どんな思い出もいつかは色あせる。そんなことはないと思う人もいるだろうけれど。
         そう思えるのはまだ若いからだ。
 
        思い出は時間の経過とともに退色するさだめにある。
        思い出を共有することで色あせるのをやわらげることはできる。
 
      年に一度、分かち合った思い出を話しあい、思い出が色あせぬようにする。
     秋のドルドーニュ川、コルドの全景、ロカマドゥールの夜景、ひと気のないストーンヘンジ、
     グレン・コー、ダノッター城、ハーレフ城やバンバラ城から見た海、スローター村の夕景。
     記憶とはかけがえのないものだ。
 
      どの風景をとっても写真より立体感があり、肉視したそのままの状態に保たれている。
     それが心の風景の特徴なのである。しかし思い出とは何か、思い出は位牌のようなものだ。
     思い出がすばらしいのは、位牌に魂が宿るのと同様、思い出にも宿るからだ。
 
   朝はここで外の景色を眺めながら朝食をとるのもよいが、夜はカーライル(CARLISLE)へ
     で夕食をとればよい。カーライルにはマジェンタ(Magenta's)というグルメには
     うってつけの安くてうまいレストランがある。
 
    カーライルでちいさな宿をもとめるなら、「Number Thirty One]=わずか3部屋のB&B。
    オーナーの経営姿勢と物腰に胸うたれるものがある。
 
           心の風景を定着させるのに一役買うのは安眠であると思う。
            私たちの記憶は寝ている間に大脳に定着するのであってみれば、
            睡眠は思い出の母ともいえるのではあるまいか。
            
            快適な旅には快適な眠りあり。私はいつもそう思って旅をつづけている。

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