これは英国にかぎったことではないが、地方へ、田舎へ行けば行くほど水も空気もおいしい。
そして信仰心もそれに比例して篤くなるようにも思う。私はそういう地方の町や村を旅して、
教会や聖堂、あるいは修道院の前にたどりつくといつもホッとする。そこは地理的にも間違いなく
町や村の中心に位置し、たとえ生臭といえども一応聖職者はいるのであり、信仰の道にいるからだ。
 
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いまさら考えてみるまでもなく、子供の頃から古いものが好きであったし、古いものがなじんでいた。
泳ぎをおぼえたのもプールではなく、いまはもうない古池や川であったし、ザリガニやナマズをとったのも
そういった川だった。美しい水のあるところには様々な動植物が生息していた。勿論ホタルも飛んでいた。
 
ホタルの幼虫のエサになるカワニナや姫タニシも農薬に犯されていない川では生きてこれたのである。
英国の地方都市や村に行くと、いまも野ウサギ、リスなどの小動物が車道に飛び出してくるほど
縦横無尽にあそびまわっている。ハイドパーク(ロンドン)にもウサギやリスはいるが、数が違う。
それにだいいち、田舎のかれらのほうが私のみるかぎり自由奔放、闊達でのびのびしている。
 
そこのところがハンドルをにぎるドライバーにとっては悩みの種、いきなり道路に出てくるから危険
この上なく、現に車にひかれたかれらを何度も目にした。南無阿弥陀仏々々々々々々‥。
結局、英国人は自然を愛している。そういって具合が悪ければこうもいえる、自然に惹かれる人がかなり多い。
そう明言するには無論それなりのわけがあり、ナショナル・トラストもそうであるが、パブリック・フットパス、
そのほかにも彼らは実に真面目にきめ細かに自然を保護育成している。それについやす費用、エネルギーは
正直尊敬にあたいするもので、どこぞの国の地方自治体のごとく、固定資産税ほしさに自然破壊を奨励し、
竹林や雑木林を伐採した跡地にガソリンスタンド、パチンコ屋ができていたという話は絶えてなく、まして、
税金を湯水のごとく無駄づかいするといったことも聞かない。視察と称して税金で豪華旅行などもってのほか。
 
彼らには自分たちの遺産は自分たちが守るという意識が根付いているから、名所旧跡でも幾ばくかの入場料
をとり、そのお金をもとに旧跡の修復費用などに充当している。それをまことに地味に、地道にやっている。
少ない予算では多くのことをまかなえない、だから施設の装備が十分とはいえない場合もないわけではない。
だからそれが何だというわけのものでもあるまい、周囲の自然、景観、彼らの真摯な姿勢が不十分さを補って
なお余りあるからである。それもこれもすべて彼らが自然を愛しているということに帰着するのではないだろうか。
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