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メッセージ

今の時を生かして用いる
〜エペソ人への手紙5章15−17節から〜

 貝塚聖書教会牧師 池尻良一

 

 「時」と言いますと、最近こんなことがありました。知り合いが約束の時間を1時間も遅れながら、悪びれる様子もなく堂々と訪ねて来たのです。正直心中は穏やかではありませんでした。それと好対照ですが、先日乗った新幹線が3分遅れて、乗務員がそのことを何度も何度も車内放送で
詫びるのです。時間の感覚というのは、時と場合によってこんなにも違うものかと改めて感じました。


 時間というと私たちはどうしてもその効率を考えます。まさに「時は金なり」です。しかしよくよく注意しないと私たちはこれに追いまわされ、自分の効率の悪さばかりが気になり、自分を責めてしまいます。しかしどんなこともその原因は複雑で色々な要素が絡んでおり、余り自分をいじめ過ぎるのも考えもの、です。私たちは自分を責めてばかりいないで、どこかで自分のペースで生きることを覚えるようになる必要があるようです。私の持論に、「自分が植えられた畑で、自分の花を咲かせたらいい」、というのがあります。そうです。他人と自分を較べて、自虐的になる人生哲学には、早々と「さよなら」したいものです。


 しかし時間の問題で深刻なのは効率だけではありません。いやそれ以上に大変な課題があるのです。それは、「何故あの時あんなことをしたのか」「何故あんなくだらないことに時間を費やしたのか」といった類の後悔です。この種の後悔は、下手すると自分の人生そのものはくだらないものだったと、私たちを耐え難い回顧に引き入れてしまうことがあるのです。どうもこれは「マイペースで解決」という訳にはいかないようです。次にこの問題を考えてみたいと思います。

 聖書こんな言葉があります。「機会を十分に生かして用いなさい。悪い時代だからです」。この言葉は人が悪い時代の風潮に乗って大事な生涯を台無しにしてしまうことがないため、時間を正しく用いるよう警告しています。ここで問われているのは、時間の効率とその成果ではありません。それは時間の性質とでも言うべきでしょうか。新聞に20億円の保釈金を払った人のことが載っていました。私はその報道にびっくりしました。そしてふたつのことを考えました。ひとつは、この人は随分と頑張って成功し、財産家になったのだなあ、というもの。もうひとつは、その財産が保釈金になったというのは、いかにも皮肉な話だ、というものです。私はこうした実例に触れて、人は効率と成果ばかりを求めて必死になっているが、過ぎた時間を振り返って、果たして「生きていて良かったなあ」と思えるのは、何によってなんだろうかと。考え込んでしまいました。私たちは一所懸命生きているようで、何に一所懸命なのか。そこが見落とされているのではないでしょうか。

 先年亡くなられた作家、三浦綾子さんの本にこんなエピソードが載っていました。三浦さんは発病するまでは小学校の先生でした。彼女の13年間の療養中、教え子のK子さんは三浦さんに手紙を書き続けたというのです。彼女は知的障害を持っていました。その手紙の最後はいつも「おかだらをらいじにしてくらさい」で結ばれていました。「そして、その後も、たどたどしい手紙は、わたしの病気が治るまで続いた。わたしは、彼女の手紙を読みながら、いつも心をうたれ、そして教えられた。『字は何のためにあるのか』と。彼女は字を沢山は知らなかった。だが『人は何のために字を学ぶか』ということだけは、知っていたと、わたしは思った」。

 どれだけの成果を上げるか、それに無関心な人はいません。また人は限られた時間の範囲内で結果を出さなければなりません。しかし、人生最後の決め手になるのは、どうもそのいずれでもなさそうです。先の三浦さんの言葉にあるように、結局は「何のために」が私たちの人生の明暗を分けるようです。私は神が開かれる白洲のことを考えています。聖書にこうあります。「人間には、一度死ぬことと死後にさばきを受けることが定まっている」。そしてこの白洲は、私たちが「何のために」生きてきたかを問うのです。「あなたは何のために生涯の時間を費やして来たのですか」。私自身この尋問に身の毛もよだつ思いをしています。

 皆さんは今まわき目もふらずにご自分の人生を走ってこられたかもしれません。それは素晴らしいことです。しかし道の途上で、一度「何のために」生きてこられたのか、考えてみられてもいいのではないでしょうか。そうでないと、道の終わりに、振り返るに耐えられない思いを味わうのは、いかにも辛いことだからです。

 「人は自分の行ないがことごとく純粋だと思う。しかし主は人のたましいの値うちをはかられる」。

3月のお花

過去のメッセージ

2008.1-2月掲載分「尽き果てる人生の望み」
2007.11-12月掲載分「平凡で満ち足りた人生」
2007.10月掲載分「一人で悩まないで下さい」
2007.8-9月掲載分「思い煩いからの解放」
2007.6-7月掲載分「目を覚ましなさい」

      
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