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イザ!時空間の旅へ(わっきん編)

  
1.海外子女教育・帰国子女教育

 在外教育施設(日本の教育課程に基づいての海外教育施設)は、1956年にバンコク日本人学校が設置されて以来、1960年代後半以降の経済のグローバル化に伴って急増し、(2017年現在)全世界に日本人学校は89校、補習授業校は201校の設置数となっている。 
 このことは、保護者の海外赴任に伴って帯同する子どもの教育ニーズに対応すべく、当該の家族はもちろんのこと、現地に社員を派遣する企業のニーズにも滞欧すべく関係者や関係諸団体と行政が粘り強い努力を積み重ねてきた到達点でもあると考える。
 しかしながら、当該の子どもと家族にとっての筆舌に尽くせないご苦労(あるいは取り返しのつかない犠牲)を経た上で設置に至ったことは、しばしば伝え聞くところである。
 さらに、グローバルなスケールで急激に変容する世界経済の中で、かつてと同様な事態が(形を変えて)繰り返される可能性が十分にあるのではないか。
 海外子女教育・帰国子女教育のより一層の充実が求められる所以である。
 ところが、自明のことであるが、子どもを帯同する家族の赴任国・赴任地や駐在期間、子どもの年齢や家族構成、子どもの資質・能力や家庭の教育方針、出国時の勤務地、帰国時の勤務地、等々、実に多様な子どもを取り巻く状況がある。
 このことが、海外子女教育・帰国子女教育においては、個別の教育相談が重視される所以である。
 この個別の教育相談を含めて、赴任前の家族向けの研修と情報提供、帰国後の外国語保持教室、(在外教育施設を含む)海外学校に関する情報収集と更新、(帰国子女受入れ校を含む)国内学校に関する情報収集と更新、等々の重要事業を粘り強く継続しつつ、日本における海外子女教育・帰国子女教育の中心を担ってきたのが「海外子女教育振興財団」である。
 小生も、海外子女教育振興財団の事業から多大の教授とご支援をいただきつつ、関西の某企業の教育相談員を5年余り勤務させていただいた。
 また、「海外子女教育専門相談員連絡協議会」や「関西(海外子女教育)連絡会」にも参加させていただいて、非常に多くのことを学ばせていただいた。
 さらに、「関西帰国生親の会 かけはし」「フレンズ 帰国生 母の会」の方々からも熱い願いとともに、当事者ならでは懇切なるご教授をいただいた。
 
 小生も微力ながら、関西連絡会等で用いた原稿をアレンジして、学ばせていただいたことの一端を公開させていただくことで、せめて、今後の海外子女教育・帰国子女教育の一助ともなればと、願うところである。

 「子どもを帯同しての海外赴任−留意事項−」
  

2.見えてくる内外教育の課題

 言うまでもないことだが、学齢期にある帯同の子どもは学校で2度の困難に直面する。親の赴任時の編入学と帰任時の編入学である。
 その際、友人や先生方との別離と新たな出会いにおけるリスクを別にして、学校教育においては、教育課程(教科・科目の体系)と授業スタイル(教育目標が絡んでくる)が基本的に同じなのか、根本的に異なるのかが大きなリスク要因となる(国内学校どうしの転校とは大きく違うはず)。
 この赴任時と帰任時の編入学という二重の困難(リスク)を回避すべく設置がすすめられてきたのが日本人学校であり、補習授業校であると考える。

 ということは、海外子女教育・帰国子女教育における最大課題は、内外の学校教育制度の大きな違いに起因するものではないか。
 この観点でまとめたのが、次のプレゼン原稿である。
 (併せて、日本の小・中・高の学校教育を特徴づけている、現行の「学習指導要領」の概要を紹介している。)

 「日米の《公教育》比較-国内の学校教育の現況は?」

 
 また、中高生(特に高校生)を帯同する場合には、さらに、大きな段差が待ち構えている。
 というのは、戦後の日本の学校教育は、基本的には占領軍の中心であった米国の公教育が雛型となったはずなのだが、
米国の公教育とは違って、中学校教育と高校教育との間に制度的にも大きな段差が生じてしまっているものと考える。
 例えば、小中学校の公教育の大部分は市町村立学校であって、高校の公教育は都道府県立学校が中心である。
 つまり、学校設置の団体が異なり、しばしば教職員の給与体系等までも微妙に異なっていて、中高の教員移動は極めて困難です。
 (東京都立の中等教育学校においては、教職員の給与体系は予め揃えられていたとお聞きしました。)
 さらに、教育法規でも高校「入学資格」「卒業資格」等を「学校教育法施行規則」で細かく規定するなど、「敷居」を高く設定してある。
 (今日の事実上の義務教育化した高校教育を想定せずに、戦前の旧制中学の伝統を残そうとしたのかもしれないと愚考するところだ。)
 
 そこで、次のプレゼン原稿が必要となる。

 「中高生の帯同、そのリスクと課題」
 
 (関連しての「資料@」「資料A」は、コチラ。)


 蛇足となるが、日本の学校教育は、(幼稚園)小学校・中学校・高等学校教育と「学習指導要領」を通じて、極めて体系だっており効率的な反面、
身体的な事情や家庭事情、あるいは所謂「荒れ」で途中の教育課程の修得が不十分となると、非常に「学び直し」がしにくい学校教育制度となっている。
(この観点では、海外子女教育・帰国子女教育における教育課題と、「全く」と言っていいほど「瓜二つ」であると考えている。)
 大阪府教育委員会では、この課題に果敢に立ち向かうべく(だと考えるのだが)、「エンパワメントスクール」の取組みを推進している。
(定年退職した身ながら応援しているところである。こうした困難に直面している生徒・保護者がおられたら、これらの高校をご紹介いただきたい!)


3.具体的な課題にどう向き合うか?

 海外子女教育・帰国子女教育についての最も貴重な情報は、取りも直さず、当該の子どもとご家族が直面して打開してきたご体験そのものであると考える。
 その次に、子どもとご家族に寄り添って、一緒に事態の打開に取り組んでこられた関係学校の先生方、そして、財団や企業の相談員や担当者だと考える。

 しかしながら、それらの貴重な体験とデータは、しばしばセンシティブな個人情報の塊であり、最大限の配慮と厳重な管理体制のもとに置かれるべきである。
 より一層普遍的に活用されるべき、最も貴重な情報が「闇」に埋もれがちとなってしまうという、この社会的に非常に残念な事態は、学校現場や福祉現場、そして教育相談に限らず、多くの相談活動の現場で起きていることではないか。

 でも、ふと考えるのだ。「個人情報」と関係の会社組織等の情報を慎重に外していくことができれば、最も貴重であるはずの体験(事例)とデータを普遍化していくができるのではないか、と。
 それが可能(つまり個人情報の保全が万全)となるならば、その「事例集」は、次の「目次案」のようなものとなるのではないか。

 (でも、夢のような話かもしれない・・)

 『こちら海外子女教育相談室』 (「目次案」のみ)



☆ある高校の国際交流の取組み(事例紹介)

 大阪府立高校には、所謂「帰国生枠」のある高校が10校ある。
 その中の大阪府立住吉高校に勤務して、実際に米国からの帰国生徒を担任させていただいたことが、自分の海外子女教育・帰国子女教育の原点である。
 生徒・保護者、そして同僚の先生方にも恵まれて、充実した教員生活を過ごさせていただいたと思っている。
 しかしながら、当該の帰国生徒にとっての学校生活はどうであったのかを想起すると、自分及び学校体制の不十分さに慙愧の念が沸いてきてならない。

 その大阪府立住吉高校は、10校の中でも最も早く「国際教養科」を設置し、現在は「国際科学高校」として専門高校となっている。
 国際交流活動にも活発に取り組んできた伝統があって、「ユネスコ・スクール」にも加盟し、その充実ぶりは、大阪府立高校で随一ではないかと思う。 
 (大阪府立住吉高校「国際/ユネスコ」参照)

 その一角に、外務省の依頼で、オランダからの訪問団(日本占領下のインドネシアでの戦争被害者団体でもある)を受け入れての交流記録が残されている。
 外務省「日蘭架け橋計画」による国際交流(1998年と1999年と2年続けて)だが、一教諭でありながら「挨拶スピーチ」の役割となってしまった。 

 切羽詰まって徹夜で書き上げたのが、下記の2つのスピーチ原稿である。(光栄なことに、今も学校ホームページに残してくれている。))

 「歓迎スピーチ(1998/10/15)」「歓迎スピーチ『不思議の国ニッポンの人権思想』(1999/10/29)」

   

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