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ぷち関西弁講座

 

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★ 第31話〜第40話

第47話 関西弁考

大変久しぶりの関西弁講座。今回は、ネット上の記事で面白いものを見つけたので、それを素材に書いてみたいと思います。まずは、元記事。

【戯言戯画】亀田史郎氏 考えさせられた関西弁の威力

テレビをみていて、関西弁について改めて考えさせられた。所属事務所から契約解除を突きつけられたボクシングの亀田父、史郎氏の「独占インタビュー」だ。とてもインタビューと呼べる代物ではなかったけれども。
−−今回の問題について、家族では何か話されましたか
「なんで、あんたに家族のこといわれなあかんの。あんたが、わしの家族に何かしてくれんの。わしもあんたの家族に興味ないし」
−−(セコンド資格の停止処分を科された)内藤戦について
「すんだことなんでふりかえらなあかんね、過去のことごちゃごちゃ言うて、あんた男らしないな」
しゃべりたくないなら、取材に応じなかったらいいのに…と不快感を抱いた方も多かったと思う。ただ、発言内容を吟味すると、そんなにむちゃくちゃなことを言っているわけではない。試しに標準語にしてみると…
「どうして私の家族のことをあなたに説明する必要がありますか? 私はあなたの家族に興味はありませんし」
「過去のことは振り返りたくありません。男らしさについて考えたことは?」
俗に言う関西弁という言葉の威力が、ここにあるように思う。本人の意図はともかく、どうも乱暴感、投げやり感を感じないわけにはいかない。関西で生まれ育ち、去年から初の東京勤務になった記者にとって、自分の言葉が周囲にどう受け止められているか、大いに参考になった(井上雅雄)。(産経新聞5月30日配信記事より引用)

ネタ元は、最近、めっきりと露出が少なくなってきた例のボクシング兄弟の父親。元々柄が悪いことが売りだったと思いますが、久しぶりの登場でもそうだった模様です。ただ、今回のテーマは、その父親のことではなくて、この記者の書いている関西弁についての考えです。

この記者は関西弁について、「どうも乱暴感、投げやり感を感じないわけにはいかない」と書いていますが、明らかに話し手が乱暴だからそういう感じを受けるだけだと管理人には思えます。そして、そもそもこの記者の標準語への訳し方が間違っているため、関西弁がことさら粗雑な言葉だというニュアンスを与えているのだと思います。一つずつ見ていきましょう。

<例1>

亀田父 「なんで、あんたに家族のこといわれなあかんの。あんたが、わしの家族に何かしてくれんの。わしもあんたの家族に興味ないし」

記者訳 「どうして私の家族のことをあなたに説明する必要がありますか? 私はあなたの家族に興味はありませんし」

少し意味が違う部分もありますが(「言われる」という受け身を「説明する」という訳にするのは無理があると思います)、確かに、この二つを並べると上は乱暴で、下は丁寧です。この訳が完全に対応しているならば、関西弁は乱暴に聞こえるという論は正しそうに思えます。しかし、下が次のような標準語(厳密には、関東で一般的に使われるような表現)になっていたらどうでしょう?

「どうして、おたくに(自分の)家族のことを言われなけりゃ、ダメなんだよ。(話したら、)おたくが俺の家族に何か(有利なことを)してくれるのか?俺もおたくの家族に興味ないから(いちいちそんなこと聞くなよ)」

この記者の訳が、なぜおかしいかというと、元の関西弁には使われていない丁寧語が使われているからです。また、「あんた」は決して「あなた」ではありません。一応、「おたく」という訳にしてみましたが、ニュアンス的には「おまえ」に近いぐらいの表現です(女性が恋人に言う場合の「あんた」は、またニュアンスが違いますが)。

では、逆に、元の亀田父の発言を丁寧な関西弁にして書いてみます。

「どうして、そちらさんに家族のこといわれなあきしませんにゃろ?(いうたら、)そちらさんがうちらの家族に何かしてくれはりますんか?うちらもそちらさんのご家族には興味は持ってませんし(聞かんといておくれやす)」

同じ関西弁でも、かなりニュアンスが違って聞こえると思いますが、いかがでしょうか?

では、次の例に行きます。

<例2>

亀田父 「すんだことなんでふりかえらなあかんね、過去のことごちゃごちゃ言うて、あんた男らしないな」

記者訳 「過去のことは振り返りたくありません。男らしさについて考えたことは?」

…なんだか、そもそもの意味すら違ってる気がしますが(「男らしないな」が、なぜ、「男らしさについて考えたことは?」に変わるのか理解できません)、まぁ、おいておきましょう。とりあえず、亀田父の発言をそのままのニュアンスで標準語(厳密には、関東で一般的に使われるような表現)に直してみます。

「過ぎたことを、どうして振りかえなけりゃダメなんだよ、過去のことをごちゃごちゃと言って、おたく男らしくないな」

後半部は、ほとんど関西弁でも標準語でも変わらないですね。関西弁のインパクトを残すために、この記者はわざと標準語の方を全然違う訳にしたのでしょうか?そうだとすると、かなりあざとい行為ですね。

では、これも丁寧な関西弁に直してみます。

「過ぎたことを、どうして振り返らなあきしまへんにゃろ?(もう、よろしおっしゃろ?)昔のことをあれこれ言わはって、そちらさん男らしくおまへんで」

これなら、同じ関西弁でも、きつく感じないと思うんですが、他府県の方が聞くとどうでしょうね。

では、最後におまけで、亀田父の関西弁をさらに乱暴にした関西弁も書いておきたいと思います。彼にしてはテレビなので抑えた表現だったのかはわかりませんが、関西弁一般が怖い表現かどうかは別として、怖さを表現したいなら、確かに関西弁は便利な言葉だと思います。

「なんで、おのれにわしらの家族のこと、ぐたぐだぬかされなあかんねんっ。(それともなんや、おー?)おのれに言うたら、わしらの家族になんかえーことしてくれるとでも言うんか、おー?わしらはおのれの家族なんかに興味ないんじゃっ(だから、そっちも持つなボケっ)!!」

「すんだことをなんで、わしらが一々振り返らなあかんねん、おー?過去のこと、ごちゃごちゃごちゃごちゃ、いつまでも言いくさりよって、おのれら、男らしいないんじゃっ!!」

2008/05/30

第46話 行けへん

久しぶりの関西弁講座。今回は、少し毛色が変わって、関西弁どうしなのに意味が違ってきてしまうという表現です。

タイトルに書いた「行けへん」という表現は、京都では「行くことができない」という、可能動詞の否定という意味になります。ようは、「行けない」のない≠ェ、関西弁での否定助動詞へん≠ノ変わっただけですね。

ところが、これを大阪方面の人に言うと、違った意味でとられてしまうことがあります。たとえば、遊びに誘われたところ、用事があって行けないときに、

「今日は、行けへん」と答えると、「なんや、気ぃ悪いなぁ」と、不愉快に思われたりします。

なぜなら、その人にとって、「行けへん」は「行かへん」と同じ意味であり、「行けない」ではなく、「(自分の意志で)行かない」という意味にとられてしまうからです。

では、その人が「行けない」の意味を表すときにどう言うかというと、「行かれへん」と答えます。これは、「行く」の可能動詞ではなく、「行く」に可能の助動詞る≠ニ否定の助動詞へん≠つけた形になります。

このように、可能動詞の否定形については、「行けへん」以外にも誤解を招く場合があるので、使う方は気をつけて、また、使われた側も前後の文脈から注意して判断する方がいいと思います。

2005/01/15

第45話 けったい

今回の言葉は、まずは、「けったい」。意味は、「奇妙」とか「不思議」といった意味です。「けったいな」という形で、「奇妙な」や「不思議な」といった、形容動詞にもなります。

語源は、手元の辞書で見た限りでは、「希代:きたい・きだい(世にもまれなという意味)」から来ているようだとのことですが、実際にはよくわかりません。

そして、強引ですが、けった≠ツながりということで、「けったくそ悪い」についても少し。これは、語感のとおり、かなりガラの悪い言葉です。意味としては、「むかついて、気分が悪い」といった状況で使います。類義語に「胸くそ悪い」というのもあります。

おそらく、「くそったれ」や、「くそガキ」などの強調の「くそ」から来ていると思うのですが、やはり汚い表現ですので、あまり使われない方がいいと思います。

使い方としては、例えば、道端に変わった姿の鯛が落ちているのを日常目にしますが、そういった鯛を足で引っかけてしまって、気分の悪い思いをすることがよくありますよね。そんなときに、

「けったいな鯛を蹴ってけったくそ悪い」

<標準語訳>

「奇妙な鯛を蹴ってしまって、気分が悪い」

などといった表現をすることになります。

では、今回はこんなところで。

2004/09/14

第44話 ねき、さいぜん

相変わらず久しぶりの更新の関西弁講座。まずは、「ねき」から。

これは、うどんの薬味にしたり、鍋物で炊いたりすると美味しい野菜のことではなく、「近く」とか、「そば」といった意味です。

例えば、日常生活でよく使われる例では、

「マネキンのねきにいる凶暴なたぬきのねきに毒を吐く招き猫を死ぬ気で置く」

などといった形で使います。

「さいぜん」は、こういった空間的な近さではなく、時間的な近さを表します。つまり、「さきほど」、「(つい)さっき」といった意味です。「最善」の意味はありません。

語源は「最前」で、「最も(近い)前の(出来事)」という意味から来ています。これは、どちらかというと古い言葉で、若い人はあまり使わず、年配の方の使う言葉のように思います。

これは、

「さいぜん、再選を願って賽銭に三千円入れてきたとこや」

といった感じで使います。

では、今回はこんなところで。なお、当関西弁講座の例文はフィクションであり、実在する凶暴なたぬきや毒を吐く猫とは一切関係がありません。あらかじめご了承ください。

2004/06/19

第43話 べった

久しぶりの関西弁講座。「べった」というのは、「最下位」の意味です。標準語のニュアンスで言うと、「ビリ」に近いでしょうか。

これには、色々な変化系≠ェあって、他にも、「べべ」、「べったこ」などという形があり、さらに強調のど≠ェつく、「どべ」という言い方もあります。

なお、少しニュアンスが違いますが、「けつ」や「どんけつ」といった言葉を最下位の意味で使うことがあります。ただ、これは最下位というより最後尾というニュアンスで、マラソンなどの競走などではこれがそのまま最下位にイコールになるということになります。

ですので、この言葉は、後ろに着いていくなどといった意味で使うことも多いです(車で、けつについて走ってこい、など)。なお、当然分かるかとは思いますが、あまり上品な言葉ではないので、基本的には使われない方がよいかと思います。

ちなみにべべ≠ノついては、「着物」という意味もあります。こちらの方が、全国的には有名な関西弁かもしれませんね。こちらについては、別に否定的なニュアンスはありません。

上品そうなおばあさんなんかが、「まぁ、ええべべ着はってぇ」と誉め言葉で使って、全く違和感がありません。

ただ、着物のべべの方は、年配の方以外はあまり使わず、最近ではなくなりつつある方言なのも事実だとは思います。

2004/04/04

第42話 ぎっこんばったん

この間初めて知ったので、ちょっと小ネタに。

みなさんは、シーソーをこぐときの音をなんと言うでしょうか?「ぎっこんばったん?」それとも、「ぎったんばっこん?」

私は今までずっとぎっこんばったん≠セと思っていたのですが、どうやらこれは関西弁で、標準語ではぎったんばっこん≠ニいうそうです。

どちらにしてもよく似た表現なので、おそらく同じ擬音から来ていると思うのですが、東西でこのように微妙にずれるのが面白いなぁと思います。

ちなみに、音の語源つながりで「チャリンコ(自転車のこと)」についても書こうと思ったのですが、ネットで色々と情報を調べてみると、必ずしも、「チャリンチャリーン」というベルの音から来ているわけでもないとの情報が(韓国語が語源説というのが見受けられます)。

ただ、個人的には、音から来ている方が可愛い気がするので(笑)、ベルの音説を採ってみたいですね。

それにしても、主婦が買い物に行くのに乗る自転車を「ママチャリ」というのは、実に素晴らしい造語だと個人的には思います。よく、日本語の乱れなどと言われますが、このように素晴らしい造語までも乱れと言われるのならば、あまりに狭量というものではないでしょうか?

2003/11/03

第41話 京のお魚

京のお魚といっても、管理人(まんぼう)のことでは、ありません。京都でよく食べられるお魚のお話です。

京都は、北部の方は日本海に面しているのですが、朝廷があり、そのまま中心都市となっていった市街地(現京都市内)は日本海からも、瀬戸内海からも遠く離れた内陸部にあり、新鮮な海の魚はなかなか手に入りませんでした。

そこで、陸に揚げられても生命力が強く、京都に運ばれるまで生き続けている「ハモ」に、日本海でとれて、塩で締めて日持ちするようにした「塩鯖(さば)」と「ぐじ」が、京都で珍重される魚となりました。

ハモは、小骨が多いことで有名な魚で、骨切りと呼ばれる処理をしないと、骨が口の中に刺さって、まともに食べることができません。骨切りとは、ハモの身に1ミリ単位での細かな切り目を入れて骨を切り、骨が刺さらないように処理をすることです。これはかなりの技術がいるようで、日本料理人の腕の見せ所です。なんでこんなに苦労してまで、と思われるかも知れませんが、食べてみるとその苦労に値する味だということがわかるかと思います。味が濃厚で、脂ものってるのに、意外なほど後味が爽やかで、実に美味しい魚です。

骨切りをしたハモを熱湯にくぐらせ、花びらのように身が開いたところで、冷水で締め、梅肉に和えて食べるハモの落とし≠ニいう食べ方が一般的です。他にも、甘辛いタレで香ばしく焼き上げたハモを酢飯の上にのせたハモ寿司や、お吸い物や土瓶蒸しの具に使われたりします。特に、祇園祭には、欠かせない魚となっています。

ハモの落としの画像

塩鯖は、通称鯖街道≠ニ呼ばれる街道が、福井の若狭湾から京都市内にまで通っているほど、京都に馴染み深い魚で、鯖寿司≠フ材料として使われます。

鯖寿司は、大阪にもバッテラ≠ニ呼ばれるものがあるのですが、京都の鯖寿司と大阪のバッテラは少し違って、京都の鯖寿司は肉厚の鯖の身を使うのに対し、バッテラは、薄く切った鯖に白く薄い昆布をのせて、型に入れて作ります。

鯖の味を楽しむには、当然肉厚の京都風鯖寿司がいいのですが、気軽につまむなら、バッテラも美味しいです。きつねうどんに、バッテラを2,3切れつまめば、お腹も一杯、舌も満足の関西風お昼ご飯が、リーズナブルな価格で楽しめます。

ちなみに、塩鯖をお酢で締めたもの(ご飯はない)を生寿司(きずし)≠ニ京都では呼ぶのですが、これは関西弁なのでしょうか?ネットで調べても、今ひとつよくわかりませんでした。

最後に、ぐじ=Bこれは、関西弁(京都弁)で、標準語では「甘鯛」といいます。その名の通り、甘い身で、塩焼きにしたものを食べると、しっとりとした身に、ほどよい甘さと塩味が口いっぱいに広がります。

2003/09/27