MCP解説ページ

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▲ BOEING747−400 Mode Control Panel(MCP)



FD(フライト・ディレクター)・スイッチ

【PS1操作】マウス:ポインターをFDスイッチ上に持っていき、左or右クリック
(PS1では、MCP左側、つまり機長席側のF/Dスイッチのみ機能する)

クロスバー
タイプのFD
Vバー
タイプのFD

FDはフライト・ディレクターの略で、現在エンゲージされているAFDSのロールモード、ピッチモードに従って、どのような機体姿勢を取ればいいのかを算出し、パイロットに教えてくれるものである。ロール方向の指示をするFDをロールコマンドバー、ピッチ方向の指示をするFDをピッチコマンドバーと言う(一般的なクロスバータイプのFDの場合。ヒゲのような形をしたVバータイプのFDでは、ロールコマンドとピッチコマンドが一つのシンボルとして表わされる)。FDはA/P(自動操縦)とは別物であり、マニュアル・コントロール(手動操縦)の時にも使用する。実際のフライトにおいては、ノンプレシジョン・アプローチ(非精密進入:ILSアプローチ以外の進入)の最終降下部分やタッチアンドゴーなどの訓練以外でFDをオフにして飛ぶ事はほとんどない。それだけ便利な機能なのである。FDはA/Pとは別物ではあるが、AFDS(オートパイロット・フライト・ディレクター・システム)として互いに統合されており、FDとA/Pは同一のモードで飛行するよう設計されている。簡単に言えば、マニュアル・コントロールにおいてFDをオンにしている時は、AFDSはパイロットが意図した飛行モードに沿うようFDにてパイロットに取るべき機体姿勢を指示する。自動操縦を使用している時は、A/PはFDの指示に従って自動的に機体姿勢をコントロールする、このときパイロットはFDにより自動操縦が正常に作動しているかどうかをモニターする事が出来る(但し一部のエアラインにおいては、L CMDをエンゲージしている時は機長席側のFDスイッチがオンになっていても機長席側のFDが消え、R CMDをエンゲージしている時は副操縦士席側のFDスイッチがオンになっていても副操縦士席側のFDが消えるというオプションを採用している所もある)。


さて、それではFDスイッチの説明に入ろう。ON GND(地上)ではA/PとFDがオフの場合、FDスイッチをオンにすると、AFDSのロールモードとピッチモードがTO/GA(トガ:Takeoff&GoAround)モードでアームされる。IN FLT(飛行中)ではA/PとFDがオフの場合、FDスイッチをオンにすると、@バンク(傾き)角が5°以内のときはピッチモードはV/Sが、ロールモードはHDG HOLDがエンゲージされ、Aバンク角が6°以上のときはピッチモードはV/Sが、ロールモードはATTがエンゲージされる(ちなみにこのようにIN FLTにおいてFDとA/Pが共にオフの場合、FDスイッチをオンにせずA/PをエンゲージしてもAFDSは同様のモードがエンゲージされる)。

エンゲージ
アーム
AFDSモードにはエンゲージとアームの2種類ある。エンゲージはオンと同じ意味
で、そのモードが現在作動している状況を指す。アームはスタンバイと同じ意味で、
今は作動していないが条件が整ったところで自動的にエンゲージされる。アーム
のときはPFDのFMA(フライト・モード・アナウンシメント)に白色で、エンゲージの
ときは緑色でモード名が表示される仕組みになっている(FMAの詳細はここをクリ
ック,PFDの詳細はここをクリック)。

L CMD
R CMD
自動操縦は3系統ある。自動着陸時以外はその内の1つの系統しかエンゲージ出
来ないが、3系統ある内の左側の自動操縦系統をL CMD、真ん中の系統をC CMD、
右側の系統をR CMDと呼んで区別している。ちなみにCMDはコマンドの略である。
B767などではCMDの他にCWS:コントロール・ホイール・ステアリングという自動操縦のモード
もあったが、747-400や777、新型の767ではこのモードは廃止されている。

ATT ATTはロールモードの一種で、アティチュード・モードの事。モードがエンゲージ
された瞬間のロール姿勢を維持するようFDのロール・コマンド・バーに指示する。
このATTモードは特殊なモードで、MCPにスイッチはない。ATTモードがエンゲー
ジするのは、FDおよびA/Pをオフにした完全なハンドフライを行なっている時、バン
ク角5度以上でFDもしくはA/Pのいずれかまたは両方をエンゲージした時のみ。

ON

@MCP左側のF/Dスイッチをオンにすると左側のPFDに、右側のF/Dスイッチをオンにすると右側のPFDにFDコマンドバーがマゼンタ色で表示され、上記のロールモードおよびピッチモードがアームもしくはエンゲージされる(*PS1シミュレーターのコクピットは機長席側を模している為、左側のF/Dスイッチのみオンにする事が出来る)。
AF/Dスイッチをオンにしていても、オートランドを実行中接地直前にAFDSのロールモードとしてROLLOUTモードがエンゲージすると、自動的にFDがPFDから消える。自動操縦をディスエンゲージすると再度FDが表示されるようになる(*PS1.3ではこの機能は再現されていないが、アップグレード・バージョンのPS1.3aでは再現されている)。

OFF

@FDコマンド・バーの表示が消える。
AA/Pがディスエンゲージ(解除)されていれば、ロールモードおよびピッチモードはディスエンゲージ(解除)される。但しA/Pがエンゲージしている場合、FDスイッチをオフにしてもロールモードおよびピッチモードはディスエンゲージしない。
B以下のいずれかの状態であれば、TO/GAスイッチをプッシュすると、FDスイッチがオフでもFDコマンドバーがPFDに表示される。このときAFDSはゴーアラウンドモードに入る。
 
  ・フラップが下がっている
  ・グライドスロープをキャプチャーしている
  ・ウインドシアが検知される


オートスロットル(A/T)アームスイッチ

【PS1操作】マウス:ポインターをA/Tアームスイッチ上に持っていき、左or右クリック

オートスロットル(自動推力制御装置)のマスタースイッチで、ARMにするとA/Tがアームもしくはエンゲージする。OFFにするとA/Tはアームもしくはエンゲージ出来なくなる。

ARM


オートスロットルがアームする。以下の状態の時、A/TアームスイッチをARM位置にするとA/Tがエンゲージする。

@A/TアームスイッチをOFFにしておりピッチモードとしてVNAV(ブイナブ)もしくはFLCH(フライトレベルチェンジ)またはTO/GA(トガ)をエンゲージしている時、A/TアームスイッチをARMにするとA/Tがエンゲージし、スロットル・コントロールが自動的に行なわれる。
AA/TアームスイッチをOFFにしておりピッチモードとしてV/S(バーチカルスピード)もしくはALT(アルト)またはG/S(ジーエス又はグライドスロープ)をエンゲージしている時、A/TアームスイッチをARMにするとA/Tがエンゲージし、スロットル・コントロールが自動的に行なわれる。
BA/TアームスイッチをARMにしているがパイロットがA/Tディスコネクトスイッチ(オートスロットルを解除するスイッチ)をプッシュしてA/Tをディスコネクトしている時、ピッチモードとしてVNAVもしくはFLCHをエンゲージしておれば、A/Tアームスイッチを一旦ARMからOFFにして再度ARMにする事によりA/Tがエンゲージし、スロットル・コントロールが自動的に行なわれる。

但し飛行中に2エンジン以上がアウト(エンジンが停止する事)すると自動的にA/Tはディスコネクトし、A/Tのエンゲージが不可能となる。1エンジンのみアウトの場合は、継続してA/Tの使用が可能である。

OFF

@A/Tをエンゲージしている時、A/Tがディスコネクトする。A/Tのエンゲージが不可能となる。
AA/Tがディスエンゲージ(エンゲージしていない状態⇔エンゲージ)している時、A/Tのエンゲージが不可能となる。


スラストスイッチ

【PS1操作】マウス:ポインターをTHRスイッチ上に持っていき、左or右クリック

A/T関連のスイッチの一つで、状況によりA/Tモードもしくはスラストリファレンスモード(離陸出力や上昇出力、巡航出力、着陸復航出力などのモード)が変化する。但し通常の運航においてこのスイッチを使用する事は滅多にない。

プッシュ

【インテグラルライトバー点灯】  *インテグラルライトバー = スイッチに内蔵されている横長のライト

A/TモードがTHR REF(スラストリファルンス)モードに変わり、エンジン出力が現在使用しているスラストリファレンスモードのスラストリミット(当該リファレンスモードにおいて使用可能な推力の限界値)にセットされる。但しピッチモードとしてVNAVもしくはFLCHまたはTO/GAモードを使用している時、もしくは離陸後400FTに到達するまでは、THRスイッチをプッシュしても作動しない(インヒビットされる)。    *インヒビット=抑止,禁止という意味を持つ。コクピット・オペレーションにおいては、機能しない、という意味合いでこの言葉がよく使われる。


【インテグラルライトバー点灯せず】

@離陸上昇中 離陸出力にセットされている時、事前にCDUのTHRUST LIMページにおいてプリセットされた上昇出力に変わる。但しこの時A/Tのモードは変わらず、スラストリファレンスモードのみが変わる。
A飛行中にいずれかのエンジンがアウトになった場合、A/Tモードは変わらずスラストリファレンスモードが自動的にCON(MCT:マキシマム・コンティニュアス・スラスト/最大連続出力)に変わる。自動的に切り換わらなかった場合、THRスイッチをプッシュする事によりCONにする事が出来る。

*THRスイッチをプッシュしたあとインテグラルライトバーが点かない時、スラストリファレンスモードが変わったのかそれとも操作自体がインヒビットされたのかを見極めなければいけない。ライトが点いていない時は、プライマリーEICASに表示されるスラストリファレンスモードをチェックして、スラストリファレンスモードが変わったのかどうかを確認して判断する。



スピードスイッチ

【PS1操作】マウス:ポインターをSPDスイッチ上に持っていき、左or右クリック


A/T関連のスイッチの一つで、A/TモードがSPDモードとなる。

プッシュ

 【インテグラルライトバー点灯】

A/TモードがSPD(スピード)モードでエンゲージし、IAS/MACH(アイエーエス・マック)ウインドウにセットした速度を維持するよう自動的にスラストがコントロールされる。もしIAS/MACH(アイエーエス・マック)ウインドウに最低速度以下の速度もしくは最高速度以上の速度(これらの数値は機体重量や気温、大気圧により変わる)をセットしている時、オートスロットルは飛行可能速度域で飛行するようスラストをコントロールする(つまりA/TモードがSPDモードの時は原則的に失速したり速度超過したりする事はない)。ピッチモードとしてVNAVもしくはFLCHまたはTO/GAをエンゲージしている時、あるいは離陸後400FTに到達する迄は、SPDスイッチをプッシュしてもSPDモードはエンゲージされない(インヒビットされる)。

*参考*
@FLCHを使用して上昇/降下中、ALTウインドウにセットされた高度をキャプチャー(捕捉)すると、A/TアームスイッチをARMにしておればA/TはSPDモードが自動的にエンゲージし、SPDスイッチ内蔵のインテグラルライトバーが点灯する。
AVNAV,FLCH,V/Sモードにより上昇/降下中、ALT HOLDスイッチをプッシュしてALTモードをエンゲージすると、A/TアームスイッチをARMにしておればA/TはSPDモードが自動的にエンゲージし、SPDスイッチ内蔵のインテグラルライトバーが点灯する。
BV/Sをエンゲージした時、もしくはAPP(アプローチ)スイッチをプッシュしておりG/SをキャプチャーしてG/Sモードとなった時、A/TアームスイッチをARMにしておればA/TはSPDモードが自動的にエンゲージし、SPDスイッチ内蔵のインテグラルライトバーが点灯する。

IAS Indicated Airspeed 指示対気速度。ピトー管が受ける動圧を速度に変換したもので、厳密に言うと
ピトー管の静圧系統の誤差を修正していない速度。これに対しIASにピトー静圧
系統の誤差を修正した速度をCAS(Calibrate Airspeed:較正対気速度)と呼ぶ
が、現代の旅客機ではDADC(Digital Air Data Computer)により補正したもの
をIASとして使用している為、IAS=CASと考えて良い。

MACH Mach Number マッハ速度。TAS(真対気速度)を当該高度における音速で割ったもの。

TAS True AirSpeed 真対気速度。大気に対する飛行機の速度。



IAS/MACHウインドウ

MCP SPDの時、IAS/MACHウインドウがアクティブになり、IAS/MACHセレクターによりIAS/MACHウインドウにターゲットスピード(目標速度)をセットする事が出来る。但しFMC SPDの時はFMCによるスピードコントロールが行なわれる為、IAS/MACHウインドウがブランクとなり、IAS/MACHセレクターによるマニュアル・スピードコントロールは不可能となる(但し後述のSPD INTV:スピード・インターベンションによりマニュアル・スピードコントロールが可能となる)。

MCP SPD MCPのIAS/MACHセレクターによりセレクトした速度。つまりFMCによる速度管理が行なわれて
いない状態である。具体的に言うと、VNAVをエンゲージしていない時、MCP SPDとなる。MCP
SPDの時、パイロットはIAS/MACHセレクターによりターゲットスピードをセレクトしなければなら
ない。

FMC SPD FMCが算出したターゲットスピード。つまりFMCによる速度管理が行なわれている状態である。
具体的に言うと、VNAVをエンゲージしている時、FMC SPDとなる。FMC SPDの時、IAS/MACH
ウインドウはブランクとなるが、パイロットはPFDのスピードテープ上方に表示されるコマンドスピ
ードを確認する事によりFMCのターゲットスピード(FMC SPD)を確認する事が出来る(ターゲッ
トスピードはCDUのVNAVページLSK2Lにも表示される)。
VNAVをエンゲージしている時はFMC SPDが基本ではあるが、管制による指示などで一時的に
速度を変更しなければならない時、後述のSPD INTVにより一時的にMCP SPDに変更する事も
ある。


IAS/MACHウインドウに表示される速度はIASかMACHで、IAS/MACHウインドウ左下のIAS/MACHセレクトスイッチによりIASかMACHをセレクトする事が出来るし、一定条件でIAS/MACHが自動的に切り換わるようにもなっている(下記参照)。
IAS/MACHウインドウは、MCP SPDにおいてA/Tを使用しないマニュアル・スラストコントロール(手動による推力制御)の際にもIAS/MACHウインドウにターゲットスピードをセットするという事である。何故かと言うと、IAS/MACHウインドウにセットした速度もしくはFMC SPDは、ターゲットスピードとしてPFDのスピードテープ上にコマンド・スピードバグとして目印が表示されるからである。つまりマニュアル・スラストコントロールにおいても、PFDに表示される現在の速度とコマンド・スピードバグとの位置関係により現在の速度がターゲットスピードよりも速いのか遅いのかを判断する事が出来るし、ターゲットスピードを容易に維持出来るというメリットもあるのだ。

@地上において電源が供給された時、デフォルトバリュー(初期の数値)として200(ノット)が表示される。
A選択可能範囲はIASで100〜399ノット、MACHで0.40〜0.95の間である。
Bセレクトした速度は、PFDのスピードテープ上方にコマンドスピードとしてマゼンタ色で表示される(この表示はFMC SPDの時も表示される)。
C上昇中マックスピードがMACH0.84に達すると、IAS/MACHウインドウの表示がIASからMACHへと自動的に切り換わる。また降下中IASが310ノット以下になると、IAS/MACHウインドウの表示がMACHからIASへと自動的に切り換わる。

IAS/MACHセレクトスイッチ

【PS1操作】マウス:ポインターをセレクトスイッチ上に持っていき、左or右クリック

プッシュ

現在の速度がMACH0.40以上の時、セレクトスイッチをプッシュする事によりIAS/MACHウインドウの速度表示がIASとMACHで交互に切り換わる。

IAS/MACHセレクター

【PS1操作】マウス:
@ポインターをセレクター上に持っていき左or右クリックすると、セレクターがプッシュされる(SPD INTVの時に使用)。VNAVを使用時、IAS/MACHウインドウをアクティブ/インアクティブにする事が出来る。
Aポインターをセレクターの周囲に持っていき左or右クリックすると、セレクターがローテート(左右に捻る事)する(IAS/MACHウインドウに表示される速度を変更する時に使用)。この時左クリックするとIAS/MACHウインドウに表示される速度が減少し、右クリックすると増加する)。

ローテート(左右に捻る)

MCP SPDの時、IAS/MACHウインドウにターゲットスピードをセットする事が出来る。但しFMC SPDの時はIAS/MACHウインドウ自体がブランクとなる為、セットする事が出来ない。

プッシュ

VNAVを使用時、IAS/MACHウインドウはブランクとなるが、IAS/MACHセレクターをプッシュする事によりウインドウがアクティブになり、ウインドウにFMC SPDが表示される。この状態がスピード・インターベンション(SPD INTV:速度の干渉,FMCの管理する速度にパイロットが干渉する、という意味)であり、この時点で一時的にFMC SPDからMCP SPDに変わり、IAS/MACHセレクターによりVNAVのままパイロットの希望する速度をセットする事が出来る。SPD INTVが終了したのちは再度セレクターをプッシュすると、IAS/MACHウインドウがブランクになり、FMC SPDに戻る。

《SPD INTV》

SPD INTVはVNAVでフライト中に、管制から一時的に速度を指定された時や、アプローチ区間において減速を図る時などに使用する。例えばVNAVをエンゲージしてMACH0.847で巡航飛行中、管制からMACH0.82でしばらくの間飛行するよう指示された。この時、パイロットは右下の表の要領でSPD INTVを行なう。
IAS/MACH
ウインドウ
VNAVをエン
ゲージした
ままMACH
0.820でSPD
INTVを実施
中。管制か
らの速度制
限が解除さ
れたら、IAS/
MACHセレク
ターをもう一
度プッシュ。
P F D
コマンドスピード
操  作 MACH0.8
47で飛行
中。IAS/
MACHセ
レクター
をプッシュ
する。
IAS/MAC
Hウインド
ウがアク
ティブ゜に
なる。
IAS/MAC
Hセレクタ
ーでMAC
H0.820を
セレクト。
ウインドウ
が再びブ
ランクにな
り、SPD
INTVがキ
ャンセル
された。
上昇中や巡航中に管制から速度を指定された時にはSPD INTVを使用するが、降下時に速度を指定された時にはFLCH(フライトレベル・チェンジ:のちに解説)を使用する事が多いという。何故かと言うと、「VNAVでも勿論いいのだけどVNAVは元々効率よく降下する為の補助的なものなので、混雑している空港でレーダーベクターされている時などは、あまり意味がないと思う」(-400現役パイロット)だとか「降下時にVNAVによるSPD INTVを行なうとパワーがアイドルで固定されてしまう。パワーを入れたままスムーズにレベルオフした方が乗り心地が多少ともよくなるから、私はFLCHをよく使っていた。FLCHであればパワーを少し残したまま降下させる事も出来る」(元-400パイロット)という話を聞いた事がある。但し「−400 の設計思想からいっても VNAV を主体に使うべきで、WPT の高度制限等を無視する FLCH の方が非常用だと解釈している」(-400現役パイロット)というパイロットもいて、VNAVを使うかFLCHを使うかはエアラインポリシーというよりも各パイロットの好みと言えるかもしれない。ちなみにB767から移行してきた-400のパイロットは、B767のオペレーションの流れに慣れているが故にFLCHを多用する人が多いそうである。初期の767にはALT INTV機能が付いていなかったからか、確かに私がB767でオブザーブさせて頂いた時も、いつも途中からFLCHで降りていたのを覚えている。

さて、上昇時には裏テクニック(?)として別のSPD INTV使用法がある。これは高度10000FT以上で250ノットの速度制限をクリアーし、VNAVによるECON CLB SPD(経済上昇速度)で上昇している時に使える技である。
例えばVNAVをエンゲージして310ノットで上昇中、気流が悪くなってきたとしよう。早く乱気流域の上に出たい。この時、パイロットはSPD INTVを使う事により高度を早く稼ぐ事が出来るのである。まずIAS/MACHセレクターをプッシュしてウインドウに250(ノット)をセットする(*250ノットというのはあくまでも仮定であり、状況により他の速度を使用する事が充分に考えられる)。VNAVで上昇中はパワーは上昇出力で固定されるので、AFDSはピッチを更に上げる(つまり上昇率を上げる)事で減速を図る。この間、一時的ではあるが上昇率はかなり上がる。これにより通常の上昇より早く高度を獲得出来る訳である。勿論250ノットまで減速したのちはその速度を維持するよう若干ピッチが下がり上昇率も幾分抑えられるが、それでもFMC SPDで上昇するよりかは上昇率はいいのである。これがSPD INTVマジックである。乱気流域を抜けた時点でSPD INTVをキャンセルして、再度FMC SPDによる上昇を続ける事になる。
高度を稼ぐ方法はSPD INTVマジック以外にも、ディレート(減格)していた上昇出力をCDUのTHRUST LIMページで定格上昇出力に変更する事によりパワーを上げて上昇する方法がある(ちなみにCLB と CLB1 は 30,000ft で、CLB と CLM2,3 は 35,000ft で同一のスラストとなるので30000FT付近まではこの方法により高度を稼ぐ事が出来、日常の運航でもこの方法がよく使用されているそうである)。

【SPD INTV使用時のVNAV及びA/Tモード、VNAVパスとの関係について】
@VNAVで上昇中に管制から速度を指示された等の理由によりSPD INTVを行なう時、ピッチモードおよびA/TモードはそれぞれVNAV SPD,THR REFであり、通常のVNAVによる上昇の時と変わらない。つまり速度はピッチ角により変更される。

AVNAVで巡航中に管制から速度を指示された等の理由によりSPD INTVを行なう時、ピッチモードおよびA/TモードはそれぞれVNAV PTH,SPDであり、通常のVNAVによる巡航の時と変わらない。つまり速度は推力により変更される。

BVNAVで降下中に管制から速度を指示された等の理由によりSPD INTVを行なうと、ピッチモードおよびA/TモードはそれぞれVNAV SPD,IDLE→HOLDになり、それまでVNAV PTHにより降下してきた場合、VNAVパス経路から外れる事になる。
 ・この時、wpt高度制限のある高度をキャプチャーするとピッチモードおよびA/TモードはそれぞれVNAV PTH,SPDに変化し、当該高度を維持する。当該wptを通過すると、ALTセレクターに当該高度よりも低い高度をセットしていれば、再びピッチモード及びA/TモードがVNAV SPD,IDLE→HOLDになり、降下する。
 ・wpt高度制限のない高度がALTウインドウにセットされており当該高度をキャプチャーすると、ピッチモードおよびA/TモードはそれぞれVNAV ALT,SPDになり当該高度を維持する。VNAV ALTにおいては、ALT INTV操作により再度降下を開始する事が出来、ピッチモード及びA/Tモードは再びVNAV SPD,IDLE→HOLDになる。
                                                             
wpt高度制限 CDUのLEGSページ右側のSPD/ALTラインに大文字で表示される高度制限。FMCのNAVデータベースに元から収録されている場合と、パイロットがマニュアル入力している場合とがある。


 
参考

*-400ではSPD INTVを行なうと、VNAVパスが接近してきても当該パスをキャプチャーし自動的にVNAV PTHモードに変わる事はなく、そのままVNAV SPDモードで飛びつづける。但しB767ではそのような仕組みにはなっておらず、アプローチ区間に入ったあとSPD INTVを行なうと以下のようになる。

 ・VNAV SPDにより降下し、VNAVパスよりも低い時……ピッチモードおよびA/TモードがVNAV PTH,SPDに変化し、VNAVパスをキャプチャーするまで水平飛行を続ける。VNAVパスをキャプチャーしたのちはそのパスをフォローする。
 ・VNAV SPDにより降下し、VNAVパスよりも高い時……VNAVパスをキャプチャーするまでピッチモードおよびA/TモードはVNAV SPD,HOLDのままである。VNAVパスをキャプチャーするとVNAV PTH,SPDに変化し、そのパスをフォローする。
 ・VNAV PTHにより降下しVNAVパス上である時……ピッチモードおよびA/TモードはVNAV PTH,SPDのままである。

アプローチ区間 FMCのアプローチ・プロシジャー(CDUのアライバルページに収録されているAPPROACHESの区間:例えばILSやVORアプローチ)の最初のwptから着陸までの区間、もしくはビジュアルアプローチでランウェイ(RW)wptがアクティブウェイポイントであり当該wptから自機までの直線距離が25マイル以内となった地点から着陸までの区間の事。

上記の現象が発生する事や、ALT INTVを装備していない機体がある事もあり、B767では降下時、10000FT以下ではFLCHをよく使用している。