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「VLF(超長波)の受信実験」

 60Khzの標準電波の受信実験に気を良くし、更に低い周波数の受信に取り組んだ。 隠居の「軽薄短小」追求シリーズで目下挑戦中の最小受信周波数の記録更新のためである。「それで何の益があるの」と冷笑されるのだが、 全て身の回りにある物品で、自分の持てる知識と能力を発揮し、掲げた目標を達成するのは他人には理解しがたい喜びや楽しみがあるものだ。

実験用に製作したVLFコンバーターと親受信機

周波数による電波の区分
周波数範囲 波長 日本語の名称 電波法の記号
10-3Hz〜3Hz 10000km〜1000km 極極超長波 未定(ELF)
3Hz〜3kHz 1000km〜100km 極超長波 未定(ULF)
3kHz〜30kHz 100km〜10km 超長波 VLF
30kHz〜300kHz 10km〜1km 長波 LF
300kHz〜3MHz 1km〜100m 中波 MF
以下省略

 当初は40Khzの標準電波 「JJY」の受信を目標にしていた。しかし安易すぎる感じがし、 25Khzの標準電波(コールサインRAB99 )がロシヤのハバロフスクから送信されているのを知り、これの受信を目標とした。初めてVLFの世界へ足を踏み込むのだ。
 電波の周波数による区分(一部)を左に掲げた。赤字で表わした領域が今回の実験の場なのだ。こんな低い周波数の電波が果たして受信可能なのであろうか? 悪戦苦闘ながらも、何とか目的達成したので以下に報告する。音でその成果の確認も出来ます。お楽しみに!

アンテナの製作

 電磁波を電気信号に変換するのがアンテナである。色んなアンテナを思い浮かべたが迷わずバーアンテナを使うことにした。 直径10mm長さ120mmのフェライトコアーの手持ちが有った事と、LFの電波60Khzの「JJY」をバーアンテナ(購入品 )で受信した成果が生かせると考えたからである。

手巻きしたバーアンテナ

 フェライトコアーにポリウレタン線をダイレクトに巻き付けた。巻線器がないので手巻きである。いかに綺麗に巻きつけるかに神経を尖らせ、何回巻いたのかはっきりしない。線径もラジカセのデッキに使われていたプランジャーの励磁コイルを流用したので不明である。 仕方なく出来上がりを写真撮影しカウントした結果、線径0.2φの電線をを約350T巻いてあった。 問題なのはこのコイルを如何に目的の周波数に同調させるかにある。
 
VLFバーアンテナ調整・測定回路

 手持ちの信号発信機は100Khzからしか発振せず25Khzはカバーしていない。そこで、SSGの出力をTTLレベルまで引き上げ、 それを1/10分周することにした。それを右図に示す様な回路構成に結線し、Ctを変えて25Khzに同調させるのだ。 実際は仮に適当な大きさのCtをつなぎSSGの周波数を変えて同調点を見つける。それが目的周波数に対して高いか低いかでCtを変える方法である。 何回かの試行の後、Ct=8,800Pf(0.0068μ+2,000P)で25Khzに同調させることが出来た。逆算するとインダクタンスは4.6mHと言う事になる。 ついでに3db帯域幅を測定しQを算出するとQ=35.7が得られた。低い周波数であるからまずまずの値ではなかろうか。

受信方式の決定と具体化

 60KhzのJJYはストレート受信機だったので帯域が広く雑音の影響を大きく受けた。今回は周波数が低い分、 都市雑音は少ないと予測されるが信号レベルが低いのでやはり帯域は狭くしたい。幸いにしてソニーのBCLラジオICF−7600D現役復帰したのでこれを利用する事にした。このラジオ、受信周波数範囲は153Khz−29,995Khzだ。 LF帯まで目的の受信周波数をコンバート (アップバート)すれば、親受信機の持つ選択度(帯域幅)が生かせて好都合と言う訳だ。例によってブロックダイヤグラムを示しておく。
VLFコンバーター(ブロック)


 ブロックダイヤグラムに基づき具体化をすすめた。バーアンテナは既述の通りである。次いで局部発振であるが、 これにはに4.9152Mhzの水晶発振ユニットを1/16分周して307.2Khzを得る事にした。問題は局発のレベルが高い事と、矩形波であることから高調波が多く含まれ、それが影響するのではと言う心配である。結果からすると高調波は殆ど影響なく、 MIX(混合)への局発の注入レベルが重要だと判り、抵抗分割でレベルを下げ、且つ結合コンデンサーの容量を選択する方法で解決できた。
VLFコンバーター全回路(暫定)

 残るのは高周波(?)増幅とMIX(混合)回路である。右に全回路を示したのでこれを参照しながら前へ進む。
 一般にRF増幅は同調回路を使うのだが、25Khzと低いので同調コイルが大変だ。アンテナで述べた如く、数mHのコイルと.01μF程度を組み合わせて同調せねばならない。余りにも面倒なので簡単な抵抗負荷のAF増幅回路で実現させた。しかし、Gainが不足気味だったので、OPアンプを追加し、ゲイン不足を解消させた。(最初はFET−OPアンプだけの回路で実験したのだが、初段のノイズが大きく実用にならなかった。バイポーラーであればOKかもしれない)
 OPアンプのゲインは定数を選ぶだけで任意に設定できる。本実験では10db程しかゲインを得ていないがあまり欲張るとシステムが不安定になるので注意が必要のようだ。トランジスタのバイアス設定は半固定抵抗を使い、実際に電波を受信しながら最適値を選ぶようにした。この方法は思いのほか有効であった。

追記
:後日RF増幅回路を同調形に変更した。感度が大幅にUPしS/Nも改善した。新回路図はここをクリック(05/12/16)

 次にMIX回路であるがコレクター回路の負荷には455KhzのIFTを使用した。同調容量に200PFを追加すると丁度狙ったコンバーター出力f=332Khzに同調するので好都合だ。後は局発の注入レベルの最適値を求めるだけであり、回路図に示した定数で快適に動作してくれた。ここでもバイアス回路に半固定抵抗を使ったが、それほどセンシティブではない。

RFモジュール

 

 回路が決まったのであとはユニバーサル基板に全体を組み立てて行く。実験段階で使ったRF部のミニ基板はそのままモジュール化してメインボードに搭載することにした。モジュール状態のRF部を写真に示す。全体は最上部の写真の通りである。


 VLFの受信

 VLFの受信実験とタイトルは大げさだが、出来上がった受信装置(?)は玩具の範疇の代物だ。これを使っていよいよ受信実験の開始である。目標のRAB99はロシヤのハバロフスクにある。そして送信時間は 0206-0240 と限られているらしい。早速電源をいれアンテナの向きを変えて見るが何の信号も受信できない。受信周波数を低い方にずらし信号音を捕まえた。SSGを動かし周波数を確認すると22・2Khzを示す。受信音は何か変調が加えられているのはわかるのだが中身は判明しない。その後NETで調べてみるとコールサイン「JJI」のえびの高原から発信されているVLF局がある。どうやらその信号を受信しているようだがコールサインが送信されないので確認は出来なかった。しかし、目標の周波数を更に下回った信号を受信したのには間違いなく新記録を達成したのには違いはないのだが何か寂しい感じだ。(受信音はここをクリック
 RAB99を受信するのが目標だったから記録とは無関係にどうしても受信したい。翌日、改めて受信に挑戦してみるとそれらしき信号が入ってくるではないか!。実のところ1時間も時間の設定をミスしていたのだ。日本時間だと11時06分から送信されるのを10時6分からと勘違いしていたのだ。ただ当日録音は出来なかったので日を改め録音した受信音をお聞き下さい。(コールサイン受信音はここをクリック-約15秒)なお、RAB99の送信状況は次のようになっていました。

0200 無変調送信開始。0206より1分間コールサイン送信(A1-モールス)。0207より時間信号らしき物を間歇的に送信(受信音)。0220より25.1Khzにシフト。 0223より25.5Khzにシフト。 0226より信号途切れ?(追随できず 多分23.00 kHz ,20.50kHzへとシフトしたのではないか?)(05/12/07の記録)
追記 0226より20.50Khzにシフトし0240まで送信している事を確認する。終了間際には変調がかけられていた。(20.30Khzとで作られたビート音はここをクリック

 なおRAB99の送出している信号についてはこちらに詳しく解説されています。興味のある方はお訪ね下さい。

 何とか目的は達成出来た。不満な点は多々あるがVLFの世界への第一歩としては上出来のような気がしている。 次の目標を設定すべきか否か悩みながら・・・何故?ここをクリックすると無限のVLFの世界が開く・・・本レポートを完了させる。(05/12/07完)(改訂:受信音を新回路図品に変更、新回路図追加:05/12/16)

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