旅の日程
2001.7.18-22
おにようず

宇津港

見島牛

見島牛と生きる人

見蘭牛

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見島牛と生きる人

見島牛の像 "放牧場"で見島牛を見た私は、色んな疑問が浮かび、 どうしても見島牛について詳しい話を聞きたくなった。
地図を見ると"見島総合センター(ミニ博物館)"というのがあったので、 そこで何か分るのではないかと思い本村を歩いていると、船着場の近くにこんな像があった。
「見島牛産地70周年記念」と書かれていた。
「見島総合センター」に行ってみたが、そこは公民館のようなところで、 ミニ博物館がどこにあるかも分らなかった。
仕方なく宿に帰り、従業員の人に「どこか見島牛の話が聞ける所はありませんか?」と尋ねてみた。
するとおばちゃんは「だったら本村の多田さんのとこに行きなさい。」と気軽に言った。
多田さんは見島牛保存会の会長をされているということだったが、 いくらなんでも、普通のお宅に見知らぬ者が突然お邪魔していいものかと少し考えてしまった。
近くにある観音堂を見に行く道中もどうしようかと考えていたが、 ここまで来て話を聞かずに帰っては後悔すると思い、 多田さん宅に電話をしてみた。
すると、夜ならかまわないという有難いお返事。
夕食後、事情を知った民宿のおかみさんが本村まで送ってくれた。

多田さんは小柄で上品な方だった。
「私は見島牛と同い年ですから。」とおっしゃったが、何のことかと思ったら、 見島牛が天然記念物に指定された昭和3年の生まれだということだった。
突然押しかけた私に、丁寧に見島牛の現状について説明してくださり、 本当に親切な方だった。

最初に多田さんは「キララ博にみえたのではないんですか。」ととても残念そうにおっしゃった。
実は私は小郡駅に降りて、"キララ博行きバス"を見るまで、 山口で"キララ博"という博覧会が開催されていることなど全く知らなかったのだ。
多田さんたちはキララ博にも見島牛を展示していて、開会の日には会場に行かれたということだった。
去年の淡路花博では、淡路の黒牛を展示したし、 私もホームページに花博のことを書いたりしていたので、 地元の博覧会にかける意気込みはよく分ったから、多田さんには本当のことを言えなかった。

見島牛 多田さんによると、観光地図に"放牧場"と書かれていたところは、放牧場ではなく運動場なのだそうだ。
確かに、放牧場としては草が乏しく、写真の牛はこんな藪の中に分け入って木の葉まで食べていた。 牛たちはあそこに生えている草だけを食べているわけではなく、当番制で餌を与えているそうだ。
種付けをしなければならない牛を運動場に入れ、 蒔き牛(牛群に放たれた種雄牛)に自然交配で種付けをさせているそうだ。 そして、1ヶ月に1回、県の獣医が妊娠鑑定にやってくるので、 受胎している牛を牛舎に戻し、種付けを待っている牛と入れ替えるということだ。
凍結精液も保存しているので、人工授精もできるが繁用はされておらず、 基本的には自然交配なのだと言う。

見島牛は昭和3年に天然記念物に指定されたが、その当時はかなりの数の牛がいたそうだ。
見島に限らず、農業の機械化が始まる前は、牛が田を鋤いていたので牛はどこにでもいたのだが、 機械化が進むにつれ、農家の門屋から牛の姿が消えていった。
見島でも本土と同様に機械化が始まり、見島牛保存会が結成された昭和42年には、 見島牛は20頭ばかりになってしまっていたそうだ。
現在は保存会の人たちの頑張りで80頭ほどにまで増えている。
見島牛を飼う人たちの悩みは、採算がとれないことである。
100頭を越えたら、雌牛も売ってよいという約束はできているそうだが、 今のところ販売できるのは雄の子牛だけなので、単純計算しても約半分は販売ができない。
雌の親牛1頭につき、年間15万円の助成があるそうだが、 繁殖用の雌和牛の経費は年間20万円ほどかかる。 経費を15万におさめるには、草を作り、購入飼料費を極力押さえ、1年1産しなければ無理だ。
しかし見島でも、淡路と同じように、草を買い、濃厚飼料を買って牛を飼っている。
いくら見島牛が小さくて餌をたくさん食べなくても、 その分は離島への輸送経費で相殺されてしまうだろう。
牛の餌も 定期船おにようず が運んでくるが、船が立派になった分だけ輸送費が高くなったそうだ。
子牛は萩の「ミドリヤ」というお肉屋さんが買い上げて、直営牧場で肥育する。
8ヶ月齢、体重160kgくらいで出荷して1kg当たり1400円の契約だそうだ。 掛け算をすると22万4千円。これが2頭に1頭だから、 ざっと計算して、子牛1頭あたりの売上は11万2千円。助成金を加えて26万2千円。 しかしこの計算は1年1産した場合の話。見島牛は1年1産が難しい。 となると、助成金を含めた実質年間の売り上げは1頭当たり20万円強という計算になる。
それなら少なくとも赤字にはならないだろうと思うかも知れないが、 雄雌の比率は毎年半々というわけにはいかない。 雌が続いて生まれる時もあるから、それが2年も続くとお手上げだ。
「保存と利用の両立を考えなくては...」と多田さんは言う。
「天然記念物」と持ち上げられても、儲けが薄く休みのない仕事を続けていくのは大変なことだ。
これを書きながら、ふと高知の沢田さんの言葉を思い出した。
沢田さんは土佐褐毛牛を飼っている。 黒毛和種に比べると10万円安い土佐褐毛牛を飼い続けるのは「土佐のいごっそう」だからという。
心意気である。
見島の多田さんにも高知の沢田さんと同じ心意気を感じた。
近い将来、100頭を越えて雌の子牛も出荷出来るようになったら、 見島に見島牛のステーキハウスを作りたいという夢まで語っていただき、 控えめな風貌に秘められた情熱を感じた。

鬼揚子 帰りには90歳を越えるお父様お手製の見島の凧"鬼揚子"(オニヨウズ)をお土産に頂いた。 見島では男の子が生まれると、次の正月に大きな鬼揚子を揚げ成長を祈るそうだ。 これは平安時代から続いているとのこと。
見島には防人がいたらしい。ジーコンボ古墳群というのもある。
歴史のある島なのだ。