最近、日本のテレビでIKKOさんが、「韓国式マッサージ」なるものによく触れていますよね。
ただ、ワタクシ的には、「韓国式マッサージって何だ?」と思ってしまいます。韓国には中国のような在来のマッサージ術はないというのが、私の知るところ。実際に彼(彼女?)が言っているものも、欧米などでもよくあるオイル・マッサージ(韓国では「アロマ・マッサージ」)や、いわゆる按摩のような経絡を指圧するマッサージ(同じく「スポーツ・マッサージ」)のことに思えてしまいます。これらは、確かに韓国でも、少なくとも20年前から随所で行われていました。ふむ。
ただ、私はつい最近になるまで韓国でマッサージに行ったことがありませんでした。韓国で男性がマッサージに行くと言うと、わずか数年前までエッチなマッサージを受けに行くことを意味していましたし、当局の取り締まりが厳しくなった今でも、そういうお店はたくさんあります。お勤め人の男性たちは、接待や会社の飲み会の後などに、そういったマッサージに連れ立って行くような習慣があります/ありました。そういうエッチなマッサージのイメージが先行してしまったり、エッチなお店と健全なお店との区別がつかなかったりして、韓国でマッサージ店に入る気になれなかったのです。
私がマッサージに行きはじめたのは、2000年代後半。この頃に韓国の都市部では、「中国伝統按摩」という謳い文句を掲げたショップが急激に増殖しました。こうしたお店は、わざわざ「男女兼用」とか、「退廃はお断り」などと書き添えているところも多く、以前のエッチなマッサージ店とは一線を画していることをアピールしているので、入りやすいと思ったからでした。ちなみに、この時期は、中国の朝鮮族が韓国で働くことが大幅に緩和された時期で、かつ外国人労働者の就労枠が増えて中国人全体が韓国に出稼ぎをはじめた時期にもあたります。おそらく、近年に韓国で急速に増えているのは、「韓国式」なのではなく、中国でいう「中医按摩」(ただし、医師資格をもつ人がやっていることは、むしろ稀)なのです。
さて、最近ちょっとお疲れな私。今夜は、宿舎の近くの、行きつけのマッサージ店へ行ってきました。韓国出身の旦那さんが、朝鮮族出身の奥さんに思いっきり尻に敷かれ、ヒーコラ言いながら、2人で24時間営業しているお店です。
扉を開けてドア・チャイムが鳴るなり、奥の方から「アンタ、お客さんよーっ!!」と奥さんの叫び声。間髪いれず、旦那さんのスリッパの音が響きます。パタパタパタ!! 「ああ、いらっしゃいませ。ゼー、ゼー。また日本に行ってらしたんですか? ゼー、ゼー」。ちなみに、この旦那さん、小柄で、痩せていて、青白い。「いつものやつで、ゼー、ゼー、いいですか?」。見るからに、虚弱そう。店の奥からは、奥さんが雇用人のマッサージ師たちと楽しくオシャベリに興じている声が聞こえます。旦那さん、かわいそう……。この瞬間に、私はいつも、ゆったりリラックスしに来た自分が申し訳なくなってしまいます。
気をとり直して、お金を払い、Tシャツと短パンに着替えて出てくると、旦那さんが足浴とドリンクの準備をしておいてくれます。ここで私がいつも頼むのは、「足浴 --> スポーツ・マッサージ --> アロマ・マッサージ --> 足裏マッサージ」というフル・コース。100〜110分で、お得意様価格60,000ウォン(約4,500円)。
足浴ゾーンに足を浸けながら、旦那さんと韓国語で日常会話をしていると、マッサージ師さん(8割が女性)が来て、足を拭いてくれ、半個室に誘導してくれます。なまりの強い朝鮮族のこともあれば、漢族のこともあり、場合によっては、ここから先は中国語会話の世界。
ベッドにうつ伏せになって、スポーツ・マッサージがスタートします。ギューギュー押され、モミモミほぐされていると、だんだん夢心地に。ちょっと押しただけでバキバキ鳴る私の背中は、いつも「こってますね」と言われます。やがてTシャツを脱ぎ、アロマ・マッサージへ。アロマ・オイルを背中や手足に塗られ、今度は血液やリンパ液の代謝を促すマッサージです。それが終わると、温かいタオルを何重にも乗せてもらい、温浴みたいになりながら、足裏マッサージ。この足裏マッサージは、まったく痛くありません。むしろ、アロマ・マッサージの延長線と言ったところで、やはり代謝を促進する感じです。仰向けに向き直り、仕上げのストレッチをしたり、場合によっては腹部マッサージもサービスしてくれたりして、はい、終了。
うーん、やはり普通のマッサージだと思う私でした。はて、IKKOさんが言う韓国式マッサージって、本当に何なんでしょうか? 冒頭の疑問に返って、ふと考えてみました。あ、そっか。こうやってコースでやるのって、中国でも日本でも体験したことないな。たしかに、コースで受けると、全身かなりいい感じにほぐれます。もしかすると、コースになっているっていうのが、彼(彼女?)(もういいって!)をして「韓国式」と言わしめるのかもしれません。