人事労務トピックス
人事労務トピックス :2023年
職場のハラスメント撲滅月間 (2023.12)
厚生労働省では、年末に向けて業務の繁忙等によりハラスメントが発生しやすいと考えられる12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、集中的な広報・啓発活動を実施しています。
代表的な職場のハラスメントとしては、下記の3つのハラスメントがあります。
@パワーハラスメント
職場における優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた労働者の就業環境が害される言動。
Aセクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動により、 その労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること。
Bマタニティハラスメント
上司や同僚による妊娠・出産等したことによる嫌がらせ、解雇その他の不利益取扱いの示唆など。
近年ではさらに、顧客等からの著しい迷惑行為であるカスタマーハラスメントや就職活動中やインターンシップ中の学生等に対する就活ハラスメントなど、様々なハラスメントが問題となってきています。
今月は、コロナウィルス対策による行動制限の解除後、数年ぶりに忘年会等を開催される企業もあるかと思われますが、そのような場においてもハラスメント問題が起きないよう教育や注意喚起を徹底していくことが求められます。
過労死等防止啓発月間 (2023.11)
厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、長時間労働の是正や賃金不払残業などの解消に向けた重点的な監督指導や過労死等を防止すためのシンポジウムやキャンペーンなどの取り組みを行っています。これは、「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性についての関心と理解を深めるために実施されています。特に長時間労働や過重労働について確認されるため、長時間労働が行われていると考えられる事業場等への監督が重点的に実施されることになっています。これを機に法令違反等のないように、確認をして対策を講じましょう。
<対象となる事業場等>
・長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場や各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場等
・労働基準監督署およびハローワークに寄せられた相談等から、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等
<重点的に確認する事項>
・時間外・休日労働が36協定の範囲内であるか。
・賃金不払残業が行われていないか。
・不適切な労働時間管理はないか。
・長時間労働者に対する医師による面接指導等、健康確保措置が講じられているか。
尚、 監督指導の結果、 重大・悪質な法違反が認められた場合は、書類送検や企業名等を公表するなど厳正な対応をするとのことです。
最低賃金額改定 (2023.10)
厚生労働省は、中央最低賃金審議会が示した「令和5年度地域別最低賃金額改定の目安について」を参考として、地方最低賃金審議会が答申した地域別最低賃金の改定額を取りまとめ、10月からの最低賃金額を発表しました。 この数年間で最低賃金額は大きく上昇しています。発効年月日とともに、法令違反とならないよう今一度確認しておきましょう(違反した場合は、50万円以下の罰金に処されることがあります)。
<都道府県別(関西地域)最低賃金額と発効年月日>
都道府県 | 最低賃金時間額 | 発効年月日 |
滋賀 | 967円 | 令和5年10月1日 |
京都 | 1,008円 | 令和5年10月6日 |
大阪 | 1,064円 | 令和5年10月1日 |
兵庫 | 1,001円 | 令和5年10月1日 |
奈良 | 936円 | 令和5年10月1日 |
和歌山 | 929円 | 令和5年10月1日 |
尚、地域別最低賃金は、下記の厚生労働省のホームページでも確認することができます。
<厚生労働省地域別最低賃金の全国一覧>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun
/minimumichiran/
<令和5年度 最低賃金改定の概要>
・最高額は東京都の1,113円、最低額は岩手県の893円。
・改定額の全国加重平均額は1,004円(昨年度961円) 全国加重平均額は、過去最高の引上げ。
給与計算時の留意事項 (2023.09)
毎月の給与計算で税や社会保険など誤りがあると修正手続等が煩雑になることがあります。その原因となる主な事項は以下の通りです。
<給与計算時の留意事項>
@扶養人数の反映ができていない。
子が就職した場合や配偶者の収入が増えた場合など扶養人数が変更した場合など、正しく反映させていないと所得税(配偶者控除や扶養控除額等)に影響します。
A時間外労働・休日の割増計算を誤っている。
法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超えて残業した、法定休日に働いた場合など、割増賃金を支払う必要があります。割増率は、労働日や労働時間によって異なります。給与計算の際は、労働日や労働時間(深夜等)の誤りのないように確認します。
B社会保険料の変更、控除のタイミングを誤っている。
社会保険料を控除する時期は、原則として適用月(入社等)の翌月給与からです。標準報酬決定通知書(入社・算定時)や標準報酬改定通知書(月額変更)などを確認し、社会保険料の変更・控除を正しく反映させる必要があります。
C基本給・固定手当の変更時に、残業の単価が変更されていない。
昇給等により基本給や固定手当の額を変更した際は、残業手当の単価の変更も必要となります。特に遡及して固定手当等を支給した際には、昇給月に対応した残業手当も再計算して、既に支給済の残業代との差額支給が必要になります。支給計算漏れのないよう残業代単価にも留意することが求められます。
健康保険と労災保険の給付一覧 (2023.08)
従業員が病気やケガ、出産等をした際に、健康保険と労災保険でどのような給付があるのか主な給付について一覧表にしました。いざという際に備えて、請求漏れなどがないよう、今一度確認しておきましょう。
<健康保険・労災保険の主な給付>
どんなとき | 健康保険 | 労災保険 |
病気・ケガ | 療養の給付 (原則7割給付) |
療養(補償)給付 (原則全額給付) |
病気・ケガ (会社を休業して給与がないとき) |
傷病手当金 | 休業(補償)給付 |
病気・ケガ (医療費等が高額になったとき) |
高額療養費 | − |
障害 | − | 障害(補償)給付 |
出産 (会社を休業して給与がないとき) |
出産手当金 | − |
出産 | 出産育児一時金 | − |
死亡 | 埋葬料(費) | 葬祭料(葬祭給付) 遺族(補償)給付 |
上記以外にもさまざまな健康保険給付があります。詳細等につきましては、下記の全国健康保険協会(協会けんぽ)及び厚生労働省のホームページをご参照ください。
・https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/ (協会けんぽ)
・https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/
roudoukijun/gyousei/rousai/index.htm (厚生労働省)
算定基礎届(在宅勤務時の一時的な交通費の取扱い) (2023.07)
今月は、社会保険料の算定ベースとなる標準報酬月額を決定する「算定基礎届」の手続が必要です。この算定基礎届は、従業員の4月から6月の報酬(給与等)を届出するもので、原則として7月10日迄に日本年金機構(事務センター)に提出します。
コロナ禍により在宅勤務(テレワーク)等を導入した企業が増えましたが、この在宅勤務中に、従業員が一時的に出社する場合など、その交通費について、算定基礎届の「報酬等」に含めるか否か判断に迷うことがあります。そこで、在宅勤務時の一時的な交通費の取扱いについて下記にご紹介いたします。
<在宅勤務時の一時的な交通費の取扱い>
基本的に、労働契約上の勤務場所が自宅か事業所(会社)等かによって取り扱いが異なります。
@労働契約上の勤務場所が自宅の場合
その労働日の勤務場所は自宅であるが、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、原則として実費弁償と認められ「報酬等」には含まれない。
A労働契約上の勤務場所が事業所(会社)等とされている場合
その労働日は事業所勤務であり、自宅から事業所等に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。
労働保険年度更新の留意点 (2023.06)
労働者を雇用する企業は、労働保険の概算保険料を納付するための申告・納付と前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付の手続が必要となります。これを「年度更新」といい、原則として毎年6月1日〜7月10日に申告・納付します。
本年の「年度更新」手続は、令和4年度分の雇用保険率が年度の途中で変更になったことに伴い、令和4年度分の確定保険料の算定方法が、例年とは異なっておりますので、以下の点にご留意ください。
<留意点>
令和4年度確定保険料は、保険料算定基礎額と保険料額を労災保険分と雇用保険分ごとに、前期(令和4年4月1日〜同年9月30日)と後期(令和4年10月1日〜令和5年3月31日)に分けて算出する必要があります。これに伴い、年度更新申告書と確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表の様式が変更されています。
具体的には、次の手順で算定します。
@「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」に賃金の総額を記入し、前期・後期別に集計し
ます。
A「確定保険料一般拠出金算定基礎賃金集計表」の下段に新規に設けた「令和4年度確定保険料
算定内訳」欄を使用し、保険料算定基礎額と保険料額を前期・後期別に算出します。
B Aで算出した保険料算定基礎額と保険料額を、年度更新申告書の下段に新規に設けた「期間
別確定保険料算定内訳」欄及び申告書中段の「確定保険料算定内訳」欄に各々転記します。
新型コロナウイルス感染症の療養期間等の考え方 (2023.05)
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが、令和5年5月8日以降変更(2類相当から5類感染症へ引下げ)されることに伴い、療養期間(外出自粛)や濃厚接触者等の考え方について、下記の通り発表しました。
<新型コロナウイルスに感染した場合の外出自粛期間について>
令和5年5月8日以降、新型コロナ患者に対して法律に基づく外出自粛は求められず、個人の判断
に委ねられます。ただし、発症後の一定期間については、下記のような対応を推奨しています。
・特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことから、発症日を0日目として、5日間
は外出を控える。
・5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して 24時
間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見る。
・10日間が経過するまでは、ウィルス排出の可能性があるため、不織布マスクを着用したり、
高齢者等ハイリスク者と接触は控える等、周りの方へうつさないよう配慮する。
<「濃厚接触者」の取扱いについて>
一般に保健所から新型コロナ患者の「濃厚接触者」として特定されることはありません。また、「濃厚接触者」として法律に基づく外出自粛も求められることはありません。
詳しくは、下記の厚生労働省ホームページをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001087453.pdf (厚生労働省HP)
マスク着用の考え方 (2023.04)
これまで厚生労働省では、新型コロナウィルス対策のマスク着用の考え方について、屋外では原則不要、屋内では原則着用することを推奨してきました。しかし、令和5年3月13日以降の考え方について、見直しを行いました。同日(令和5年3月13日)以降は個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることを基本とすることとしました。また、本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう配慮するように呼び掛けています。
ただし、以下のような場面においては、引き続きマスクの着用を推奨しています。
・医療機関を受診する時。
・高齢者など重症化リスクの高い方が多く入院・生活する医療機関や高齢者施設などへ訪問
する時。
・通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバスに乗車する時。ただし、概ね全員の着席が可能
であるもの(新幹線、通勤ライナー、高速バス、貸切バス等)を除く。
・新型コロナウイルス感染症の流行期に重症化リスクの高い方(高齢者、、基礎疾患を有す
る方、妊婦など)が混雑した場所に行く時。
マスク着用の考え方について、詳しくは、下記の厚生労働省ホームページをご覧ください。
<令和5年3月13日 マスクの着用について>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00001.html
時間外労働の割増賃金率変更(令和5年4月1日から) (2023.03)
これまで時間外労働の割増賃金率について、大企業では月60時間を超える時間外労働に対して50%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられていましたが、中小企業については適用猶予措置がとられてきました。令和5年4月1日からは、中小企業についての猶予措置がなくなり、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、25%から50%以上に引き上げられることになります。割増賃金率変更についての概要と留意点について、下記の通りご案内いたします。
<割増賃金率>
− | 令和5年 3月31日まで (改正前) |
令和5年 3月31日まで (改正前) |
令和5年 4月1日から (改正後) |
令和5年 4月1日から (改正後) |
時間外労働 | 60時間以下 | 60時間超 | 60時間以下 | 60時間超 |
大企業 | 25% | 50% | 25% | 50% |
中小企業 | 25% | 25% | 25% | 50% |
<留意点>
・割増賃金率の変更に伴い、就業規則・賃金規程等の改定が必要となります。
・月60時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、引き上げ分の割増賃金支払の代わりに代替休暇(有給の休暇)を付与することが認められています。ただし、労使協定を締結するなどの要件があります。詳しくは下記の厚生労働省ホームページをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/091214-1_03.pdf
休業関係助成金の縮小及び終了(厚生労働省) (2023.02)
厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症対策として支給していた、次の助成金(雇用調整助成金、緊急雇用安定助成金、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金)の縮小及び終了を発表しました。
1.雇用調整助成金(縮小)
売上高等が減少した企業等が、労働者を休業させた場合などに休業手当の一部を助成する助成金です。売上高等が30%以上減少している特に業況が厳しい事業主に適用されていた特例措置等(支給上限額9,000円)が1月末をもって終了しました。原則的な措置(支給上限額8,355円)は継続しています。
2.緊急雇用安定助成金(終了予定)
売上高等が減少した企業等が、雇用保険被保険者でない労働者を休業させた場合などに休業手当の一部を助成する助成金です。令和5年3月末までの休業をもって終了する予定です。
3.新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(終了予定)
新型コロナウイルス感染症の影響により休業した労働者のうち、休業中に休業手当を受けることができなかった者に対し支給されるものです。令和5年3月末までの休業をもって終了する予定です。
詳しくは、下記の厚生労働省ホームページをご覧ください。
・https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/001006066.pdf(雇用調整助成金)
・https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001030562.pdf(緊急雇用安定助成金)
・https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001032016.pdf(新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金)
協会けんぽの申請様式変更(令和5年1月から) (2023.01)
従業員が高額医療にかかった場合や出産した際には、「高額療養費支給申請書」や「出産育児一時金支給申請書」等、協会けんぽが指定する申請様式を使用して給付を受ける必要があります。
この協会けんぽが定める各種申請書の様式について、令和5年1月から変更されることになりました。様式を変更する主な申請書は以下の通りです。
尚、令和5年1月以降も旧様式を使用することはできますが、この場合は事務処理等に時間を要することがあるとのことです。
<健康保険給付関係>
・傷病手当金支給申請書 ・出産手当金支給申請書
・療養費支給申請書(立替払等) ・出産育児一時金支給申請書
・療養費支給申請書(治療用装具) ・出産育児一時金内払金支払依頼書
・限度額適用・標準負担額減額認定申請書 ・埋葬料(費)支給申請書
・高額療養費支給申請書 ・特定疾病療養受療証交付申請書
<任意継続関係>
・任意継続被保険者資格取得申出書 ・任意継続被保険者資格喪失申出書
・任意継続被保険者被扶養者(異動)届 ・任意継続被保険者氏名 生年月日 性別 住所 電話番号変更(訂正)届
<被保険者証等再交付関係>
・被保険者証再交付申請書 ・高齢受給者証再交付申請書
人事労務に関するトピックスを掲載しています。 (おそど社会保険労務士事務所)
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