敏満寺 清涼山不動院

1400年の伝統を持つ寺院です
宗旨宗派を全く問わない、どなたでもお参りしていただけるお寺です。
1400年の伝統を持つ寺院ですが、葬儀・法事は言うに及ばず、人々のお悩みにお応えするため、様々な宗教活動を行っております。

お知らせ

当院では愛染明王を四体もお祭りしています。愛染明王というと恋愛の仏さまで、
弓と矢を持たれており、特に若い女性には圧倒的な人気があります。
滋賀県も少子化対策として、県が主宰して婚活パーティなどを行っていますが、
なぜか実施時期は秋でありまして、この時期は各地で様々な婚活イベントが行われます。
「ご縁」という言葉があるように、出会いには何かしらの運命的なものが背後にあるもので、
良縁がいただけるように愛染明王にお願いをしてみましょう。



過去の「ともしび」は​ ​

不動院機関誌「ともしび」

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ともしび                

第百四五十七号

ちょっとしたことだが


旺文社を創設した、赤尾好夫氏の文章を引用しています。「若人におくることば」という非常に古い本で、最初は、読んでみてつまらなかったら紙資源にしようと考えていたくらいの気持ちだったのですが、「ともしび」に引用して補足の言葉を書いていくうちに、つくづくいいことが書いてあると思うようになりました。思うに、赤尾氏は会社を経営する実業家であり、人を見きわめて適材適所で活かしていくことに長(た)けていて、本物だけが持つ説得力が魅力なのでしょう。会社は人で決まりますから、みどころのある人材を採用して活躍してもらわないと、会社はつぶれてしまいます。氏の文章にはたびたび進学や就職の斡旋の話が出てきますが、今月もそのエピソードの一つです。

ちょっとしたことだが
 就職のシーズンになった。ことしは、鍋底景気の影響を受けて、きわめて不況らしい。朝早くから夜遅くまで、次から次へと攻めたてられる。ずいぶん無理なケースだと思っても、たのまれる身になると、つい心が動かされて、紹介状を調いたり、電話をかけたりする。人間の務めだ。 ・
 けさ一人の青年が現われた。テレビ会社を志望だが、学内選考にもれたので何とかして受験できるようにしてもらいたいと言う。だが、私と郷里が同じであるというこの青年に対する記憶が、全然私の頭に残っていないのである。
 「失礼だが、ぼくは全然君を記憶していないが、いったい君とぼくと郷里が同じであること以外に、ぼくが君を推薦する理由が何かあるのだろうか?」
「先生、お忘れになりましたか。私は大学にはいるときに、先生に保証人になってもらいました。M校長に連れて来ていただいて、この室でお目にかかって――。」
「ウーム、ああそうか。思いだした。」
 たしかに世話好きな校長がわざわざこの学生を連れて来たのである。
「それにしてもぼくはまったく忘れてしまっていたが、君、四年近くなるが、 一度ぐらい年賀状でもくれたことがあるかい。」
 青年は恥ずかしそうに答えた。
「申しわけありません。つい学ぶことと遊ぶことに夢中になっていまして――。今度こそご恩はお返ししますから、先生たのみます。」
 私はムッとしたが、この少し抜けたような青年の、悪気のない答えがユーモラスなので、つい顔がほころびてしまった。
「いや、恩は返さなくともよいよ。でも、人生は一人では生きて行けないのだから、覚えていたら、やっかいになった人には、たまに近況くらい知らせなさい。そんな程度のことが、あなたの生涯を左右するかもしれないのだから。お互いに人間だからね。」
昭三三・一一

いかがでしょうか。以前、赤尾氏が「この人物は使えるな」と思った例を紹介しましたが、今回はちょうどそれとは反対のタイプということになります。この学生が校内の選考にもれたのも納得できる話で、困ったときだけ泣きついて、あとは知らんふりですから、こういう姿勢が随所にうかがえるもので、この学生は信用されないのだと思います。感心するのが、斡旋をしてやっても、氏が見返りを求めていないことです。まさに施しであり、このような心がけであるから、一代で会社を興すことが出来たのでしょう。調子がいいだけの学生とは対照的です。
以前、若くして会社を立ち上げた社長がインターネット配信の番組に出ていました。出身大学は九州の、お世辞にも偏差値が高いとは言えない私立大学で、無精ひげを生やしてジーンズ姿で、どう見ても「ちょい悪オヤジ」そのもので、それでいて毎日億の金を稼いでいるというから、うさんくささ満載です。どんなことを話すのかと思っていたら、
「人を見きわめなければならない。例えば、僕が会食に連れて行ったとして、翌日電話をかけてきて、『夕べはごちそうさまでした。』と、ちゃんと礼が言える人間でないといけない。こういうことが大切。」
と言ったので、ほほーっと感心したものです。赤尾氏の言っていることとほとんど同じで、だからこそ一代で巨万の富が築けるのだと納得しました。一代の大成功した起業家というと、とかく何か暴利をむさぼって会社を大きくしたような印象を持ってしまいがちですが、実際は全く逆で、人としての礼儀を欠かさないところに信頼関係が生まれ、会社も大きくなるというものです。成功者の鉄則とでも言うべきものでしょう。


 

合掌



                          合掌
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高野山真言宗清涼山不動院