躾けなおされたICF-7600D

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ICF-7600DなるBCLポータブルラジオ、20年ほど前に手に入った品物である。海外の長期出張には良くお世話になったが、
いつしか電源が勝手にOFFになってしまう自由意志を持つようになって来た。特に、夏場に激しく持ち主の意思を無視し、再投入を受け付けない状態になってしまった。時計は正常に動作しているからコントロールICの不良とは思えず、暇になったら改めて躾けなおそうと思っていたのだが何時しか忘れてしまっていた。
最近、水晶発振ユニットの動作確認をする必要に迫られ、ICF-7600Dのあった事を思い出した。ガラクタの中から引っ張り出し目的を達する事は出来たのだが、敵も然る者で以前に獲得した自由意志は健在であった。躾けなおしの時が来たのである。
原因究明
当初は、回路部品の絶縁不良か半断線程度と軽く考えたのだが、それらしき部品は発見できず。躾けをやり直すには、徹底的な原因の追究が必要となってきた。セットの回路図は持ち合わせが無いのでセットを分解し、使用されているICを調べる事から開始した。
セットにはNECのuPD1706Gが使われており、同社のHPで仕様を調べたが20年も前のICの仕様は掲載されて居ない。
最近よく使っているサイトdatasheet4u.comで調べたところ同ICのPDFを発見できた。
さっそくダウンロードしセットのプリント基板と対比しながら原因究明にあたった。
ICF-7600D Main Power SWの回路

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ICF-7600DのMain Power スイッチ(セットの右上部のスライドスイッチ)はuPD1706GのピンNo.60を制御している。(左図と末尾に掲載のIC応用回路例参照) Main
SWをOFFにするとPin No.60はGroundに接地されLowレベルとなり、ラジオ動作が停止する(クロックは動作)。ONの状態にある時にはこのPinはHレベルを維持されねばならないのだが、オッシロスコープで観測するとノイズが乗っかり、えらく変動している。そしてLowレベルまで下がると同時にセットがPower
Offすることが判ってきた。
更に、回路を切り離して観測した結果、Hレベルを供給している回路には問題ないことが判明した。またPin
No.60のHレベルの時に流れる電流が大きく変動している事も判ってきた。結論から言えば、ICのスペックでは最大流入は40μAであるがそれ以上の電流が流れる場合があり、回路に入っている抵抗でドロップしHレベルを維持出来ない状態となっていたのだ。即ちIC不良との結論に到達したのである。
躾けなおし
Pull Up抵抗で躾けなおし

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本来ならICを交換すべきなのだが、同ICの入手も困難だろうし交換作業も容易ではない。何しろ64Pinのフラットパッケージを基板から取り外すのでさえ大変で、保有する道具(半田ごてのみ)での作業は不可能だ。しからばいかに躾けなおすか、シーラカンスは無理を承知の手段を使うのは毎度の事である。
同ICのPin No.58はVDD端子となっている。同端子には3Vにレギュレートされた電圧が供給されているのでここへ抵抗を介してPin60に接続しPull
Up的な使い方をしてみた。そして抵抗値を470Kohmでトライしたところ問題なく動作する事が確認できた。本来なら同端子に電圧を供給している回路を調べ供給能力をUPすべきであるが回路図が無く調べるのが面倒だったから簡便法を取った。1日以上の動作をさせているが、全ての動作が正常を維持している。
かくして躾けなおしは完了した。Topの写真で見る如く表示Display周囲の化粧パネルとアンテナの欠損していのがお判りだろうがそれ以外は元のままである。しばらくは使えそうで、久しぶりね手を焼かせただけに愛着を覚えている。参考までに、同セットの分解手順を下の写真で示しておく。(05/10/28完)
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