宋学
岡倉天心と道教
 

下士聞道
 
三教総合
 
養生術
 
九鬼周造とハイデガー
 
ハイデガーの秘密
 
 虚舟のオブジェ 
 
随風館
H O M E
 
 

岡倉天心 
 北京・白雲観にて 
 
 
中国の 新儒教 なるものは、
後に宋朝(960-1280)の下に成熟を見たもので、
道教、仏教および儒教の思想を融合したものではあるが、
しかし、これらすべての思想体系に同時に従いながら
宇宙をあらわす単一の図表を作った
唐末の道教哲学者
陳摶(ちんたん) に見るごとく、
主として道教的精神によって活動したものであった。
 
われわれは、いまや、宇宙の二つの原理、
すなわち陰と陽についての新しい解釈、
すなわち単独で働くものとしての陰にはじめて重点のおかれた解釈、
にめぐり逢うのである。
 
これはシャクティ(* Sakti)の概念に対応するもので、
新儒教の思想家たちによって、かれらの
理気の説
すなわち、遍在する法と活動する精神の説、
として発展せしめられたものである。
 
かくして、シャンカラーチャーリヤ以降アジアの全哲学は、
常に宇宙の原動力に眼を向けているのである。
『東洋の理想』(講談社学術文庫)、1986、p.148
 
* シャクティ( Sakti ,女性の側にある神秘的ないしは聖なるエネルギー)
cf. ジョゼフ・ニーダム  『中国の科学と文明』、第3巻、思想史[下]思索社、p.471-474、1991