駐車場のある裏庭はふつうのイングリッシュ・ガーデンなのに、表に回ると‥
匂いにむせかえるようなラベンダー。そこがこの古びたホテルの売りということ
でしょう。
 
庭はハーブの宝庫。レストランで供出される各種料理、ハーブティーなど、
五名の女性が丹念に育て、客の舌をたのしませてくれるのです。
 
年齢も個性もマチマチ、彼女たちに共通しているのは明るさと情熱。和気藹々とした
ようすがほほえましく、シャッターを押す。
     
自分の仕事に誇りをもっているからたのしい、そこはかとなくそういう雰囲気に
つつまれた初夏のある日、ハーブを摘む女たち。
    
とれたての野菜、ミネラルウォーターより安価なハウス・ワインが
素朴な食卓にならぶ。
有料水をオーダーしたら、夜の部も手伝っていたハーブ摘みの女性のひとりがこう言った。
              
     「ここの無料水は飛びきりおいしい天然水ですよ」
 
たしかにうまかった。日本の百銘水も顔色なからしむほどうまかった。

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