【エネルギー保存則について】
これまで位置エネルギーと運動エネルギーを個別に学習してきました.
たとえば高いところからボールが落下するとき,これら2種類のエネルギーは,
互いに無関係に増減しているように見えます.
しかしよく観察すると,2つのエネルギーの増減には規則があることに気がつきます.
この規則のことを「エネルギー保存則」と呼びます.
ではボールを
@自由落下運動 A鉛直投射運動 B水平放物運動 C斜方投射運動 と
いろいろな運動をさせながら,2種類のエネルギーの増減に
どんな規則があるのか観察して下さい.
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【考察1】左図は静止していた質量0.5[kg]のボールが,4.9[m]の高さから自由落下しているところです.
【考察2】2つのエネルギーが増減する規則を調べるために,
ボタンをクリックして,
自由落下するボールの棒グラフを観察します.
【考察3】左図は斜め上方に投げ出されたボールの様子です.
自由落下や鉛直投射運動は,ボールが直線上を動くので比較的単純な運動ですが,
斜方投射運動では,ボールの動く道筋が曲線になり,複雑な運動をしています.
注目してほしいのは,ボールの道筋が複雑になっても,エネルギー保存則が成立していることです.
ですから,下図のような不規則な曲線の斜面上を動くボールにも,エネルギー保存則が成立します.
【図1:0.0秒】
【図2:0.5秒】
【図3:1.0秒】
左図の紫色の棒グラフは,ボールの位置エネルギーEhの大きさを,
水色の棒グラフは,ボールの運動エネルギーEvの大きさを表します.
増減する2つの棒グラフを見くらべると,
【図1】0秒目のボールは高いところに静止していたので,
位置エネルギーだけがあって,
運動エネルギーはありませんでした.
【図2】自由落下し始めて,0.5秒たつとボールは,
高さが減ったので位置エネルギーが減少し,
速度が増したので運動エネルギーが増加しました.
【図3】1秒後には,ボールは地面に接触する直前になり,
高さが0[m]になったので位置エネルギーがなくなり,
速度が最大になって運動エネルギーだけになりました.
2つのエネルギーが増減する規則がわかりますか?
紫色の2本の棒グラフは,どちらも同じ大きさの位置エネルギーを
表していますが,左側の棒グラフは下辺を基点とし,
右側の棒グラフは上辺を基点として描いてあります.
【参考】紫色の棒グラフ中に描いた2つの三角形が合同なので,
2つの紫色の棒グラフが等しいことを確認して下さい.
2つのエネルギーを積み上げた,右側の棒グラフに注目すると,
2つの棒グラフの境目に空白ができないので,
位置エネルギーの減少量と,運動エネルギーが増加量が等しい
ことに気がつきます.見方を変えると,
2つのエネルギーを積み上げた棒グラフの全長が常に同じだから,
2つのエネルギーの合計(Eh+Ev)は,常に同じ値になる
ことがわかります.この性質を「エネルギー保存則」と呼びます.
自由落下運の場合だけエネルギー保存則が成立するのではなく,
他の運動でも成立することを確認して下さい.
【図4:0.4秒】
【図5:0.5秒】
【図6:0.6秒】
左図のように摩擦のない,なめらかな斜面上のA点に静止していた
ボールが,静かに動き始めました.なおA点でボールは100[J]の
位置エネルギーを持っていたとします.次の問題を考えて下さい.
【考察4】下の3つの問題を考えて下さい.