ブドウと健康

 ワインブームで一躍注目を集めるようになったポリフェノール。活性酸素を抑え、ガンを予防したり、動脈硬化などさまざまな生活習慣病の予防にも効果があるそうです。 ブドウはブルーベリーやカキなどとともにポリフェノールを多く含む果物です(→ポリフェノールと活性酸素)。また、ブドウや赤ワインに含まれるレスベラトロールという物質が発ガンを抑制するという研究も報告されています。

ポリフェノール
 ポリフェノールの量はブドウの部位別には種子に最も多く、次いで果皮、果肉の順です。また、赤系のブドウに多く、白系のブドウには少ないことが知られています。ブドウにはポリフェノールとしてアントシアニン、カテキン、ジヒドロフラボノール、フラボノール、プロトアントシアニジンが含まれています。このうち、果皮にはアントシアニンが多く、種子にはプロトアントシアニジン、カテキンが多く含まれています。(→赤ワインのポリフェノール
 日本の死亡原因第2位は脳血管疾患で、第3位は心臓病となっており、これらの疾病の原因は動脈硬化によって起きると考えられています。従来、動脈硬化は低密度コレステロール(LDL:一般に悪玉コレステロールと呼ばれている)の血管への付着が原因とされてきましたが、最近、LDLのみでは動脈硬化は起こらず、LDLの酸化によって動脈硬化が起こることが明らかにされています。また、血管内皮に血小板が凝集し血栓ができると、必要な血液が行き渡らなくなり、虚血性の心臓病になりやすくなると考えられます。ブドウ果汁や赤ワインによるLDL酸化阻害や血小板凝結阻害の効果が確認されています。
 ワインは古代から消毒薬として用いられ、殺菌、抗菌作用が知られていました。この効果は、ワインに含まれているアルコールだけではなく、ポリフェノール、特に没食子酸が含まれているためであることが明らかにされています。(→植物とポリフェノール
 
カテキン類は味覚を構成する成分で、味に深みを与えます。ブドウにはエピカテキンとエピカテキンガレートなどが含まれています。これらには抗酸化作用によるガンや潰瘍など活性酸素の関与の深い疾病の予防のほかに、血小板の凝集をおさえて血栓が形成されるのを防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞など循環器系の疾患の予防や、血圧上昇作用を持つ物質(アンジオテンシンU)の合成を触媒するアンジオテンシンT変換酵素の活性をおさえて、血圧の上昇を抑制する効果があります。
 またブドウにはカテキンなどの重合体であるプロトアントシアニジンを含んでいます。これはカテキンよりも強い抗酸化活性を持つため、悪玉コレステロール(LDL)の生成を抑制することにより動脈硬化の発症を抑えるなど活性酸素が関与する疾病に対する予防効果があります。さらにプロトアントシアニジンには、歯垢を形成する虫歯菌が持つ酵素(グルコシルトランスフェラーゼ)の働きを抑える抗う触作用や抗菌作用があります。カテキンやエピカテキンなどと同様にアンジオテンシンT変換酵素の活性を阻害することによる血圧上昇抑制効果もあり、その効果は重合度が増すほど強くなります。また、プロトアントシアニジンは、アレルギーにも効果があります。アレルギーは、食品中に含まれているタンパク質や花粉などを抗原と見なしてしまうことにより起こりますが、プロトアントシアニジンは、アレルギーに関わる酵素(ヒアルロニダーゼ)の活性を阻害するとともに、アレルギーの化学伝達物質であるヒスタミンの遊離を抑制します。
 カテキンやプロトアントシアニジンなどは果肉より果皮に多く含まれていますが、その差は多くても10倍程度なので食べる量を考えれば、無理に果皮を食べる必要はないと思います。
レスベラトロール
 
発ガン抑制物質であるレスベラトロールは、ブドウの葉から灰色かび病が発生したときに感染の拡大を防ぐ役割を果たすファイトアレキシンとして単離されました。レスベラトールはブドウ樹中には葉に最も多く、次いで果皮で、種子にも存在しますが、果肉中にはほとんどありません。また、赤系のブドウと白系のブドウとの間に含量の差はありませんが、ワインではレスベラトロール含量は赤ワインの方が白ワインより圧倒的に多く含まれています。

戻る