苦しみ、励まされて

<<苛立ちと弱さ>>

「半年経つと、最初のうちのように目に見えてよくならないですよ。 これから先は少しづつ・・・・」と、主治医の言葉。 
退院後2ヶ月経っても大きな変化(良い)がない。 良くならないことは判っていても、思うように動かない、思うようにものごとが出来ない身体に苛立ち、自分に腹が立つ。 話をするのも、話しかけられるのものも嫌なときがある。

入院中に一度冷静さを失い、精神的に苦しい時があった。 退院後2ヶ月(事故後170日)に、「苦しみだけで、なんの楽しみもない、残る人生をこのままで生きていても・・・・と悲観的になり、歯がゆい思いで自分を責め、いらだつ日があった。

極力、「なるようになるわ」と、あまり深刻にならないように、たえずマイナスに考えないように自分に言い聞かせてきているものの、70〜80日目毎に精神的な弱さがでる。 

長い間、病気で患っている人はこんなものだろうか。 自分が経験してはじめて、その苦しみと人間の精神的弱さを知る。

「あかんわ」、「なさけないなあ」と、口癖にでるが、その都度「少しは良くなってきているんだから、あかんや、情けないといったらあかんよ」と、女房から注意と励ましの言葉に救われる。


<講演>

成人前に列車に飛び込み、足を切断、左手も切断、右手は指三本の田原米子さんの講演を聞き、努力、気力の大切さをあらためて教えられ励みになった。

彼女は両足が義足であるが、約90分の話をする間、直立不動。 そして不自由な片手でエプロンを自分でつけて包丁を使ってリンゴをむくことができる。 身の回りのことは誰の助けもなく、自分にあった方法で工夫しやってきている。 その上、二人の子どもを育ててきている。 

この人の話を健常なときに聞いていれば「すごいな」と、思うだけであろうが、自分が不自由な身になって、あの不自由な身体で苦にせず、あれだけのことをやっている。 自分も努力と気力、工夫することで仕事に復帰できると・・・・。


<体験者から激励>

「よく頑張っているので、あんただったら年々、良くなると思うよ」と、プールサイドで年輩の男性から声をかけられる。 
この人は15年前、事故で下半身が不自由になり、6年間どうすることもできず13ヶ所の病院を転医。苦しみ、悩み、傷病と闘ってきた人の体験談は、いろいろの参考になり、励まされ、勇気付けられた。

「長い間、不自由な身で女房や娘に世話になり、介護は居たせり尽くせりやってくれ、感謝の毎日であったが、いくら心配してくれる身内でも心の中までは入ってくれない。心の中まで判って貰えない歯がゆさで悲観的なことばかり考え、自殺を考えたことも何度もある。 
心の中は自分だけしかわからない。 そのことを自分がしっかり理解して、自分に負けないようにすることの大切さ。いっきに治らない、いつか良くなると期待し希望をもって頑張るように」と、励まされたが体験者の話は説得力がある。


<成長の機会>

考えてみれば、人生どこでどうなるか予測できない。
自転車で転倒して下半身が動かなくなるって考えてもいなかった。 この事故は誰のせいでもない。 自分が少し有頂天になっていたのかも知れない。 少し謙虚さに欠けていたのかも知れない。 そのために落とし穴に落とされたものと思っている。 死なずに、この程度で生かしてくれたのは、「もう一度、這い上がってみよ」と、いう成長の機会を与えてくれたのだろう。

三人の息子に恵まれ、家族円満。 みんなが元気でしあわせ、なにかにつけて他人より何倍も楽しませてもらい、仕事面においても、先輩や周囲の人から引き立ててもらい、誰からも足を引っ張られることもなく、普通以上に順調に生かしてもらった。 にもかかわらず、どこかに謙虚さが忘れていたのだろう。

大きな落とし穴で、ちょっときつ〜いお灸であったが、これを肝に銘じて、苦しみ、悩んだこの体験を残る人生の中で生かしたいと思っている。 成長の機会を与えてくれたことに感謝して・・・・・・・・。

1、入院闘病記(1)  入院闘病記(2)  
2、傷病の状況
3、水中運動の効果            
4、苦しみ励まされて

トップページ