 
            大阪フィルの音楽監督3年目のスタートをベートーヴェンで! 
            大植の自信の表れであると共に、真価の問われる曲でもある。 
            結果は? 
            100%満足とは行かなかったというのが正直なところ。 
            第二ヴァイオリンが右に来るという古典的配置(最近よく見られる)による新鮮な響き、リズムの良さなど、大植らしい部分もあったが、この曲の一番の聴きどころは、最初の和音がどう響くか、そしてその後の序奏部分から主部のテーマにどう繋げるかというところにあると思います。大植の演奏は、決して重々しくならず、スムーズに流れる音楽。私はこの第1音をもっともっと重厚に響かせて欲しいのです。大上段に構えて見栄を切るような演奏がこの曲に果たしてふさわしいかどうかは異論があるでしょうが、長年に渡るこの曲に対するイメージが固まっているため、ここは譲れないという気持ちです。 
            つづく序奏部も大植の演奏はスムーズに流れますが、そのスマートさが不満でした。 
            第二楽章も淀みなく流れる演奏ですが、ここももっともっと重くゆっくりした足取りで一音一音噛み締めるような音楽を期待してしまうのです。朝比奈が、<自分が死んだとき、演奏して欲しい>と言ったことのある音楽で、葬送行進曲のような演奏が聴きたいのですが、重さよりもスマートさを感じさせるこの日の演奏スタイルには少し抵抗があります。大植英次らしい美しさは感じるのですが・・・・・ 
            リズムの饗宴のような第四楽章の最後の音が鳴り終わると同時に会場は興奮の坩堝と化してる中、なぜか少し醒めた自分がいることに戸惑いながら会場を後にしました。
              
            
              
                
                  
                  -今日の一言-
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                  | 一時代前の巨匠風の音楽はもう望めないのでしょうか? | 
                 
              
             
             
            
 
            
             
            
            
            
             
            
            
              
                
                  | 曲目: | 
                  ラヴェル作曲 スペイン狂詩曲 
                           左手のためのピアノ協奏曲 
                           組曲「クープランの墓」 
                           亡き王女のためのパヴァーヌ 
                           「ダフニスとクロエ」組曲第2番 
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            このオーケストラが、フランス音楽をリラックスして演奏するとは思いませんでした。 
            井上のきびきびしたスタイルで、スペイン狂詩曲が楽しめるのは予想どうりでしたが、「ダフニスとクロエ」の朝もやの情景を、驚くほど自然な音の情景として表現していた。 
            個人的には、「亡き王女のためのパヴァーヌ」が好きなので、これが一番楽しめたが、「 
            ダフニスとクロエ」のクライマックスは井上のメリハリの聴いた演奏が、会場を大いに盛り上がらせた。 
             
            
              
                
                  
                  -今日の一言-
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                  | 大阪フィルのフランス音楽もすてたもんじゃない! | 
                 
              
             
              
            
             
            
            
            
             
            
            
            
             
              
            「シェヘラザード」は、「千夜一夜物語」を題材とした音楽。独奏ヴァイオリンが王妃シェヘラザードのテーマを奏でながらオーケストラが物語を展開していく、いわば一大交響詩−音の絵巻− 
            若手コンサートマスターの長原幸太の艶やかな音が、妖艶な王妃のイメージにぴったり。 
            そして管楽器もそれに負けじとばかり素晴らしい音色を聴かせてくれた。 
            指揮者の現田、数年前にヴェルディのオペラ「ラ・トラヴィアータ」の抜粋版を聴いたときの印象では、手堅くまとめるという感じしかなかったが、この日はもっと積極的な面を出していた。 
            そして、チェロのゲリンガス。リトアニア生まれのチェリストで、テクニックを誇示しすぎることなくプロコフィエフの協奏曲を聴かせてくれたが、驚いたのはその後のアンコール曲。 
            リトアニア(?)のケーテルという作曲家の「バスケス」という小品。人間の心の動揺を音にした−とでも表現したいような不思議な曲で、これがなんともいえず感動的!! 
            チェロというと、低音で優雅なメロディーを奏でる楽器というイメージだが、このゲリンガスの演奏は、チェロで複雑な心理表現をしているようだった。 
            こんな経験があるから、生の演奏会はすばらしいのだ! 
             
            
              
                
                  
                  -今日の一言-
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                  | チェロのアンコールピースが最高のご馳走! | 
                 
              
             
              
            
             
            
            
            
             
            
            
            
             
              
            エストニアの現代音楽2曲と、二十世紀の大作曲家の代表作という組み合わせ。 
            「火の鳥」だけしか興味がなかったというのが正直な気持ちでしたが、前半の2曲も聞いてみて非常に面白い音楽だったので、意外な拾い物をしたような一日でした。 
            なかでも、トゥールの曲は大変新鮮な響きで、今まで現代音楽を聴いた中で一二を争うものでした。 
            コントラバス3人が、それぞれ違うリズムを即興的に演奏するところからはじまるし、そのリズムがいつの間にかジャズ風になったりして、意表をつく音楽。第2楽章では、たくさんの音が一度に鳴り続ける(トーン・クラスターという)大変新鮮な響きだった。<現代音楽=解かりにくい>というイメージは全く無く、楽しめました。 
             メインプログラムの「火の鳥」、普段演奏されるのは組曲が圧倒的に多いと思うが、今回は全曲版の演奏。私がこの曲を最初に聴いたのが、アンセルメ指揮フィルハーモニア管弦楽団の全曲版のレコードだったので、抜粋した組曲よりなじみがあるせいか、全曲通して聴いたほうが面白いと思います。 
            クリスチャン・ヤルヴィ(父親、ネーメ・ヤルヴィも名指揮者)、まだ30代の若手だが、オーケストラを完全に掌握し若々しい音楽づくりがたいへんりっぱ。この曲も、最後に大いに盛り上がって、オーケストラが咆哮するようにもっていくことが多いけど、ヤルヴィは決して手綱を放してしまわず、最後までうまくコントロールしていたように思います。 
            前半の2曲でも、オーケストラのコントロールは見事でした。 
            久々に≪好演≫と呼べる演奏会でした。 
             
            
              
                
                  
                  -今日の一言-
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                  | 親の七光りではなく、実力がある若手指揮者に出会えた | 
                 
                
                  
                  
                  
                   
            
            
            
                   
                  
                  
            
            
                   
                  
                    
                  バイロイトで「トリスタンとイゾルデ」を指揮した直後の演奏会、期待は大きかった。(テレビ収録あり) 
                  出だし、8本のホルンによるテーマで曲が始まる。見事な演奏!金管の中でややその弱さを露呈することが多かっただけに、この日の出来を半分決めたような立派な響きで始まる。 
                  また、ポストホルンの独奏もよかった。トロンボーンの独奏がもう少し頑張ってくれれば最高の金管合奏となっただろう。 
                  そして特筆すべきは、アルトの坂本朱(アケミ)。出だしこそ少し上ずる箇所があったが、ややくすんだ声、落ち着きがありながらも堂々たる歌唱は胸にジンと来た。女声合唱もいつもながら素晴らしい。児童合唱(高校生だったが)の爽やかな声もよかった。 
                  唯一残念だったのは、終楽章。<Langsam.Ruhevoll.Emphunden-ゆるやかに、静かに、感情を込めて->という指示のある楽章。弦楽合奏に木管楽器が重なってゆき、金管が加わってくるという大きなうねりになってクライマックスを創ってゆく。大きな流れになっていくのは感じられたけど、じっと目を瞑って聴いていると、音に濁りを感じた。弦も木管も、個々にはいい音なのに、それらが重なり、大きなうねりとなるときに若干バランスが悪かったのかもしれない。大植の力からすれば、もっともっと澄んだ音色で心震わせる演奏が出来ると思う。 
                  いや、完璧を望むなかれ、次により大きな希望を持とう。 
                   
            
              
                
                  
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                  | マーラーの長大な音楽が高水準で聴けることは大きな喜び | 
                 
                
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                  | 曲目: | 
                  金湘作曲 「巫」 作品62 
                        サン・サーンス作曲 ピアノ協奏曲第5番ヘ長調 作品103 「エジプト風」 
                        ワーグナー作曲 「ジークフリート牧歌」 
                        リヒャルト・シュトラウス作曲 「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」 | 
                 
              
             
            
                   
                  
                    
                  中国といえば西洋音楽の後進国、ワーグナーやシュトラウスの音楽を演奏することが出来ると考えてませんでした。そんな認識でしかなかった自分に恥じ入るばかりです。 
                  中国の作曲家の作った曲を中国の指揮者が日本のオーケストラを指揮して日本の聴衆に聞かせる、今やこんなことは不思議でもなんでもない時代なのです。 
                  一曲目、初めて聴く音楽だが、中国音楽を意識させることもなく、現代のオーケストラ音楽としての響き。弦楽器と打楽器中心で少し単調かなという印象。 
                  この曲と、ワーグナーやシュトラウスの演奏は、オーケストラをうまくまとめた李という指揮者のうまさを感じさせてくれた。個性的とか情熱のほとばしりを感じさせるものではないが、音のバランスがうまく取れて洗練された演奏だった。特にワーグナーの曲の和やかな雰囲気はすばらしかった。 
                  日本を中心に、東洋の演奏家が欧米でも十分活躍できる時代になったようです。 
                   
            
                   
                  
                    
                      
                        李心草 
                   | 
                         | 
                        パスカル・ロジェ | 
                       
                      
                        1971年中国生まれ。 
                        中国放送交響楽団のフルート奏者を務めた後、ウィーン国立音楽大学などで指揮をまなび、1996年中国国家交響楽団の設立に関わり、現在その主席指揮者を務める。 | 
                         | 
                        1951年生まれのフランスのピアニスト。 
                        1971年、ロン・ティボー国際コンクールに優勝して一躍脚光を浴びる。 
                        ラヴェルのピアノ曲全集を録音するなど,フランス音楽の名手。 
                        最近あまり聴くことがなかったが、フランス音楽は安心して聴ける。 | 
                       
                    
                   
                   
                  
                  
                   
            
            
            
                   
                  
                  
            
            
                   
                  
                    
                  予想外の展開にびっくり! 
                  ブルックナーの0番にこんなに圧倒されるとは夢にも思っていなかった。 
                  この日のメインは、モーツァルトのK.466と思って出かけたのに、きれいな演奏ではあるが私にはインパクトが小さかった。もっと低音弦に凄みのある演奏、かつてのフルトヴェングラーの指揮/ベルリン・フィルのようなデモーニッシュな演奏を期待していたので、スマートに纏まったモーツァルトにはいささか拍子抜けの印象。 
                  モーツァルトの心のなかを覗けるような曲なので、またいつかじっくり聴かせて欲しい。 
                  ところが後半のブルックナー、これが素晴らしかった。 
                  弟1楽章は、ブルックナーの習作なんだなと思わせるような平凡な音楽だったけど、第2楽章になると一変! なんと表現していいかわからない凄い世界が始まったのである。 
                  一言で言うなら、≪情念≫の音楽。≪祈りの音楽≫という解説がパンフレットに書いてあったが、私にはもっとどろどろした人間の苦悩を謳いあげてるように聴こえた。 
                  次の第3楽章スケルツォ、これがまたすごい!前の楽章で聴かれた心の中に溜まったものをここで一気に外に吐き出したような強烈な音楽。後期の充実したスケルツォに勝るとも劣らぬ音楽。ただ、中間部のトリオは今ひとつ。 
                  終楽章もブルックナーらしく重厚で、コーダに向けて盛り上げる手法は人を酔わせる魔力がある。 
                  この曲がこんなに感動的な音楽だとは思わなかったが、認識を新たにさせてくれたのは、下野/大阪フィルの力! 
                  前半の2曲を聴いたところでは、若手の普通の指揮者という印象しかなかったが、ブルックナーをこんな感動的な音楽にして聴かせてくれた。<ブルックナーと大阪フィル>といえば誰しも朝比奈隆と結び付けてしまうけど、下野の今日の演奏は、朝比奈とは違った味を出してくれた。 
                  大阪フィルの熱演にも拍手! 
                   
                   
                  
              
                
                  
                  -今日の一言-
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                  | 闘病中の母への応援歌をプレゼントされたよう | 
                       
                    
                   
                   
                  
                    
                      
                        下野竜也 
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                        清水和音 | 
                       
                      
                        1969年生まれ。鹿児島大学教育学部音楽科卒業という経歴の持ち主。ブザンソン指揮者コンクールで優勝し、国内だけではなくヨーロッパでも活躍する若手実力者の一人。 
                        なお、大阪フィルの指揮研究員を2年勤めた。 | 
                         | 
                        1961年生まれのピアニスト。 
                        ロン・ティボー国際コンクールに優勝した実力者。 
                        ベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会を2年かけて行うなど、将来を嘱望されている。 | 
                       
                    
                   
                  
                  
                   
            
                  
                   
                  
                  
                  
                    
                      
                        | トスカ(ソプラノ) | 
                        横山恵子 | 
                       
                      
                        | カヴァラドッシ(テノール) | 
                        福井 敬 | 
                       
                    
                   
                  
                   
                  
                  
            
            
                   
                  
                    
                   舞台の上にオーケストラが並び、主役はこのオーケストラと歌手の声。 
                  演劇の要素のないオペラはやはり面白さが半減するように思う。 
                  時代設定があり、場所の設定があって始めて人物が存在するのであって、動きがないと劇にならない。 
                  反面、音楽だけに集中できるというメリットがあり、この日の演奏もオーケストラは雄弁だった。 
                  そしてトスカとカヴァラドッシの歌は立派なものだった。最後の場面で少し気になる箇所はあったものの、全体として好感の持てる歌だった。スカルピア役の福島明也のバリトンも予想以上に素晴らしい声。 
                   大植英次はこれからもオペラを取り上げていくようだが、どうせオペラをやるならしっかりとした準備をして、それなりの劇場で本格的なオペラを上演して欲しい。 
                  できることならびわ湖ホールでワーグナーをやってくれないかな・・・? 
                  
                  
                   
                  
                   
            
            
            
                   
                  
                  
            
            
                   
                  
                    
                  大植英次のブルックナー・・・2度目である。 
                  前回はブルックナーの最高傑作、第8であった。 
                  正直この演奏は100%満足できるものではなかった。どうしても朝比奈隆と言う巨人と比較してしまうことになり、曲の大きさを表現しきれてなかったという印象だった。 
                  そして今回の第7番。 
                  これは素晴らしい結果になった。出だしから大阪フィルの力演に魅了されてしまった。。 
                  そして大植英次の表現に、これ見よがしの部分がほとんどなく、前回感じた若さゆえの空回りの部分が全くなかった。 
                  テンポを動かしたり、アッチェレランド’(しだいに速く)して効果を狙うようなことがほとんどなくて、ブルックナーの音楽を堪能できた。 
                  大阪フィルの7番といえば、ブルックナーゆかりの地、オーストリアの聖フローリアン教会で行われた1975年の朝比奈隆の伝説的な名演が残されており、どうしても比較されてしまう。 
                  大植英次の演奏を聴く前は朝比奈の影がちらついたが、音楽が始まると全くそれが気にならなくなり、大植英次と今の大阪フィルの演奏に聴き入った。 
                  まず大阪フィルの演奏能力が飛躍的にレベルアップしており、弦楽器の合奏能力の高さがこの曲の素晴らしさを再認識させてくれた。そして大植英次のこの曲に対する意気込みが感じられた。(弦がうますぎて、抑揚を付けすぎかなと思わせる部分が無きにしも非ずだが、これとて大きなきずにはならない。) 
                  8番では、大植英次とブルックナーは合わないのかなという印象を持っていただけに今回の演奏は大きな収穫だった。 
                  今年は第9番を取り上げることになっているが、大いに楽しみだ。ただこの曲は未完成ながら8番に匹敵する大きさを持っており、今回のように行くかどうかは少し不安だが、楽しみに待ちたい。 
                   
            
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