山口 |
その太鼓は何という名前ですか。
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堀 |
これは鼓童オリジナルの太鼓で、締獅子太鼓(しめじしだいこ)と言います。片側に牛の皮、もう片側に馬の皮が張ってあって、音が違うんです。 |
山口 |
私、韓国の太鼓でチャンゴを習ったことあって、跳ねたり舞ったりして腰を痛めたことがあるんですけれど(笑)。それを持って舞ったりはされるんですか。 |
堀 |
いえ、これ結構、重いので。みんなで前に出たり後ろに下がったり、というくらいはありますけれど、今の舞台ではチャンゴほど激しくは動いていません。チャンゴは細いバチで軽く弾く、という感じかなと思うんですけれど、これは弾くよりも沈めるというか……和太鼓は皮が厚いから、結構しっかりバシンと深く入れないと、音が通らないんです。 |
山口 |
ところで、鼓童のような太鼓の表現て、実は日本の伝統そのものじゃないんですよね。伝統の太鼓といえばお祭りの太鼓で。 |
堀 |
和太鼓だけで楽器として演奏することがなかったですから。 |
山口 |
前身にあたる「鬼太鼓座」が今のスタイルを築いてから始まったもので、だから実はすごく歴史が新しい。伝統的な楽器を使ったコンテンポラリーなものなんですよね。日本人の新たなる太鼓の表現や美しさ、それを多くの人にわかって欲しい、と私も思っているんです。 |
堀 |
そうです。だから、ちょっと新しいリズムをやると「伝統のものじゃない感じがする」とか「陽気な感じがする」と、お客さんから言われるんですけれど。そもそも和太鼓そのものが、大陸から渡ってきた楽器ですし。自分たちがトラディショナルだと思っているものが、そうじゃなかったりするその感覚ーー最近、岡本太郎さんの『芸術性』という本を読んでいて、そうだなぁ、と思うんです。 |
山口 |
今、鼓童に女性は何人いらっしゃるんでしょう。 |
堀 |
舞台に立っているのは7人ですね。だいたい踊りや歌なんですけれど。 |
山口 |
つばささんは前は髪を長くされていたけれど、それをばっさり切られて今のボーイッシュなスタイルになって。ご自身は男っぽい性格だと思いますか? それとも女っぽい性格? |
堀 |
いやぁ、むちゃくちゃ女っぽいと思います(笑)。結構、女々しいし。 |
山口 |
女々しいの(笑)? サバサバとしていらっしゃるのでは。 |
堀 |
気が弱いんです。小さいことが気になったり。結局は「ま、いいか」となるんですけれど、その「ま、いいか」に行くまで、うわぁああああと悶絶したり悩んだり。噂話も大好きですし(笑)。 |
山口 |
そのボーイッシュなスタイルが素敵だと思うんですけれど、でも鼓童の中で女性は女らしい役割を担う印象があるから逆に異質なのかな、とも思うんですが。 |
堀 |
私が鼓童に入ったときは、太鼓を叩くのは男性、女性は踊りや歌と役割がわかれていて、男性がモノクロなら女性は花のように色を添える役周りだったんです。だからたぶん、鼓童の中でも最初は戸惑ったと思うんですよね。
私はドラムをちゃんとやりたいがために、きっかけとして和太鼓を始めたから、自分の中で太鼓を叩くという以外に、そこに存在する意味がなくて。女性はだいたい踊りなのに「私は踊りません、太鼓を叩きにきたから」と言い続けてきましたから。 |