人事労務トピックス
人事労務トピックス :2021年
労働者名簿と賃金台帳の整備 (2021.12)
企業が労働者を雇い入れ、給与等を支払う際には、労働基準法(第107条・108条)の定めにより、労働者名簿と賃金台帳を作成する義務があります。これらの帳簿は労働基準監督署等の調査でも、内容を確認され提出等を求められることが多いため、日頃から整備しておくことが求められます。特に労働基準法施行規則によって、記載しなければならない事項が決まっていますので、記載項目に漏れなどないか確認しておきましょう。
<労働者名簿の記載事項>
@ 氏名 A 生年月日 B 履歴 C 性別 D 住所 E 従事する業務の種類 (常時30人未満の事業場では不要) F 雇入れの年月日 G 退職の年月日及びその事由 (退職の事由が解雇の場合はその理由) H 死亡の年月日及びその原因
<賃金台帳の記載事項>
@ 氏名 A 性別 B 賃金計算期間 C 労働日数 D 労働時間数 E 時間外、休日労働時間数及び深夜労働の時間数 F 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額 G 賃金控除の額
上記の記載項目を満たしていれば、特に様式については問われません。例えば賃金台帳と労働者名簿を合わせて作成したり、源泉徴収簿等を合わせて調製しても問題はありません。いずれの帳簿も3年間(労働基準法改正により5年間保存になりましたが、経過措置により当面の間は3年間)の保存義務があります。また、電子データで記録・保存することができますが、労働基準監督官から求められたときは、すぐに提示等できるようにしておく必要があります。
人材開発支援助成金(一般訓練コース)の活用について (2021.11)
人材開発支援助成金(一般訓練コース)は、雇用保険被保険者(有期契約労働者などを除く)に対して職務に関連した専門的な知識および技能の習得を目的として、計画に沿って訓練を実施した場合に 訓練中の賃金と訓練にかかった経費の一部を助成する制度です。その概要について以下に紹介いたします。
<主な支給要件>
・ 職務に関連した知識・技能を習得させるため20時間以上のOFF-JT訓練を行うこと
・ 雇用保険適用事業所であること
・ 職業能力開発推進者を選任し、事業内職業能力開発計画および年間職業能力開発計画を策定し、従業員に周知していること
・ 訓練期間中の訓練受講者に対する賃金を適正に支払っていること
・ 支給申請までに訓練にかかった経費をすべて負担していること
・ 対象となる実訓練時間のうち8割以上受講すること など
<支給額>
賃金助成:1人1時間当たり380円(生産性要件を満たす場合は480円)
経費助成:対象経費の30%(生産性要件を満たす場合は45%)
(訓練時間等により支給上限額があります。)
<申請・問い合わせ先>
各都道府県労働局又はハローワーク
最低賃金額改定 (2021.10)
厚生労働省は、中央最低賃金審議会が示した「令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について」を参考として、地方最低賃金審議会が答申した地域別最低賃金の改定額を取りまとめ10月からの最低賃金額を発表しました。
この数年で最低賃金額も大きく上昇しています。発効年月日とともに、法令違反とならないよう今一度確認しておきましょう。
<都道府県別(関西地域)最低賃金額と発効年月日>
都道府県 | 最低賃金時間額 | 発効年月日 |
滋賀 | 896円 | 令和3年10月1日 |
京都 | 937円 | 令和3年10月1日 |
大阪 | 992円 | 令和3年10月1日 |
兵庫 | 928円 | 令和3年10月1日 |
奈良 | 866円 | 令和3年10月1日 |
和歌山 | 859円 | 令和3年10月1日 |
尚、地域別最低賃金は、下記の厚生労働省のホームページでも確認することができます。
<厚生労働省地域別最低賃金の全国一覧>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun
/minimumichiran/
<令和3年度 最低賃金改定の概要>
・最高額は東京都の1,041円、最低額は高知県と沖縄県の820円
・改定額の全国加重平均額は930円(昨年度902円) 全国加重平均額28円の引上げは、過去最高
雇用調整助成金特例措置が延長されます(令和3年11月末まで) (2021.09)
昨年から多くの企業で利用されている助成金として、雇用調整助成金というものがあります。この助成金は、売上高等が減少した企業等が、労働者を休業させた場合などに休業手当の一部を助成すものです。さらに新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業では、雇用調整助成金の特例措置として、さまざまな要件が緩和されています。 厚生労働省は、この雇用調整助成金の特例措置について、9月末までとされていた助成内容を、11月末まで延長すると発表しました。(尚、令和3年12月以降については、雇用情勢を見極め、改めて10月頃にお知らせするとのことです。) そこで今一度、この雇用調整助成金特例措置の概要について紹介いたします。
<雇用調整助成金特例措置の概要>
・売上高または生産量などの事業活動を示す指標の最近1か月間(休業を開始した月)の値が1年前の同じ月に比べ5%以上減少している。
・支給申請時、支給決定時に雇用保険適用事業主であること(雇用保険被保険者を1人以上雇用する事業所)。
・休業期間中の休業手当を、労働基準法第26条に定める額(平均賃金の6割)以上支給している。
・助成率は、原則として、中小企業で4/5、大企業で2/3 (緊急事態宣言やまん延防止措置対象地域かどうかなど各企業の事情等で異なります)。
・1人1日当たりの上限額は、判定基礎期間の初日が令和3年5月1日から13,500円また、令和3年4月30日以前の場合は15,000円。(緊急事態宣言やまん延防止措置対象地域かどうかなど各企業の事情等で異なります)。
・支給限度日数は、1年間で100日分、3年で150日分です。ただし、緊急事態宣言などの対応期間中に実施した休業は、この支給限度日数には含めません。
出産に関する給付(出産育児一時金) (2021.08)
出産にかかる医療費等は、ケガや病気の場合のような保険が使えないため、一般的に高額となります。その高額な経済的負担を軽減するため、申請により健康保険から受けることができる給付「出産育児一時金」がありますので、その概要(要件・申請方法等)について紹介いたします。
<支給要件>
健康保険の被保険者又は被扶養者が、妊娠 4 か月(85日)以上の出産をしたこと。
(なお妊娠 4 か月(85日)以上であれば、早産、死産、流産等の場合でも支給されます。)
<支給額>
1 児につき42万円
(ただし、産科医療補償制度に未加入の医療機関等での出産の場合は、
1 児につき 40万円4千円)
<申請方法>
「健康保険出産育児一時金支給申請書」に、医師・市区町村等の証明を記入して、管轄の全国健康保険協会等に提出します。
<直接支払制度>
出産育児一時金は、出産後の申請により支給されるのが原則ですが、「直接支払制度」を利用すると便利です。直接支払制度とは、健康保険から医療機関へ出産育児一時金の支払いを直接行う制度です。この制度を利用することで出産前に多額の現金を用意する必要がないというメリットがあります。
直接支払制度の利用には、病院から提示される「直接支払制度合意書」へ必要事項を記入することが必要です。この制度を希望される際は、利用される医療機関等へお問い合わせください。
「振替休日」と「代休」の違い (2021.07)
休日出勤をした際に、「振替休日」や「代休」を取得されることがあると思いますが、その違いについて区別することなく残業代の計算などで誤っているところが見受けられます。そこで「振替休日」と「代休」の違いについて以下に解説いたします。
「振替休日」は、 休日と労働日を、あらかじめ(事前に)振り替えておくことをいいます。この場合、もともとの休日に出勤しても、既に休日と労働日が入れ替わっているため、休日出勤扱いにはなりません。そのため原則として(※)割増賃金が発生することはありません。
また、振替休日制度を導入する場合には、以下の要件を満たす必要があります。
@ 就業規則に振替制度を規定する
A 4週間につき4日の休日を確保する
B 遅くとも前日までに本人に予告する
それに対して、緊急事態の対応時のように休日出勤をしてもらった後、その代わり(事後)に休日を与えることを「代休」といいます。 この場合、事前に休日と労働日が入れ変わっていないので、休日出勤扱いのままとなります。そのため割増賃金(法定休日の場合は3割5分増、法定外休日の場合、2割5分増)の支払いが必要となります。
※「振替休日」であっても、振替により労働した日がある週の労働時間が、1週間の法定労働時間(40時間)を超えるときは、その超えた時間について、週の法定時間外労働に対する割増賃金の支払が必要となるので注意が必要です。
労働保険年度更新・社会保険算定基礎届のFAQ (2021.06)
今月から来月(7月12日まで)にかけて、労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届の手続が必要な時期となりました。そこで、これら届出に関するFAQを紹介させていただきます。
<労働保険年度更新>
Q. 一般拠出金とは何でしょうか? また、この一般拠出金の保険料を計算したら、少数点以下が発生しました。この小数点以下の端数はどう処理すればよいでしょうか?
A. 一般拠出金は、石綿(アスベスト) 健康被害者の救済費用に充てるため、全ての事業場で負担する拠出金(保険料)です。この一般拠出金に小数点以下の端数が発生した場合は、切り捨ての処理をします。ただし、労災保険と雇用保険の算定基礎額が同額の場合は、別々に計算して切り捨てるのではなく、両保険の算定基礎額の合計を両保険の料率の合計に乗じ、その後に切り捨て処理をします。
<社会保険算定基礎届>
Q. 病気やケガのため休職し、給与の支払いがない被保険者についても、算定基礎届の提出が必要でしょうか?
A. 病気休職等により、算定基礎届の対象となる 4 月、5 月、6 月の各月とも報酬の支払いがない場合も、算定基礎届の提出は必要です。 その場合は、算定基礎届の備考欄「病休・育休・休職等」を〇で囲み、「〇月〇日から休職」などと記載します。
テレワーク(在宅勤務)中の労災適用 (2021.05)
最近、新型コロナウィルス感染防止対策として、テレワーク(在宅勤務等)を導入する企業が増えています。テレワークを導入した際に、従業員などからテレワーク中の事故等で負傷した場合に、労災(労働者災害補償)保険は適用されるかという質問を受けることもあるかと思います。そこで、テレワーク中に労災が認められるための要件等について紹介させていただきます。
原則として、テレワークを行っている従業員についても、一定の要件を満たすことで通常の労働者と同様に労災の適用を受けることができます。厚生労働省も、テレワークで労災が認定された事例として以下のケースをあげています。
<労災が認められる事例>
自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くため作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した。
ただし、労災と認定されるには、業務起因性(業務と傷病等の間に因果関係がある)と業務遂行性(会社の指示や支配下にある状態)が必要となります。そのため、私的行為または業務を逸脱する恣意的行為を行ったこと等による傷病等については、労災は認められません。例えば、個人的な掃除や洗濯をしていた場合や休憩時間に子供と遊んでいた際のケガについては、私的行為に当たるため、労災は適用されません。
なお、自宅以外で行うモバイルワークやサテライトオフィスへの通勤でも、住居と就業の場所の往復を合理的な経路及び方法で行うことによって被ったケガ等は、通勤災害の対象とされています。
同一労働同一賃金 (2021.04)
令和3年4月1日より、いわゆる「同一労働同一賃金」への対応を求めた、改正パートタイム・有期雇用労働法が中小企業にも適用されることになりました。この法律は、正社員と非正規社員(短時間労働者・有期雇用労働者)との間の不合理な待遇の格差を禁止するもので、その概要は以下の通りとなります。
1. 不合理な待遇差の禁止
同一企業内において、通常の労働者(正社員等)とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、 基本給や賞与などの待遇(福利厚生や教育訓練等も含む)について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。なお、厚生労働省では、原則となる考え方や具体例について「同一賃金同一賃金ガイドライン」で示しています。
厚生労働省HP (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html)
2. 労働者に対する待遇に関する説明義務
パートタイム労働者・有期雇用労働者から「通常の労働者(正社員等)との待遇差の内容や理由」などについて説明を求められた場合は、説明をする義務があります。また、待遇差の説明を求めた労働者への不利益な取扱いは禁止されています。
3. 裁判外紛争解決手続(行政ADR) の整備
都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続(行政ADR)が行われます。 「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象となります。また、事業主側からも行政ADRの利用を求めることができます。
新型コロナ関連の支援策 (2021.03)
緊急事態宣言の解除などの影響で、政府による支援策(補助金・助成金・融資など)が、現在どのようになっているかについて、以下にまとめました。
尚、各補助金などの詳細につきましては、経済産業省HP掲載の「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」リーフレットをご参照ください。
「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」 → https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
(1)雇用調整助成金
売上高等が減少した企業等が、労働者を休業させた場合などに、休業手当等の全部又は一部を支給する特例措置は、当初は令和3年2月28日まででしたが、令和3年4月30日まで延長されました。
(2)小学校休業対応助成金・支援金
臨時休業した小学校等に通う子どもの保護者に対して、労基法上の年次有給休暇とは別に、有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた企業や契約した仕事ができなくなった個人事業主に支給される制度の申請期限は、令和2年10月1日から同年12月31日までの休暇取得分については、令和3年3月31日まで、令和3年1月1日から同年3月31日までの休暇取得分については、令和3年6月30日までとなります。
36協定届の様式変更(2021年4月1日より) (2021.02)
会社は、法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合に、従業員の過半数を代表する者(労働組合等)と書面により協定を締結し労働基準監督署に届出なければなりません。この届出を36(サブロク)協定届(時間外・休日労働に関する協定届)といいます。 36協定は有効期間を定めることになっていますが、有効期間を1年間として、年度計画などに合わせて4月に届け出をされるケースが多いのではないでしょうか。その様式が以下の点で、2021年4月1日より変更されることになりました。
厚生労働省HP「36協定が新しくなります」 (https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf)
<変更点>
@押印・署名の廃止
労働基準監督署に届け出る36協定届についての使用者の押印及び署名の省略。
A協定当事者に関するチェックボックスの新設
労働者代表についてチェックボックス(投票や挙手など適正に労働者代表が選任されているかなどを確認するためのチェックボックス)が新設されました。
労働基準法改正(賃金請求権の消滅時効延長等) (2021.01)
労働基準法の改正により、令和2年4月1日以降に支払われる賃金請求権の消滅時効が従来の2年から5年に延長され、それに伴い賃金台帳などの記録の保存期間も延長されました(ただし、当分の間は3年とされています)。改正の概要と保存期間延長の対象書類は下記の通りとなります。法令違反とならないよう今一度確認しておきましょう。
<改正の概要>
1. 賃金請求権の消滅時効期間の延長
・賃金請求権の消滅時効期間を5年に延長(当分の間は3年)。
ただし、退職手当の請求権の消滅時効期間(5年)、災害補償(2年)、年次有給休暇の請求
権の消滅時効期間(2年)は、改正前と変更ありません。
2. 賃金台帳などの記録の保存期間の延長
・賃金台帳などの記録の保存期間を5年に延長(当分の間は3年)。
<保存期間延長の対象となるもの>
@ 労働者名簿
A 賃金台帳
B 雇入れに関する書類(雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、 履歴書など )
C 解雇に関する書類(解雇決定関係書類、 予告手当または退職手当の領収書など)
D 災害補償に関する書類(診断書、補償の支払、領収関係書類など)
E 賃金に関する書類(賃金決定関係書類、昇給減給関係書類など)
F その他の労働関係に関する重要な書類(出勤簿、タイムカードの記録、労使協定の協定
書、各種許認可書、 始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類、退職関係書類など)
G 労働基準法施行規則・労働時間等設定改善法施行規則で保存期間が定められている記録
人事労務に関するトピックスを掲載しています。 (おそど社会保険労務士事務所)
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