30号
2004年1月5日 発行
全港湾神戸支部
本四海峡バス分会
大阪高裁判決
控訴全面棄却
海員組合は「使用者」にあたる!
海員組合は筆頭株主になってからは、
  会社と対立的立場にあるということはできない!
               主   文
  1. 本件控訴を棄却する。

  2. 控訴費用は、控訴人と被控訴人に生じた費用は控訴人の負担とし、補助参加人らに生じた費用は補助参加人らの負担とする。

この裁判は、兵庫県地労委の救済命令(2001年8月21日付)において、海員組合に対する申立を却下した部分の取消しを求めた行政命令取消訴訟の控訴審判決です。

【行政命令取消訴訟】
 全港湾神戸支部は、本四海峡バス(株)による団体交渉拒否について、不当労働行為として2000年10月13日に兵庫県地労委に3度目の「救済」を申し立てました。救済内容の第1項は次のとおりです。

 被申立人本四海峡バス株式会社および全日本海員組合は、申立人組合及び同組合本四海峡バス分会が2000731日付で申し入れた「団体交渉開催の申し入れ」について、誠意を持って団体交渉に応じなければならない。

これは、発行株式の55%を所有する筆頭株主である海員組合が、事実上、会社を管理・支配しているとして、会社に加え海員組合に対しても団交受諾の命令を求めたものでした。ところが兵庫県地労委は、会社に対しては団交応諾命令を下しましたが、海員組合に対しては「海員組合が単に会社の筆頭株主としてだけではなく、会社の経営面に対してかなりの影響力を有していることは否定できない」としながらも、「海員組合が会社従業員の労働時間や賃金等の労働条件を決定し、日常の業務運営上の指揮命令についても現実的かつ具体的に従業員を支配していると認めるに足りる疎明はない」として、海員組合の「使用者性」を否定し、海員組合に対する申し立てを却下しました。
 全港湾神戸支部は、この命令の却下部分について取消しを求め2001年11月22日、神戸地裁に行政命令取消訴訟を起こしました。この行政訴訟の最大の争点は、本四海峡バス(株)において海員組合の「使用者性」が認められるか否か、ひいては、全港湾の分会が結成されて以降、会社が一貫して団体交渉を拒否してきた経過に関し、海員組合はこの不当労働行為の当事者であるか否かという点にありました。
 同判決(詳細:かけはし24号)は、その「判断」において、全日本海員組合は「会社設立の経緯においても、人的、物的、資本的関係においても、さらには、現実の労務管理の面においても、実質的に会社を管理又は支配しているものと認められ」「雇用主ではないが、補助参加人会社(本四海峡バス)に対する実質的な影響力及び支配力にかんがみると、労組法7条の『使用者』にあたると解するのが相当」との明確な判断を下した上で、その主文において、2001年8月21日付兵庫県地労委命令のうち「主文4項『被申立人全日本海員組合に対する申し立てを却下する』を取り消す」と判示しました。
 兵庫県地労委と海員組合及び会社側は、この神戸地裁判決を不服として大阪高裁へ控訴しました。2003年12月26日大阪高裁は、兵庫県地労委や海員組合及び会社の主張をすべて斥け、さらに、会社と労働組合という関係について、海員組合が「54.93%を保有する筆頭株主となってからは、対立的立場にあるということはできない」とし、「原判決(神戸地裁判決)は相当であり、本件控訴は理由がないから主文のとおり判決する」と、神戸地裁判決を全面的に支持する判決を言い渡しました。

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漂流する全日海

この大阪高裁判決は、最高裁へ上告しても不当解雇・団交地位確認、不当懲戒処分事件などと同様に、上告不受理の棄却を待つだけであろうことは明らかであり、事実上の確定判決です。数多くある御用労組との闘いなど、労働運動の歴史において、労働組合が企業の「使用者」の認定を受け、不当労働行為の当事者となった事例は初めてです。現行の労働組合法の下では、労働組合というのは保護される存在であって、その使用者性が認定されるなど一般的にはあり得ないことであるとしても、ここまでやれば「使用者」と見なされ、不当労働行為の当事者とされるという警告に他なりません。
 また、今回の判決は、本四海峡バス事件の異様さを浮き彫りにするとともに、全日本海員組合がこの争議の元凶であり、争議解決のカギを握っているとの司法判断が下されたことを示しています。全日本海員組合は、正義と労働組合としての社会的責務において英断が迫られています。

社会的不正義を正せ!
 私たち全港湾は「海員組合は使用者にあたる」とする大阪高裁判決を受けて、海員組合関西地方支部と会社に対し、「判決を受入れ脱法行為を是正し、会社正常化による争議解決」を申し入れた。
 海員組合関西地方支部は「申入書を受け取る訳にはいかない」旨の発言を繰り返していたが、全港湾の追求に、海員組合は少人数での対応をするところとなりました。井下副支部長は「申入書」を受け取り、こういう申入れがあったことは伝えるとしました。
 また、会社への申入れは、出社していた川真田社長に、神戸支部の馬越委員長と青木副委員長が申入れをするところとなりました。不当解雇と全港湾否認、本社逃亡に始まる争議勃発以来4年半が過ぎていますが、川真田社長への直接の申入れは今回が初めてとなります。海員組合が「使用者」と認定されるにいたり、海員組合の介入を許し脱法行為を続ける会社にも重大な責任があるとして、即時の会社正常化と団体交渉の開催を求める申入れをおこないました。川真田社長は「申入書」を受け取り、期日までに返答するとしました。
 海員組合も会社もそうであるが、裁判判決や労働委員会命令をことごとく無視し、脱法行為を繰り返すことに何の意味があるのだろうか。今の脱法状態を放置するならば、緊急命令不履行(団交拒否)による罰金が科せられることは自明である。
 他方「使用者」の認定を受けた海員組合は、本四海峡バス(株)においては労働組合としての要件を欠き、不当労働行為の当事者になるということである。もれ伝わるところによると、12月17日に神戸、淡路、徳島において、海員組合中央の馬越沿海局長が出席する海員組合の職場集会が開かれ「このまま行けば会社をたたまざるを得ない」などとする旨の発言があったといいます。まさに、お似合いの発想である。裁判判決や労働委員会命令で明らかなように、社会的不正義を押し通すために何億という組合費をつぎ込み、結果、地裁に続き控訴審においても「使用者」と認定され不当労働行為の当事者となった。筆頭株主である海員組合は、会社と自身の社会的不正義を正し、労働組合としての原点に立たなければならないのではなかろうか。
海員組合「使用者性」裁判解説        労働委員会・裁判の流れ     
中労委全面勝利命令!不当労働行為の謝罪文を手交せよ!
新たな緊急命令か!?
会社側は無意味な命令取消訴訟を東京地裁へ
                            主   文
T. 中労委平成13年(不再)第59号事件に係る初審命令主文第4項を次のとおり改める。
  1. 再審査申立人本四海峡バス株式会社は、再審査被申立人全日本港湾労働組合関西地方神戸支部に対し、本命令受領後、速やかに下記の文書を手交しなければならない。












U. その余の再審査申立を棄却する。
                             平成  年  月  日
全日本港湾労働組合関西地方神戸支部
支部執行委員長 馬 越  輝 光  殿
                      本四海峡バス株式会社
                      代表取締役社長 川 真 田  常 男

 当社が、洲本営業所において、全日本海員組合に対し組合事務所を貸与していた期間、貴組合から申し入れのあった組合事務所の貸与を拒否したことは、中央労働委員会によって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。

2003年9月17日付で中央労働委員会は、会社側の再審査申立を全面的に棄却する上記命令を下した。
 この事件は、会社に対する第2の団体交渉拒否と、「筆頭株主である海員組合は使用者にあたり団体交渉の拒否は不当である」として、会社と海員組合に対する団交応諾命令などを求め兵庫地労委へ申し立てた事件と、会社が2000年5月に近藤・古川両運転士に科した2度におよぶ懲戒処分(出勤停止)及び古川運転士への転勤命令(徳島〜洲本)、さらに全港湾への組合事務所の貸与拒否、新路線乗務差別、個人面談など、一連の会社行為が全港湾神戸支部への支配介入にあたる不当労働行為であるとして、兵庫地労委に救済を求めた二つの事件である。会社側は、この両事件の兵庫地労委命令において、海員組合に対する申立てを除き、全港湾側の主張を全面的に認めた救済命令を不服として、中労委に再審査の申し立てをおこなっていました。その両方が併合審理となっていた事件の命令である。

中央労働委員会判断

1.近藤・古川両運転士への各懲戒処分について
 本件各懲戒処分はいずれもその処分の相当性を欠いていること、いったんは全港湾神戸支部を脱退する意思を表明した古川及び近藤が、最終的に全港湾神戸支部に留まる旨表明してから間もないころに行われたものであること、しかも、古川及び近藤が同時に懲戒処分に付されたことを併せ考えるならば、本件懲戒処分は、古川及び近藤が一度は全港湾神戸支部を脱退する意思を表明しながら、その意思表示を撤回して全港湾神戸支部に留まったことに対する報復としてなされた不利益取扱いであるとともに、全港湾神戸支部の影響力を排除する目的で実行された支配介入であって、いずれも労働組合法第7条1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとした初審判決は相当である。

2.古川運転士への転勤命令
 海員組合の役員であった坪根氏が会社の代表取締役専務に就任するなど平成12年4月に会社の新体制が発足して以降、以前にも増して海員組合の会社に対する影響力が強まる中、全港湾神戸支部と会社との対立が深まっていたことが認められる。しかも、本件懲戒処分の直後、突然に本件転勤命令が発令されたものであること、本件転勤命令により古川の乗務員手当等の額が大幅に減少したこと及び自宅からの通勤を困難にしたこと並びに同人が副分会長であったことを併せ考えると、本件転勤命令は、古川が、いったんは全港湾神戸支部を脱退する意思を表明したものの、それを撤回したことに対する報復としてなされた不利益取扱いであるとともに、徳島営業所における分会活動から副分会長を排除し、もって全港湾神戸支部の影響力を減殺することを意図してなされた支配介入であって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当である。

3.全港湾神戸支部の運営に対する言動等

 「全港湾神戸支部の組合員を新路線(関西空港便)に乗務させない、乗務できない者は転勤もありえる」などとした全港湾組合員乗務差別。海員組合の影響力の下「全港湾神戸支部に留まりたい」という古川運転士の意思を翻意させるための本社出頭命令。坪根専務が就任直後に行った「会社は海員組合しか認めない」と説明したうえでの全港湾神戸支部で活動を続ける理由を問う個別面談。全港湾神戸支部への組合事務所の貸与拒否(海員組合には貸与)。などについて、これらの会社の一連の行為は、全港湾神戸支部の存在を嫌悪し、その排除を図る意図の下に行われたとみるべきであり、全港湾神戸支部の組合員に対する脱退勧奨及び支配介入であって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当である。

4.2000年7月31日付団体交渉
 平成2000年6月30日以降、多数回にわたって全港湾神戸支部との折衝を行ったことが認められるが、全港湾神戸支部に対する会社の姿勢は、「従業員に全港湾神戸支部組合員はいない」とか「従業員に全港湾神戸支部組合員らしき者がいる」との態度をとり続けて一貫して全港湾神戸支部を団体交渉の相手方として認めない上、折衝の結果、合意が成立したとしても労働協約の締結を拒否するとの立場をとっているのであるから、このような姿勢で臨んでいる折衝を団体交渉とは認めることは到底できない。として、会社は団体交渉を正当な理由なく拒否しているのであるから、これを労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当である
会社と海員組合の迷走は続く
 会社は今回の労働委員会命令も不服として命令の取消しを求め東京地裁へ行政命令取消訴訟を提起した。現在、会社側は前回の中労委命令の取消し訴訟が東京地裁東京高裁で全面敗訴となり、性懲りもなく最高裁へ上告している。
 今回も前回同様、遅くとも東京地裁の判決と同時に緊急命令が発せられるであろう。この緊急命令は新たな緊急命令であり、この緊急命令不履行についても罰金が科せられることになる。すでに、近藤・古川運転士に対する懲戒処分は「不当労働行為であり違法無効」、団体交渉については「全港湾は団体交渉の地位にある」ことが、最高裁決定により確定している。会社は、この争議の全権を筆頭株主の海員組合に委譲していると釈明する。言い換えれば、何の当てもない迷走が海員組合の意向であるということである。
 また、「3名の解雇は違法無効」「全港湾は団体交渉の地位にある」「近藤・古川運転士への懲戒処分は違法無効」とする「最高裁決定」以降、全運転士等を対象にした「会社正常化署名」に取り組んだ。海員組合員の約半数が署名し、署名を拒んだ人も全員が「全港湾は正しい」「会社と海員組合はおかしい」「海員組合は信用できない」「判決に従って労使の正常化をするべきである」と、異口同音に憤懣をあらわにしていた。
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