山口 |
鼓童の中での夢はありますか。 |
堀 |
鼓童の舞台でということだけじゃなく、自分がここに生きているということを太鼓を打つことで表現し続けられれば、と思っています。 |
山口 |
太鼓を叩くこと、音楽が好き、そういうことですね。それほどまでに惹きつける和太鼓の魅力はつばささんにとって、どういうところにあるんでしょう。 |
堀 |
和太鼓というのは楽器的にすごく魅力を持っているな、というのを最近、すごく実感しているんです。
たとえばドラムと比べて感じることなんですけれど……私にとってドラムだと「刻む」「自分が打つ行為」なんです。和太鼓の場合は「そこにあるエネルギーを引き出す」行為に近い、と最近、思っていて。
他の打楽器はギターやベースなどのポップス系の楽器と混ぜると、スーーーっと音が混ざるんですけれど、和太鼓って一発叩いてしまうと、他の世界を壊してしまうようなエネルギー感がすごくあるんです。
最初はそれが、しめっぽくって嫌だな、と思っていたんですが、今はそのすごさに圧倒されています。和太鼓の中にあるエネルギーは、自分がうまく整っていないと負けてしまったり、逆に響きを濁してしまったりする。逆にそのエネルギーと自分の気持ちがうまく重なると、和太鼓そのままを引き出すことができるな、と思っていて。
今まではリズムや技術の練習しかない、と思っていたんですけれど、最近は技術を超えたところで、そういう楽器のエネルギーと自分の関係をうまく作ることが大切なんだ、と思うようになりました。 |
山口 |
書の世界にも通じるようなものがありますね。そのときの自分のあり方や気持がそのまま墨の中に出てくる、という。それに近いですね。 |
堀 |
和太鼓はそういう楽器だと思います。 |
山口 |
鼓童に入る前にロンドンに行ってコンプレックスを抱いた、ということをおっしゃっていたけれど、こうして和のものに触れていらして、そういう意識や感覚は変わりましたか。 |
堀 |
変わりましたね。自分がショックを受けた地であるロンドンに、今はちゃんと自分の根っこを見つけてまた訪れることができるというのは誇らしいし、またあちらの音楽をリスペクトすることもできる。対等な気持で接することができるようになったと思います。
何が変わったのかわからないんですが、日本ていいよね、と思ってもらえているな、と感じられるようになったというか。ま、たまにレストランに行って、自分たち東洋人より後に入った白人が先に、という細かいことはありますけど(笑)。 |
山口 |
日本人でよかったと思えると同時に、相手のことも受け入れられるようになった、ということですね。 |
堀 |
よかったな、と思いますね。あのままの気持ちでドラムを続けていたら、こういう自分にはなれていないと思う。もし、そのままロックやポップスをやり続けて海外に行ったとしても、そこで尊敬されることも、「いいね」と言ってもらえることも、自分が胸を張って「どうだ」と言えることもなかったと思うし。自分のルーツや……匂いを確かめることができましたから。 |