水やりと根腐れ病
watering
鉢土が乾かないとき
春になるとフクシアはどんどん成長します。1日1回の水やりでは足りなくなり、鉢底からも根が出て 「それ鉢増しだ」 となります。
鉢増しすると株はますます育ち、吸水量も多くなります。ところが …
ある日突如として葉の周囲が茶色くなっています (または葉がばらばらと落ちています)。
鉢を持ち上げると重いまま。用土が乾いていません。
症状は進み、何日か後にはすべての葉がなくなってしまいました。
株を抜いてみると、根腐れして健康な根がほとんどありません。
このパターンに心当たりはありませんか?
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水やりと突然の枯死との関係
管理人はこのパターンを何度も経験しています。
これに関連すると思われる記述が、イギリスフクシア協会発行の栽培書
ALL ABOUT FUCHSIAS にあります
1)。
Thielaviopsis (sudden death syndrome 突然枯死症候群) は、成長した株が突然に枯死する現象で、通常は高温期に発生する。このトラブルではストレスが常に重要な要因である。暑くて乾燥した気候の下では27℃を超えた状態や、株が水切れでしおれた状態で灌水しがちだが、これをすると根が急激に膨張して破裂し、ほどなく発病して短期間で枯死する。(訳文は管理人)
Thielaviopsis について原文には 「sudden death syndrome (突然死症候群)」 と記されていますが、調べてみると
「Thielaviopsis 属の菌」を指すようです。
Thielaviopsis、ティエラビオプシス、根腐れなどをキーワードに検索するとサイトがヒットします。詳細はそちらをご覧ください。
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すべてのフクシアが27℃超で水やりすると突然に枯死するわけではありません(私が長らく栽培している品種は大丈夫)。
逆に27℃未満でもマズイ品種があるかもしれません。根拠は特にありません。けれども本に書かれた数値よりも高温に耐えられる品種があるなら、逆にその数値でも耐えられない品種がある可能性も考えておいた方が良くないでしょうか?
さて、この 「突然枯死症候群」 の症状は、最初に書いた枯死の経過と似ています。
しかし疑問点もあります。
暖地と言えど、初夏の段階では水をやる朝の気温は27℃もありません。20℃未満です。この程度の気温でしかも非水切れ状態で灌水しても、一部の品種はあれよあれよという間に枯死します。
水やり時の気温や用土の湿り具合が適切でも、何かのメカニズムが働いて結局は上記と同じ結果になるのかもしれません …。
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用土との関係
とは言え適切な用土は過湿の防止につながります。
植物栽培は水切れよりも水のやり過ぎで失敗する方が多いとよく言われますが、暖地では夏にフクシアの吸水量がガクンと落ちるので、用土に注意しないと水をやり過ぎなくても過湿になるおそれがあります。これを防ぐコツの1つは、夏季にできるだけ水はけのよい用土を使うことです
(詳しくは
「用土」 を参照してください)。
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こういう品種はやめる
暖地では、いかに水やりと用土に工夫しても、最初に述べた突然の枯死に見舞われる品種があります。
このような品種を管理人は以後栽培しません。
「次回はうまく行くかもしれない」 と思いたいのが人情ですが、人間が精一杯努力してもすべての品種が折り合ってくれるわけではありませんので …。
暖地のかたから、初夏〜夏にこの症状と思われる株のご相談を受けた場合は廃棄をお勧めしています。
株元から複数の主幹が出ており、秋口にその1本が不調に陥った場合は、その主幹のみ枯死して他は助かることがあります。気候がフクシアにとって日々好ましい方向に向かうためと思われます。
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まずは葉水で
枯死 (根腐れ) の兆候と最初は区別しづらいのですが、フクシアは吸水と蒸散のバランスが一時的に崩れて葉がしおれることがあります。
このようなときは、葉水をたっぷりやって、より気温の低い場所に移動することで回復させられます。葉水だけで回復するときもあります。
鉢土が湿っているのに水不足と勘違いをして、水をやってはたいへんです。
株が溺れてしまいます。
拙バルコニーでこの現象がよく見られるのは、秋口の昼間です。
夏のダメージからまだ回復していない株に起きがちですが、葉水で対処していると気候が涼しくなるにつれてしおれる時間帯はなくなり、何事もなかったように成長します。
どうか慌てずに対処してください (「HOME」 -
「フクシアQ&A」 も参照してください)。
(2009年8月7日)
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参考(数字をクリックするとページ内のリンク先へジャンプします):
- 1) ALL ABOUT FUCHSIAS、The British Fuchsia Society (2000)、p.84
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