日本食文化の醤油を知る -筆名:村岡 祥次-



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第9章 醤油の賞味期限




第10章「醤油の品質表示」に進む

 第9章 醤油の賞味期限


醤油の賞味期限・保存表示

食べ物には賞味期限か消費期限が表示されますが、しょう油は保存期間が長い食べ物のなので、賞味期限になります。
醤油の賞味期限は、未開封の場合と開封後で大きく異なります。一般的に、パッケージやボトルに表記されている賞味期限は未開封の場合の期限です。醤油は古くから保存調味料として使われてきただけあり、未開封時であれば長期保存が可能です。

醤油のラベル表示(例)

ラベルには、しょうゆの種類や製造方式はもちろん、原材料名、内容量、賞味期限、保存法、製造者など、商品を選ぶ際に目安となる情報が記載されています。

◇醤油が劣化する原因
工場で出来立ての醤油(こいくちしょうゆ)は、茶色や赤みがかった褐色をしています。しかし、時間の経過とともに少しずつ色が濃くなりはじめ、だんだん色が黒くなってきます。色が黒くなる原因としては「空気」「温度」「光」が関わっており、特に空気は醤油の色を濃くしてしまう大きな原因となっています。
空気は酸素を含んでいるため、醤油が酸素と反応して酸化してしまうのが原因で、開封後は急激に風味が低下する性質を持っています。これ以外に高い温度で保管していたり、直射日光が当たる場所に保管することも醤油の鮮度を低下させてしまう原因の1つになっています。


■醤油の賞味期限と保存法
未開封の醤油はペットボトルの容器に入っているものは1年半、一升瓶などガラス裂のビンに入ったものでは2年位が賞味期限として定められています。
醤油は古くから保存用の調味料として親しまれてきただけあって、賞味期限が過ぎてもすぐに処分しなければならないわけではありません。ですが、保存状態によって、どの程度まで使えるかは異なってきます。なるべく涼しい場所や直射日光の当たらない場所で保管しておきましょう。
◇開栓前の賞味期限
開栓前の賞味期限 保存方法 濃口醤油・溜醤油・再仕込み醤油 淡口醤油 白醤油
プラスチック・ボトル 直射日光を避け冷暗所に保存 18ヶ月 12ヶ月 -
ガラスびん 24ヶ月 18ヶ月 8ヶ月

醤油はどの種類のものでも時間経過とともに色が濃くなります。酸素と触れる事による酸化やメイラード反応によって、淡い色から黒く濃い色に変化をします。当然、白醤油や淡口醤油も時間が経つほどに色が濃くなりますので、賞味期限が短く設定されているのです。
開封してしまった醤油の賞味期限は常温保存なのか、冷蔵保存なのか、といった様々な要因により大きく異なります。そのため、一概に「〇日以内」と述べることはできません。開封した醤油は劣化が進みやすいですので、可能であれば1ヶ月以内を目安に使い切るようにしましょう。

◇開封前の注意
ガラス瓶は空気を通さないものが多い反面、ペットボトルはわずかながら空気を通してしまう性質があるため、未開封で賞味期限以内のものであっても少しずつ酸化してしまいます。ペットボトルのものはできるだけ早く使うことが大切で、賞味期限がまだまだ先だと思って大量に買い置きしないようにしましょう。
保管方法も大切で、醤油は日の当たらない温度の低い場所に置くようにしましょう。また、保管場所は時間帯によって温度が激しく変化する環境は避けましょう。できれば家庭で保存する場合には、冷蔵庫にしまうのが最適です。


◇開栓後の保存のめやす
開栓後の保存のめやす 濃口醤油 淡口醤油 白醤油
プラスチック・ボトル 室温
1ヶ月
室温
1ヶ月
室温
1ヶ月
ガラスびん

一般的に、醤油は容器や種類にかかわらず、開封後は冷蔵保存が推奨されています。醤油のおいしさを保つための保存方法としては、冷蔵庫での保存が一番おすすめです。温度差が激しいと風味の低下や品質の劣化が進んでしまうため、一定の温度が保てる場所を選びましょう。

開栓後 賞味期間
5℃で保存
(冷蔵庫に入れた方が良い)
1ヶ月
(風味が落ちてしまう為)
  • 醤油は、時間がたつとともに鮮度が落ち風味が損なわれますが、その殺菌効果により腐ることはありません
  • 醤油をある程度の時間、保存をしているとまれに表面に白いカビのようなものが発生することがあります。しかし、ほとんどの場合これはカビではなく、実は醤油の中の成分である酵母菌の一種(産膜酵母)で、基本的には身体に入っても害はありません。布やペーパータオルなどでで濾す(こす)などして白い部分を取り除けば、醤油は問題なく使用できます。



◇開封後の注意
一般的なペットボトルやガラス瓶に入った醤油は、開栓前は常温で保存可能ですが開栓後は冷蔵庫で保存しましょう。市販の醤油は開封後1か月以内に使い切ることが推奨されています。
開封後は一気に酸化が進むため、できるだけ早めに使い切ってしまうことが大切です。理想は開封後1~2ヵ月をめどに使い切るようにしましょう。酸化を早めてしまう環境とは高温、多湿、そして直射日光です。また、開封後の保管場所は流し台やレンジ台の戸棚などに入れずに、冷蔵庫に入れておくほうが温度や光の影響を少なくすることができます。

◇賞味期限が切れた醤油
風味が劣化する程度であれば健康面で害はありません。醤油は開封後、酸化により風味は劣化していきます。ですが、16%程度の塩分が含まれているため雑菌から守られていることもあり、高温多湿など悪条件で保管していない限り賞味期限が切れても使えるといいます。開封後の醤油でも適切に保管されていれば色が濃くなり風味は変わっても、その程度の劣化であれば健康面で害はないと言われています。


■醤油は腐るのか? - 品質の劣化 -
醤油は塩分濃度が高いので基本的には腐りません。醤油の塩分濃度は、他の細菌やカビが繁殖するには非常に厳しい環境と言えます。正しい保存方法を守って賞味期限以内に使い切れば、醤油は腐らないといえます。
醤油は古くから長期保存のできる調味料として知られています。醤油には殺菌効果があり、基本的に腐ってしまうことはありません。醤油が腐ったと感じるのは、空気中の酸素と触れて「酸化」して黒く劣化した醤油のことです。黒く変色してしまった醤油でもお腹をこわすことはありません。
仮に白いカビのようなものが浮いていた状態でも、それは「産膜酵母」と言って無害のものなので口に入れても大丈夫です。それでも、保存状態が非常に悪い場合は、醤油と言えどもごくまれに腐ることもあります。

保存環境が極端に悪いと醤油の色はどんどんと濃くなってしまい、醤油ならではの香ばしい香りも損なわれてしまいます。醤油が黒ずむのは、アミノ酸と糖分が化学反応(酸化)を起こしてできるメラノイジンという化合物が空気と接触して酸化褐色して増加するためで、腐ったり有害物質に変化しているわけではありません。
醤油は常温でも冷蔵でも保存できますが、醤油をおいしくいただくためには高温・多湿、そして日光が当たる場所は厳禁です。 常温の場合は冷暗所に、夏場は冷蔵保存するのがよいでしょう。そして、開封後は、空気に触れて醤油の酸化が進み品質が落ちますので、常温保存でも冷蔵保存でも1か月以内を目安に使い切ることが良いでしょう。

醤油は塩分が高いので傷みにくい調味料です。しかし、醤油が悪くなった時の醤油の劣化は、味・香り・色・外観ではっきりとした変化が見られます。保存期間があまりにも長すぎたり、またその際の保存状況が悪かったりなどすると傷んでしまうこともあります。このような状態になってしまうと使わない方がよいでしょう。

  1. 味の変化:風味が劣化して酸っぱくなる。
  2. 香りの変化:酸化した臭い(酸っぱい臭い)がする。
  3. 色の変化:黒ずんで透明感がなくなってくる。結果、味や風味が落ちる。
  4. 外観の変化:分離した油分が浮かんでくる。粘度が高くなりとろみが出る。
このように、醤油らしい特有の風味が感じられなくなった場合は、賞味期限が過ぎている、過ぎていないに関わらず使わないようにしましょう。


■醤油は腐るのか?。No.2 - 賞味期限を過ぎた醤油の試食 -

賞味期限の過ぎた醤油を味見してみました。(賞味期限が "4年半以上" 経過した醤油です)
1.醤油の種類と製造方式・・・濃口醤油(混合)、混合方式(生醤油とアミノ酸液を混合して商品としたもの)
2.醤油のラベル表示・・・名称:こいくちしょうゆ(混合)、原材料名:アミノ酸液、脱脂加工大豆、小麦、食塩、調味料、酸味料、保存料等
3.醤油の容器・・・ペットボトル
4.醤油の保存場所・・・冷暗所・常温(キッチン流し台)
5.醤油の試食
 ・色・・・濃黒色(墨汁のような感じ)
 ・外観・・・水のようにサラリとした粘りがない液体になっている。固形物や油分等は見当たらない均一な黒い液体。
 ・香り・・・ほぼ無臭で醤油の香りが全くない。また、刺激臭もない。
 ・味・・・ほぼ無味で、醤油が持っている“塩味”や”甘味”が全く無くなっている。酸味は感じられない。
 ・試食・・・冷奴豆腐にかけてみました。豆腐にかけた醤油は黒色の液体状で醤油らしさは無い。かけ醤油の香りも味も感じられずに豆腐の味だけを感じた。(水の様に刺激味がない不可思議な味の食感。豆腐を半分ほど食したが、幸いにも腹痛や舌への違和感など体に害はありませんでした。
注意:醤油の賞味期限が大幅に過ぎているものは食しないでください。上の体験試食は何らかの危険が伴うことも考えられますので、決して真似をしないでください。



醤油の保存方法

■醤油の保存方法
開栓前は冷暗所 開栓後は冷蔵庫1カ月を目安に使い切る。 しょうゆは、腐敗しにくいが、時間の経過とともに色が濃くなり、風味もおちてしまう。そのため、直射日光を避け、できるだけ涼しいところに保存する。空気に触れることで酸化が進み、品質が落ちてしまうので、開栓後はきちんと栓をして冷蔵庫で保存し1ヶ月を目安に使い切る』

醤油は基本的に開栓後も常温で保管して大丈夫ですが、防腐剤(保存料)を使っていない醤油は、一度栓を開けると、表面に白いカビ(産膜酵母菌)が発生することがあります。このカビは有害なものではありませんが、風味が落ちてしまいます。
醤油は時間がたつとともに色が濃くなり風味も落ちてきます。(醤油の褐色現象)そのため、保存においては直射日光を避け、なるべく涼しいところに置くなど注意が必要です。開栓前は基本的に長期保存しても酸敗・腐敗しにくいものですが、本来のおいしさを味わうためにも規定の賞味期限内に食べきったほうがよいでしょう。



また、開栓後は空気に触れることで酸化が進むため、きちんと栓をし、冷暗所に保存する必要があります。
これはカビを防ぐことにもなるので、家庭で保存する場合には、できれば冷蔵庫にしまうのが最適です。冷蔵庫に保管してある容器から、使いきるぶんだけ小型の容器に移し替えて使用することも、品質の保持にはよい方法。このように保存法に気をつけた上で、一ヵ月くらいで使い切るのが理想的です。


■醤油の褐変現象(酸化)とは?
醤油の色が黒ずんでくる褐変現象はメイラード反応と呼ばれるもので、醤油中の糖分とアミノ酸が化学反応をおこしてできたメラノイジン物質によるものです。色が悪くなってるだけで無害で十分食べられます。

醤油は長くおいても悪くなることはありませんが、褐変現象が起きてくれば香りも落ち、醤油の本当のおいしさが失われてきます。褐変現象は、開封後に醤油が空気にふれたり、紫外線(日光)に当てたり、熱を加えたりするといっそう早まります。
そのため、栓をあけたら「冷暗所」へ置くのが上手な保存法です。醤油のおいしさを長持ちさせるには、栓を開けたら冷蔵庫に入れるのが一番です。醤油の色・味・香りがより長持ちします。


写真:ヤマサ醤油株式会社(しょうゆの酸化より)


■賞味期限と消費期限との違い
加工食品には、期限表示をすることになっています。安全においしく食べられる期限を判断する目安になります。
期限表示には2種類あり、消費期限と賞味期限の2つがあります。すべての加工食品には、製品の特性に応じて、消費期限又は賞味期限のどちらかを表示しなければなりません(一部の製品を除きます)。
賞味期限 定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をい う。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。

賞味期限は簡単に説明すると「おいしく食べられる(飲むことができる)期間」です。
消費期限 定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日をいう。

消費期限は「安全に食べられる期間」なります。(基本は5日以内です)




賞味期限とは「容器包装が開かれていない製品が、表示方法によって保存された場合に、その食味及び品質特徴を十分に保持しうると製造業者が認める期間」と定義されています。
つまり、メーカーが独自に決めても良いのですが、醤油業界では官能検査のベテランが、醤油の種類別・販売する容器別に、未開栓の状態で室温(20度)で保存し、その品質保持期間を決定しています。


賞味期限の設定

■賞味期限の設定
賞味期限の設定方法は、製品の品質特性に大きく左右されますが、次のような手順で決めている例が多いようです。
  1. 保存試験の実施製品の保存、流通温度で、製造直後の試料を次の検査回数を配慮して保管します。保存期間は、予想される賞味期限の約1.5倍程度といわれています。
  2. 抜き取り検査の実施
    想定される賞味期限までに一定間隔で(ドレッシングの例を参照)保存した製品を抜き取り(3~5検体が一般)、検査します。検査は官能検査(色、香り、外観等)、理化学検査(酸化、過酸化物価等)、細菌検査があります。食品の特性にあわせて選択する必要があります。
  3. 検査結果の評価
    官能検査で異常が発見されたり、理化学検査で基準以上の値となった時点を賞味期限限界とし、賞味期限限界値を決めます。
  4. 賞味期限の設定
    賞味期限限界値に安全率(70%をとる場合もあります)を掛けて、賞味期限を設定します。

■しょうゆ-日本醤油協会資料
  1. 醤油の特性と品質変化の要因醤油は、本来、高濃度の塩分を含むものであるため、常温流通でも十分保存できる食品である。賞味期限内では品質特性のうち、食塩分、全窒素分、可溶性固形分等は変化しないが、製造後の品質は温度の変化により、色、味、香りが経時的に変化する。変化の早さは色が最も早く、色度に顕著に現れる。

2.期限設定の検査方法
①色度(標準色度計で測定)
  • こいくちしょうゆ  7ランク下がった時点
  • うすくちしょうゆ  13ランク下がった時点
  • しろしょうゆ     8ランク下がった時点を目安とし
②保存試験の官能評価(3点採点法)において、2点を賞味期限限界とする。
  • 1点 : 新鮮さを失っていないもの
  • 2点 : やや新鮮さを失っているもの
  • 3点 : 新鮮さがまったく無いもの
3.醤油の種類別の賞味期限の設定
上記2の考え方を踏まえて、摂取可能な期限より更に十分な安全率を考えた標準的な期間を下表のとおりとした。
包装形態 賞味期限までの期間
濃口醤油 淡口醤油 白醤油
プラスチックボトル 18カ月 12カ月
ガラスびん 24カ月 18カ月 8カ月
24カ月 18カ月 8カ月

  • 保存方法:表示された期限は表示方法に従って保存されることが前提であるので品質に影響を与える条件は必ず記載し、一括表示の枠内に表示することを原則とし、枠外に表示する場合は記載場所を明記して賞味期限と近接して記載すること。
  • 文例:(1)直射日光を避け常温で保存すること。(2)直射日光を避けて保存すること。(3)(1)、(2)の短縮形
  • たまりしょうゆ、さいしこみしょうゆはこいくちしょうゆに準ずる。
  • 実際の賞味期限は、使用原材料、製造方法又は容器包装等の特性に応じて製造業者等が適正に定める。特に、缶、小袋詰め等の特殊容器については十分配慮すること。


参考資料(しょうゆ情報センター(日本醤油協会)「しょうゆの日付表示に関するガイドライン」、独立行政法人 農林水産消費技術センター、発掘!あるある大事典/#121、財団法人食品産業センター




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