植物とポリフェノール

 植物にとってポリフェノールはその生命の維持と種の保存のためになくてはならない物質で、特に最大の敵紫外線と、虫などの外敵から身を守るのに必要不可欠な存在です。紫外線でも特に波長の短い領域のものは、細胞を破壊し、更に内部の遺伝子を傷つける恐れがあります。また、この紫外線によって発生するオゾンや活性酸素も植物の大敵です。花を守って種子を残すことは植物にとって最も大切なことと言えるでしょう。そのため花びらの表皮の細胞液にポリフェノール色素を入れて、@紫外線を反射あるいはA吸収し、またB発生した活性酸素を無力化(還元)しています。いつも太陽にさらされている草や木の葉も、葉緑素に隠れて目立ちませんが、当然ポリフェノールを蓄えていて、紫外線を防ぐとともに、虫に食べられないよう、カテキンやタンニンなど、虫が嫌う味や匂いを持っているものが多い。また、樹皮には、虫や小動物、また物理的な力で付けられた傷口を消毒しそこを塞ぐために、タンニンその他のフェノール類を分泌するものが多い。
 リンゴやブドウ、いも類などの切り口が、空気に触れると茶色になることがあります。これを専門的には褐変と読んでいます。これは植物の中のある種のポリフェノールが、酵素(ポリフェノール・オキシターゼ)の働きで、酸化を受けた上更にいくつもの分子がつながってできたものです。こうしてポリフェノールからできた物質の多くが殺菌性を持っているお陰で、傷口の殺菌、消毒ができるという仕組みになっています。

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