若いかがやきに満ちていたころはともかく、ある程度年をとったら、夏場は涼しい森がいい。
    空気のよい森だけでも十分であるが、ちいさな湖や河があればなおさら。
 
    毎日森のなかを散策して日を過ごす。それ以外のことは何もしない。
    何もしないことがうしろめたいような国とは永遠に
    おさらばである。終日(ひねもす)日がな野鳥や小動物とあそぶ。なんという快楽の日々。
 
    何もしなくて充足するのだが、親しい友にたまに手紙を書くことはある。
    何もしないことの至福感を伝えるために。
    朝食後、または夕食前、散歩の代わりに手紙を書くよろこびは格別である。

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