Traditional Folk Music
南イタリア - 2(タランテッラとピッツィカ・ピッツィカ)
- Orchestra Popolare La Notte della Taranta
- Orchestra Popolare Italiana (OPI)
- Canzoniere della Ritta e della Manca
- Uaragniaun
- e Zézi
- Officina Zoè
- Canzoniere Grecanico Salentino
- Briganti di terra d'Otranto
- Neapolis Ensemble
- Arakne Mediterranea
Orchestra Popolare La Notte della Taranta
これは常設のグループではなく、タランテッラの音楽イベント「La Notte della Taranta」のオーケストラの総称である。イベント最終日にその年のコンサート・マスターによって組織されたオーケストラがタランテッラの楽曲を演奏するといったイベントの目玉的コンサートである。このOrchestra Popolare La Notte della Taranta以外にも、多くのトラッド・グループ達が同イベントに参加して演奏を行っている。インターネットの動画サイトにはこれらのライブ映像がたくさん投稿されているので、興味のある方はご覧になることをお勧めしたい。ここ数年は期間中の観客動員数は何万人にも達しており、ロック・フェスティバルさながらに若い世代の観客が多い様に見受けられる。エウジェニオ・ベンナートがタランタ・パワーのプロジェクトに着手したのが1998年で、この音楽祭が初めて開催されたのも同じ年だ。片や個人アーティスト主導によるもの、片や自治体をも含めた地方イベントという違いはあるが、南イタリアの伝統音楽の復興という大きなムーブメントがこの10年の間にしっかりと定着したように思われる。
公式には2003年、2005年、2006年、2010年のライブがCDリリースされており、大編成のオーケストラによるタランテッラは迫力抜群。ロックやポップス的な味付けも垣間見られ、純正タランテッラに比べると幾分アップ・トゥ・デートされた感は否めないが、お祭りの締めを飾るのにふさわしい大勢の観客にアピールする演奏になっている。
Pizzicarella Alessia Tondo chiusura della Notte della taranta 2006.wmv
2006年、多分最終日のAlessia Tondoが歌う「Pizzicarella」。天才民謡少女アレッシアちゃんのハイトーン・ボイスが脳天に突き刺さります。
Orchestra Popolare Italiana (OPI)
Orchestra Popolare Italiana (O.P.I.)は、ローマのオーディトリアム音楽公園の楽団としてアンブロジオ・スパラーニャが中心になって2007年に創設された。このオーケストラは20名を超すメンバーで編成されており、カホン、チェロ、タンバリン、バグパイプ、マンドリンなどの様々な楽器によって、南イタリアの伝統音楽であるタランテッラを演奏する。2004年~2006年の3年に渡ってLa Notte della Tarantaのコンサートマスターを務めたことが影響しているのは否かは判らないが、ローマにおいてタランテッラを演奏する常設のオーケストラを組織したと言えよう。
「La chiara stella」Live at Auditorium Parco della Musica」は大編成のタランテッラを堪能できる、別企画のLa Notte della Tarantaと思って差し支えない。「Taranta D'amore」に収録されている各曲は少人数に留めた編成で、小じんまりとしているが丁寧な演奏の純正タランテッラを聴かせてくれる。
LA CHIARASTELLA di Ambrogio Sparagna
同じオーケストラ編成のタランテッラでも、現代的なお祭りであるLa Notte della Tarantaとはまた違った印象を受ける。こちらのほうがより伝統に忠実かつ端正な演奏に思える。
Canzoniere della Ritta e della Manca
地中海系のコンテンポラリー・トラッドとしては90年代のN.C.C.P.と較べても遜色のないほどの素晴らしいトラッド・グループである。伝統的なアコースティック楽器を主体とした演奏で、男女のボーカルによる南イタリアの熱いメロディーを聴かせてくれる。キーボード等のエレクトリック楽器の使用もアクセントとなっており、たおやかな抒情性のなかにも現代的なセンスがひかる音づくりである。
1994年の本アルバムしか発表していないようだが、N.C.C.P.の「Medina」や「Tzigari」が好きな人には間違いなく推薦できる作品である。
01.Mare nostrum. - canzoniere della ritta e della manca
この映像がCanzoniere della Ritta e della Manca自身のライブ映像なのか否かは不明だ。クリアな映像でごく最近の物のように思えることからも、90年代半ばにアルバム1枚を出したグループが現在も活動しているとしたら、それはそれは嬉しい限りだ。
Uaragniaun
Uaragniaunはプーリアのトラッド・グループ。民衆音楽の研究家であるMaria Moramarcoのボーカルを中心に、伝統的なアコースティック楽器によるアンサンブルが素晴らしい。古い時代の民衆歌や政治的な歌なども取り上げており、タランテッラやピッツィカなどの舞踊音楽だけではない南イタリアの伝統歌謡を聴かせてくれる。初期N.C.C.P.の様な伝統音楽の復興を、90年代以降のサウンド・プロダクションで行っていると捉える事ができ、古めかしさをあまり感じさせない現代的で完成度の高いトラッド・サウンドを聴かせてくれる。
"Oi nenna nenna" da un concerto del 1996 ad Altamura
Maria Moramarcoのよく通るボーカルが素晴らしい。
e Zézi
正式にはZezi gruppo operaio di Pomigliano d'Arcoという、ナポリ地方の古い町であるヴェスヴィオ火山に近接したポミリャーノ・ダルコ出身の、70年代から活動を続けているベテラン・グループ。非常に上手い男女のボーカリストを擁しており、初期N.C.C.P.にも通じる音楽性が感じられる。洗練されたサウンドの中にも泥臭い土着的な感覚が宿っており、また政治的なイデオロギーのある民衆歌をとりあげることもある。
è Zezi - Sant'Anastasia
古参グループだけあって、ボーカルの男性は結構な高齢に見える。
Officina Zoè
Officina Zoèは1990年代初頭にプーリア州サレント地方で結成された。彼らの音楽性は、サレント地方の古い伝統音楽のリズムであるピッツィカの再発掘が根底にあるようだ。また、トラディショナル曲を演奏するだけでなく自作曲も披露しており、90年代以降のN.C.C.P.と同様のコンテンポラリー・トラッドのグループと言えよう。彼らの活動としては、2000年に上映されたピッツィカ・ピッツィカを題材にした映画「血の記憶(Sangue Vivo)」のサントラ盤が有名である。
Don Pizzica - dal film Sangue Vivo (2000)
映画「血の記憶(Sangue Vivo)」の一場面。Officina Zoèの演奏風景も写っており、映像と相まってトランシーな恍惚感がある。
Canzoniere Grecanico Salentino
プーリア州サレント地方のバンド。結成は1975年で、プーリアでは古参のバンド。タンブレッロによるピッツィカのリズムが印象的で、アルバムによってはダニエレ・セペ等の有名ミュージシャンのゲスト参加などもあり、単なる伝統音楽の再現に留まらないコンテンポラリーな要素も持ち合わせている。
Canzoniere Grecanico Salentino - Official video
このバンドの女性ボーカルは愛らしい歌声を聞かせてくれる。
Briganti di terra d'Otranto
プーリア州サレント出身で、ピッツィカやタランテッラを主軸に自作曲も披露する。Canzoniere Grecanico Salentinoと同系統のバンドである。
"Pizzica di Carovigno" - Taranta 2011, Ballo della Pizzica
美人ダンサーの華やかさ・艶やかさを引き立てるかのように、メンバーは黒装束でバックの演奏に徹しているかのようだ。
Neapolis Ensemble
ナポリ出身のグループで、ギター&シタール&マンドリン&フルート&チェロ&パーカッション等のアコースティック編成でタランテッラを中心とした伝統音楽を演奏する。Maria Maroneの歌と踊りを中心に、中世まで遡る古楽的/伝統的な民俗舞踊を再現するグループである。
Neapolis Ensemble : Vocal Maria Marone
年齢的には決して若くないが、Maria Maroneには妖艶な魅力を感じる。
Arakne Mediterranea
大人数の踊り手を擁する、プーリア州サレント地方の民俗舞踊団。タランタ、ピッツィカ、シェルマという3つの形式による伝統音楽を得意とするようだ。
Μεσογειακοί Διάλογοι - Arakne Mediterranea 2
CDで聞く限りでは他のバンドと同じようなトラッド・グループに思えるのだが、映像で見ると古典芸能の色が濃い舞踊団だと感じる。