカサ音がする。どうやら部品が外れているようだ。
さて、修理するには先ず分解しなければならない。しかし、その手がかりは全く無い。各面が見ての通り綺麗な絵で覆い被されているからだ。
プラスチックが露出している中央付近のエッジを眺めると、かすかに割れ目が見える。どうやら上下二つの箱が中央で張り合わされている構造のようだ。
思い切ってカッターナイフで中央に切れ目を入れる。4面夫々にナイフを入れ撓ませてみる。パリッと音がして僅かな隙間が発生した。想像通りの構造だった。
出来た隙間を皮切りに順次拡大して何とか二つに分解できた。そしてなかを見入るとワイヤーが一本外れている。カシメで接続されていたのが外れていた。
再カシメは不可能なので螺子を使って締め付け接続し修理完了と思いきや何の反応も示さない。中央の写真のようにプリント基板にICとトランジスタ・抵抗・
コンデンサーが使われている。動作を回復させるにはどうやら回路を調べる必要が有りそうだ。左下の回路図がこの品物の回路だ。漸くこれで動作が確認できる。
と思ったがまたもや落とし穴があった。トランジスタに表示されている型名、2種類が存在する。
NPNとPNPの違いがあるものの何となく悩ましい。原理原則から考えるとNPNと容易に想像でき目出度く回路は完成した。
ところが、回路から想像される動作が現実には発生しない。トランジスタの不良と考えるのがリーズナブルだった。
別のトランジスタに置き換えると目出度く動作する。ようやく修理完了だ。改めて不良のトランジスタチェックするも異常ではない。
念のため元にもどすと立派に動作するではないか。よくある半田付け不良に過ぎなかったのだ。
なにはともあれ目出度く修理完了した。使い捨て文化にに抵抗した一幕である。(06/04/03完了)
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学研の「かきかたあいうえお」
今回の修理品は左の写真に示した。ひらがなが刻まれたボタンが升目に配列され、どれかのボタンを押すと動作が開始する。
つづけて任意のボタンを押すと右上部のLCDディスプレーに書き方が表示され、同時に発音も聞ける教材である。
修理に持ち込まれた状態は「お」と「こ」のボタンが陥没しており、この列の音が出ない。
他のボタンは正常に動作する事からどうやら右下のボタンに激しく衝撃が加わり、内部が破損したようだ。
早速、分解に取り掛かる。ふんだんにビスが使われてはいるが、分解は簡単である。内部を見ると、予測の通りプリント基板が破損していた。
当然ながら基板のパターンも切断されているのでボタンを押しても動作しない。切断しているパターン数は7本だ。

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ボタンが陥没していた |
プリント基板が割れている |
金具で支えをする |
修復は切断したパターンを接続する事から始める。パターン面に細いリード線で半田付けする。半田の乗った部分がボタンの動きを阻害するのでその部分はボタンに
凹みをつける細かい作業だ。丹念な調整は必要でがあるが何とかまともな動作がするようになる。
最後は割れた基板をしっかり支える作業だ。周辺のネジを利用し写真のように2ヶ所で支えを施した。これで裏蓋を元のように締め付け修復完了。
時間はかかったが、面白みの無い修理なり。(06/04/04完)
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ラジカセ修復
12年前に製造されたラジカセである。これも激しい取り扱いを受け、修復困難と諦められた品物だが、何とか鳴るようにして見たくなるのはどうした訳か!。
左上に配置されたボリュームのつまみが陥没しグラグラしている。誰もが修理不能と諦めるであろうし、お金をかけてまで修復する価値を見出せないセットだ。
ところがこの年代までの製品は難しい部品が使用される事は少なく、修理はやり易い。早速、問題のボリュームを取り外してみる。見事に変形してはいるが、
調べる限りでは機能上の問題は見出せなかった。
丹念にボリュームの端子・ケースの変形を元に戻し再度セットに取り付け、衝撃で浮いたと思われるパターンをリード線でこれも丹念に補強し電源を入れてみる。
残念ながら全く音は出ない。幸いな事にインジケーター類は点灯する。どうやらオーディオ系の不良のようだ。
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衝撃で変形した可変抵抗器 |
電源回路のパターンに亀裂 |
接触不良のイヤホンジャック |
セットの回路図は持ち合わせていないので、通常は使われているICの仕様から類推するのだが、肝心のICが放熱板で覆われ型名がわからない。
残る手段は電源回路からのおいかけだ。
+Bラインを見つけ出し追掛ながらテスターでチェックすると電圧が途切れている。写真中央に見る如く、電界コンデンサーの半田付け箇所で亀裂が入っている。
どうやらここも衝撃の被害を蒙ったと思われる。パターンのレジストを剥がし、盛り半田し修復完了だ。
これでどうだと火を入れる。ちゃんと鳴り出してやれやれとおもったのだが、片チャンネルしか鳴っていない。
一般に故障するのは一箇所で複数箇所が同時に故障するのは滅多に無い。今回は修復の2ヶ所は外部衝撃が加わったためだから特殊ではないのだが、
珍しい事例に遭遇した事になる。
ボリューム以降の信号ラインをたどり、イヤホンジャックの接触不良にたどり着いた。代替品が無いのでイヤホンジャックの使用を諦め直接半田して修復完了させる。
問題のイヤホンジャック、プラグの挿入でスライドスイッチが動く構造だ。これの修復をもトライしたのだが摺動片が変形しあまりにも小さく修復不可能と諦めた次第。
想像だが、イヤホンジャックの不良は以前から発生しており、片チャンネルの動作で我慢していたのではなかろうか。そのうち、
今回の修理のメインとなった落下衝撃で致命的な故障となったとおもわれる。(06/04/12完)
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TEPRAの改造
ラベルライター「TEPRA]の改造レポートをお届けする。随分前から修理のため預かっていたのだが故障箇所の修理だけでは正常動作に戻らなかった。
どうやらソフトに問題が残っているようで初期化したいと思っていた。しかし、その方法が解からず、暫くは孫の玩具になっていたのだ。
漸く取扱い説明書が手に入り、それに従って初期化操作を実施し、目出度く正常動作に復帰した。通常であれば、これでおしまいとなるのだが、今回はそうは行かなかった。
何故か電源系への不信感が募り改造したくなったのだ。
改造テプラと専用外部電源
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修理の途中に何度も「電池弱」のアラートが出てきた。殆どが印刷動作時に発生する事からして、
印刷時に可成のピーク電流が流れるようだ。取扱説明書の注意書きに「電池は単三アルカリ電池以外は使用しないでください」とある。
マンガン電池は寿命が短く使って欲しくないらしい。しからば外部電源で動作するよう何故メーカーは企画しなかったのか・・・とつい憤りを覚えてしまう。
憤るだけでは普通の人間と変わらない。「シーラカンスよ!気に入らぬならば外部電源で動作するように改造すればいいではないか。」
との声が聞こえてきたのであります。
最近、3端子レギュレーターやスイッチング電源を色々調べた。それからすれば電源は何とかなりそうだ。
問題はテプラに外部電源端子を設けるスペースがあるかどうかである。最悪の場合はリード線で接続でも良いのだが・・・。
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テプラの内部 |
外部電源用端子 |
この種の仕事?の楽しみの一つは作戦を練るる時だ。作業完了までの筋書きをいくついか描き、想定外の事態が発生した時にはこの手でリカバリー・・・
と色々の場面を考えるのである。現実には筋書き通りに運ぶ事は殆ど無く、何がしかの想定外の出来事が起きる。その時、予め用意したリカバリー策が役立つことは稀で、 その場に最適な別の手段を見つけ出すのがなんとも楽しいし、有効な手段が次々に出てくるからこれも面白い。
今回も予定していた電源では十分目的が果たせず変更を何回か繰り返し完成した。
電源部の製作(改造)
このテプラ、単三6本で動作する。
外部電源で動作させるには9Vの直流電源が必要と言うことだ。ジャンク箱にはACアダプターがごろごろしている。その中から定格
「DC11V 350mA」を探し出し、これを改造する事にした。
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ACアダプターの内部 |
改造後の内部 |
ついでながらこのアダプターの定格は、「350mAの電流を流した時に出力11Vとなります」と言う事であって、無負荷出力は14.9Vが観測された。
負荷電流の小さい機器に接続すると過電圧で破壊する事さえあるので注意が必要だ。
ACアダプターの内部は写真の如くがらがらである。おまけに基板の空いたスペースは3端子レギュレーターを搭載するよう設計されている。
5V出力の3端子レギュレーターを使い、9.2Vの出力となるよう回路の工夫し、部品搭載して改造完了である。
(改造したACアダプターの回路は←をクリック、
出力アップの方法は 3端子レギュレータ電圧ブースト1←をクリック)
本体の改造
上に示した電源端子を何とかテプラ本体に取り付けるだけの事だが、一応改造と呼ぶ。先ずは場所探しである。
先に示したテプラ内部の写真を見ていただきたい。青色のカーターボタンの下にスペースがありそうだ。その部分を拡大したのが下の写真だ。
ここにコネクターを取り付ける事にする。
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見つけ出したスペース |
コネクターを取付 |
コネクターの幅に合わせて切り込みをいれ、丹念に削り込み端子を取り付ける。同様に蓋側にも切り込みを入れ、勘合を確認し、
再度ばらして追加配線を施し最後にコネクターをネジ止めし改造工作は完了。残るは動作確認だ。
先に改造した外部電源を接続し、電源をONにする。データを慣れない手つきで入力し、印刷ボタンを押すとジージー・・と動き出すが直ぐに停止してしまう。
良くある想定外の出来事だ。
念のため電池で動作させると異常は無い。 先に述べたようにこれを解決する過程が楽しいのだ。遅ればせながら、電圧を測定しつつ動作させてみる。
印刷動作の途中で極端に電圧降下が発生する。どうやら3端子レギュレーターの過電流保護回路が動作しているらしい。
使っているレギュレーターは1Aの電流が取り出せるICだ。それで容量不足とはとても思えない。当初、
レギュレーターの出力側に接続していた電解コンデンサーは100μであった。これを2200μに交換する。今度は動作するのだが、途中で「電池弱」の表示が出る。
想像以上のピーク電流が流れているようでその値は1A近辺と想像される。電源と本体を結ぶ接続ケーブルは長さが2mで直流抵抗は0.2Ω近辺である。
もし、1Aのピーク電流が流れるとすればケーブルだけで0.4Vもの電圧降下を生じるではないか!。思い切ってケーブルを半分の長さに切るつめる。
再度の動作テスト、目出度く正常動作を続ける。
電池はNI-CDで実験していた。そのためテプラ本体に加わる電圧は7.5V近辺である。アルカリ電池に換算すると83%に相当するからちょっと使うと更に電圧は下がる。
この近くの電圧は確かに「電池弱」と呼ぶにふさわしい。これらから考えると350mA出力のACアダプターは明らかに容量不足なのだ。しかし、印刷する時間は僅かである。それをクリヤーするだけの能力は持っているので完成したと判断し仕事(?)を終了させる。(06/04/18完)
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ポプコーンマシーン
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ポップコーンマシーン |
色んな商品が出回るようになっても自分が買うのは極めて稀だ。その分、商品知識も乏しいままなのはやむを得ない。しかし、修理することになると、
取扱い説明書以上の知識が吸収できる。更に、商品を企画・開発・設計した人達の思いの一部が想像できるだけに楽しい時間が持てる。
写真は「トウモロコシ」等の材料を中に入れ、スイッチをいれると数分でいわゆる「ポップコーン」が出来上がる品物だ。
ところがスイッチを入れても全く動作しないと修理依頼された。この種の製品修理は得意ではない。
修理用の部品入手がほとんど出来ないからだが修理が出来ない可能性が大きいと断った上で引き受けた。
さて修理の際、一番最初にやる事は叩いてみる事だ。医者が聴診器を使うのと全く同じ理屈である。叩いてみたが何の反応もない事からして重症と診断する。
続いて製品を分解する事になる。じっくり眺めると分解方法が解かってくる。中には化粧紙を貼り付けネジの部分を隠しているケースも有るがこの製品の場合、
ネジ止めを部分を何箇所か外せばよい事が解かった。
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特殊ネジとドライバー |
いよいよ分解に取りかかるが肝心のネジが緩まない。特殊なネジ頭のビスが使われているのだ。この製品、電気用品安全法の適用は
を貼り付けなければならない類である。
同法ではこのような事は要求されていないと思うのだが理由がわからない。それはさておき分解するには道具を作ることから始めなければならない。
写真は先端をネジ頭に合わせる加工を施したマイナスドライバーである。何とかとこの特殊ドライバーを作り分解が可能になった。
内部の分解を進め故障原因にたどり着いた。ヒーターのニクロム線が断線している。通常断線は接続部分で起こすものだが、今回の場合ニクロム線の中央が断線している。推測だが巻線ピッチにむらがあり、ピッチの混んだ部分が過熱したのであろう。
原因はわかったものの代替部品が手に入らない。メーカーに依頼すれば手に入るかもしれないが、恐らく新品の製品を購入するほどの費用が発生するであろう。世の中、昔ほど修理が行われなくなった原因がここあるのだ。残念ながら修理断念の瞬間である。
まともな修理は断念したものの、せめて一時的にでも動作させたいとニクロム線を引き出し捻り接続してみる。電源を入れると一応の動作はする。寿命の保証は出来ないものの、暫くは使えるであろう。依頼者に仮の修理しか出来なかったことをお断りし返品した。動作がどれくらい続くか気になるところだが・・・。(06/05/03完)
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中央部で断線したニクロム線 |
無理やり捻り接続した仮修理 |
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AM カードラジオ
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改造されたカードラジオ
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カードラジオの内部 |
写真は85×54×4.5mmのAMカードラジオだ。リチューム電池CR2025(3V)で動作する。消費電流が2.5mAありいつのまにか電池切れとなってしまう。そうなると電池の補充が億劫になりいつのまにかジャンク箱の肥やしとなっていた。おまけに専用のイヤホンも行方不明となってしまった。
散歩の友に復活させるべく、100円ショップのイヤホンと外付け電池で動作するよう改造をすることにした。これだけなら記事にすることもなかったのだが狙った改造実際に使ってみると音量が大きすぎる。このラジオは電源スイッチと音量切り替えが連動しており、音量は2段切り替えなのだ。この音量を下げる改造も同時に行ない目的を達成した。薄型ながら結構感度も高く、音質もそこそこでAM受信には申し分ない。
カードラジオの構造は樹脂ケースにプリント基板がビス止めされ、表裏に少し厚手のシートが接着されている。分解するにはシートを剥がす事から始めなければならない。
表側のシートと樹脂ケースの間にカッターナイフの刃を使って隙間を造り、それを順次拡大して剥がす事に成功した。基板のビスを外しケースと分離したのが左の写真である。
中央にバリコンがありその左側に金メッキを施したパターンが電源スイッチと音量切り替えのスイッチパターンである。摺動片は樹脂ケースの右側に組みつけられ二つが重なってスイッチを構成する。
使われているICは20Pinのフラットパッケージで表示されている型名は[A1015]である。この型名でICの仕様を検索するも探しあてる事が出来なかった。目的の音量調整にはパターンを追いかけ回路を明確にしなければならない。
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音量調整の回路 |
19番pinが改造対処箇所 |
カーボン抵抗に置換え |
基板は片面のため回路を追いかけるのは比較的容易に出来た。スイッチを起点に音量調整の回路を追いかけると右に示した回路となる。19番pinとマイナスラインとの間に抵抗を接続し電圧を変化させる考え方のようだ。確認のため47kをオープンとすると音量がゼロとなった。後は適当な音量となる抵抗値を探すだけだ。100kにすれば最適とわかり実作業に入る。中央の写真がオリジナル、右側が47kのチップ抵抗を取り外し100kのカーボン抵抗に置換えた様子である。この半田付け作業、腕に自信ありと豪語する息子にやってもらった。彼の自慢は.5mmピッチのIC交換までの作業ならOKとか!(06/06/12完了)
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KT-75型 TRラジオ
久し振りにTRラジオの修理をした。3台連続でやった内、型名KT-75型が強敵だったので掲載する。
強敵の理由は、どうやらこのラジオ以前に誰かが修理に挑戦したのだが直し切れなかっ様子である。結果からすると4箇所に欠陥があった。それだけに修理のやり甲斐
があり面白い経験が出来た。
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修理した3台の神戸工業製TRラジオ 右下がKT-75型 |
修理に苦労したこのラジオ、昭和36年に生産開始された非常に小型に作られたセットである(寸法:W=57,H=77,T=24.5mm)。電池は9VでW06P型となっているがお目にかかった事が無い種類だ。幸いにも006Pでも接続出来て異常なく動作するので修理はこれで行なえた。
さて修理作業の最初は電解コンデンサーの交換である。この時代の電解コンは100%容量抜けを起こしている。密集した実装の上、配線パターンが判りにくく苦労しながら無事交換を完了させる。その上で電池をつなぎ動作させてみたが、かろうじてホワイトノイズがでているだけである。良く眺めてみると バーアンテナからの2次巻線の一方が外れていた。もう一方はコンデンサーを介して周波数変換トランジスタのベースに接続されている。このような場合、誰しも接続すべき場所は共通ラインと考えるであろう。そのように半田付けし動作させたが症状は全く同じである。
かくなる上はオーソドックスに攻めるべしとSSG(標準信号発生器)を引っ張り出し455Khzの信号を加えて見る。レベルは低いが音が出た。IFステージはどうやら動作しているらしい。となれば周波数変換回路の故障が疑われる。このような場合、先ず疑うのがトランジスタである。交換して見たいのだが、使われているTRはドリフトタイプのゲルマニュウムトランジスタ 2SA112
である。ゲルマニュウムトランジスタの手持ちがあるはずも無く、シリコントランジスタへの置き換えを考えたのだが・・・。

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パターンから読取った回路図(コンバータ部)
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冷静に考えると周波数変換回路と言えども、コンバージョンゲインの殆どは周波数変換トランジスタのIF増幅度によっている。455khzのシグナルレベルがかなり低くても動作することからして、周波数変換トランジスタは立派に動作していると判断できる。然らば何処がおかしい?
今度はオッシロスコープを引っ張り出し、局発の観測を試みる。だがいっこうにそれらしき波形が観測できない。別のポータブルラジオで局発の受信を試みるがこれも検出できない。どうやら局発が止まっているのだ。原因追求には回路図が欲しい。類似のセットでも良いからとネットで探しても見つけられないので、パターンから回路を追いかける事にした。数時間をかけ作成したのが右に示した回路図だ。
これを眺めてみると発振回路を形成していない事がわかる。バーアンテナの外れていた2次側は共通ラインに接続したのだが回路図を見て間違いと漸く気付いた。 上の回路図でバーアンテナの2次巻線の一方Aは、発振トランスのタップBに接続することで発振回路を形成する。発振トランスのタップには確かにランドが設けられていた。Aのリードをここに半田付けする設計だったのだ。半田付けをやり直し電源をONにして正常な受信が可能になった。
ところがボリュームを最大まで回しても音量が上がらない。まだ故障箇所が残っている。ここでも原因追求には回路を把握する必要がある。先ほどと同じようにまた時間をかけ作成したオーディオ部の回路を左に示す。

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KT-75のオーディオ部回路図
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回路がわかると原因究明も楽になる。まず電流のチェックをする。その結果、2SB32の両方ともに流れる電流がいかにも少ない。どうやら初段のトランジスタが不良と考えられる。確証を得るため、ボリュームのセンターとドライバーの2SB32のベースをコンデンサーで接続すると音量が上がる(回路図中の点線で示した接続)。これは初段の2SB32が機能していない証拠である。
トランジスターを取り外しテスターで簡易にHfeを調べると極端に低下しているのが判った。
原因が判ったのは良いのだが代替のトランジスタが無い。そこで、シリコントランジスタのPNP型を探し出し代替使用を試みた。当然バイアスが狂うから補正をかけなければならない。カットアンドトライで56Kのバイアス抵抗に並列に100Kを接続し正常に動作することが確認できた。
ようやく修復完了したと筐体に組み付けたのは良いのだが、ショックを加えると「ガサガサ」と雑音が混じる。どこかで接触不良をおこしているのだ。その部位を見つけ出すのはこれまた根気が必要だ。基板に振動を加えると雑音が出ることからして半田付け不良と思えるのだが、部位を見つけるには部品一点一点をゆすって見るしかない。結果は検波ダイオードの半田付けであった。一見すると問題無さそうであるがリード線の表面の酸化が進行したと思われた。
「電解コンデンサーの容量抜け・アンテナのリード線はずれ・トランジスタのHfe低下・半田付けの酸化」と4つの不良箇所を順番に退治し、久しぶりに手を焼かせる修復であった。それにつけても回路図の有無で修復がどれだけ差が出るか改めて実感させられた。
修復が終わってから、この製品を製造した神戸工業発行の「神戸工業技報」に回路図が掲載されているのがわかった。それに基づきCADにて作成した回路図を最後に示して置く。(最初からこれがあればどれだけ楽だったか・・・)
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ケーブルテスター
息子が仕事に使うケーブルテスターの修理を頼まれた。取扱説明書等の資料は一切無く、現物だけが持ち込まれた。幸いなことに不具合内容は「LEDの輝度の極端な低下」だけだと言う。このテスター、8芯のフラットケーブルの導通チェックをするもので、9Vの電池006Pが使用されている。下の写真に見るように非常にシンプルな回路構成となっている。

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テスターと終端器の外観 |
テスターの内部基板 |
不具合内容からすると、LEDのドライブ回路が不良だとは容易に想像がつく。ところが使われているICは電源電圧が20Vまで使用可能なロジックIC「TC4017]と「TC4011」である。5V系ならば手持ちが有るのだが・・・。ネットで購入してもよいのだが時間と運賃が馬鹿にならない。そこでトランジスターで代替できないかと検討することにした。
そのためには回路を把握し、動作原理の理解が必要だ。両面基板が使われており回路をトレースするのはいささか面倒のようにも思えたがシンプルな構成が救いだ。
数時間をかけ作り上げた実体配線図を下に示す。
最初はこの回路で何故クロック動作がするのかが理解できなかった。
しかしTC4017の左上のLEDが自己点滅型であることがわかりようやく納得出来た。現役時代にはお目にかかることの無かったLEDで、便利なデバイスが考え出されたと感心せざるを得ない。
肝心の動作原理であるが、TC4017の出力Q0,Q1,Q2,Q3はテストケーブルを通ってTC4011(NAND)のINPUTにつながっている。ゲートの片側は+に接続されているので単にインバーターとして動作している事になる。即ち、TC4017のQ0、Q1,Q2,Q3の順次出力される電圧に同期してTC4011のそれぞれのゲートがONとなり、途中に接続されているLEDが点灯する仕掛けだ。(下図参照)
問題のLEDが暗い原因はTC4011のゲート出力X1,X2,X3,X4のON抵抗が高く、LEDに十分な電流が流れていない為と分かった。これだけ分かればトランジスタにて代替動作はさせられる。

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トランジスタの代替回路 |
NAND一個分を上図の回路で置き換え動作させて見たところLEDは見事に点灯した。一般的には不良部品を交換するのが修理の王道であるが、やむを得ない場合には代替手段を取る事も必要だ。それには十分動作原理を理解しなければならない。

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各ICの出力波形(機能図) |
機能を回復したケーブルテスター |
久しぶりに修理を手がけ、昔しとった杵柄が今なお健在なる事を立証し、ご隠居いささかいい気分であります。(H19.4.24)
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自動車/ポータブル兼用ラジオ
AR-365の修理
写真のラジオ、デザインに馴染みを感じないかもしれないがれっきとしたポータブルラジオである。昭和38年に神戸工業(現在の富士通テン)により製造された自動車用/ポータブル兼用の製品のため独特のデザインとなっている。
さて、この変わったラジオが修理に持ち込まれた。症状は「電源は入り、ノイズも出るが肝心の放送の受信が出来ない」と言うことなので、
早速自分でも確認して見る。受信帯の低い方から高いほうまで確かにノイズが出ており、しかもそのレベルが変わる。明らかにラジオとして機能しているのだが、
アンテナで捉えた電波信号が受信部に加わっていないと推定される。
修理をすることを楽しみとしている人間にとって、単純な修理作業は良しとしない。多少なりとも頭を悩ます程度の修理が好ましいのだが、
全てこちらの都合に合わせて持ち込まれる事を期待するのがどだい間違っているのだ。
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シャーシーに直接取り付けられていたアンテナ |
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絶縁ワッシャーで浮かせて取り付けし修理完了 |
早速ケースを取り外し点検にかかる。しかし、例によって回路図が有るわけでもなくプリント基板のレイアウト・部品配置がわかるわけでもない。
信号の流れから探し出さなければならないのだ。
ありがたい事に入社して2年目に製造された製品だから、基本回路は未だ頭に残っている。
選局にはバリコンでは無く3連のμ同調器(ミュードウチョウキ)が使われている。そのリード線を数本外してみればRF信号の流れが推定できるので実行してみる。結果は予測どおりに単純な不良(?)であった。と言うより明らかに素人が弄った為の副作用である。
左の写真の如く、アンテナポールの取り付け基部がシャーシーに直接ネジ止めされている。折角ポールアンテナに誘起された信号がアースされているのだから受信できるはずが無い。しかも自動車用として設計されているラジオだから、雑音に対する配慮がされており、途中の回路への信号が入り込むことはまずありえないのだ。
修理は簡単に終えられた。取り付け部に絶縁スペーサーをかませルだけの単純作業である。(左下の写真) 修復を終えたラジオの確認テストをしてみる。自動車用として作られているだけに感度は高い。しかもポールアンテナでの受信だから指向性を全く感じ無いのは中々好ましと感じる。スピーカの口径も大きく音もしっかりしている。サイズが大きいのは欠点かもしれないが、ドライブ先で自動車から取り出し一つのラジオを多目的に使おうとした狙いが良く解かる。
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ハンドルが飛び出して見栄えが悪い |
ところが、左の写真の如くハンドル(自動車から取り出す時に使用する)が飛び出しているのが気になる。ついでにこれも修理する事にした。
本来、このハンドルはぴったり中に収納されるはずであるが、何故か7−8mm飛び出している。前面アッシーを取り外し分解して構造を調べ原因を調べるとハンドルをロックする部品が磨耗している。
部品交換が出来ればこれにこした事は無いが入手は不可能だ。如何に磨耗部品を復元させるかが腕の見せ所となる。こうなってくると俄然、やる気が起きてくるから不思議だ。電気的な修理が余りにも単純で満足感を得られなかっただけになおの事である。
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磨耗したハンドルロック部品
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無理やり磨耗部を膨らませた部品 |
さてどうやって磨耗部分を膨らませるか? 幾つかの方法を考えたが単純で確実な方法は部品製作と同じとするのが良いだろうとの結論に到達。
恐々、ドライバーの先をたがねの替わりに使って、ハンマーでたたき出す。数回この作業を繰り返し寸法を出した。 その結果が下の写真である。
ぴったりハンドルが収納された。
かくして全ての作業が終了、延べにして半日の時間を費やせました。まずまずの出来映の修復にご満悦の隠居であります。(07/05/16記)
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