最近、ひょんなことから中古Ni-Cd電池を大量に入手した。12V 2000mAh、900mAhのパックおよび24V 2000mAhの3種類である。
中には使用不可能のパックもあったが、分解して電池ユニットを選別し、6Vのパックを再製作し充分実用になる事が判明した。
これは専らソニーのポータブルラジオICF-7600用電源として使用中なのだが、充電器の手持ちがなくDC電源で充電状態を監視しながら充電していた。
あまりにも不便なので専用充電器の製作に挑戦した。
Ni-Cd 電池パック
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1 定電流充電方式
正直なところ、電池に関する知識は皆無に近い。知らぬ間に電池は随分と進化し種類も豊富である。
Ni-Cdにはメモリー効果があるとか、過充電は致命的なダメージを与えるとかいろいろ制約条件のあることを知った。
しかし難しく考えるのは止めにして確実で簡便な方式を選ぶことにし、定電流充電方式で製作することにした。
電池は充電が進むにつれ電圧は高くなる。一般にそれに伴って電流は減少するのだが、定電流方式はそれが一定である方式である。
実現する簡単な方法は電圧を充分に高くし高抵抗で接続すればよい。しかし、抵抗でのロスが発生する事と、高電圧を作り出す事が簡単ではないから実用的ではない。
何かよい方法は無いかと思っていたところ、ジャンクの電源ボードに使われていた降圧型スイッチングレギュレーターが使えそうなのでさっそく調べてみた。
ジャンクのボードに使われていたのは National Semiconductor社の電圧可変型スイッチングレギュレーター LM2576-ADJである。
ブロック図をFig.1に示す。 (同社の資料よりコピー)
Fig.1 LM2576 ブロック図
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Fig.1で、Feed−Back端子Cは出力Voutに接続されている。
これをLOADとグラウンドの間に抵抗(Rd)を挿入しその接続点と端子Cを結んでやると、
抵抗Rdの両端に発生する電圧を一定になるようシステムは動作する。LOADをNi−Cd電池とすれば、
電池に流れる充電電流によりRdに発生する電圧が一定に保たれることになる。すなわち定電流充電が実現できると考えたのだ。
Fig.2 定電流充電実験回路
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実験したの回路をFig.2に示す。LM2576T−ADJではブロック図内に示されているR1はOpen,R2は0Ωとなっているので、
Rdに加わる電圧は基準電圧の1.23Vと同じとなるよう制御される。
仮に、RD=10Ωとすれば0.123Aの電流が流れるよう制御される。即ち123mAの定電流充電が実現できるわけだ。
電池の電圧を(Vb)、レギュレーターICの電圧降下を(Vd)、DC Inputの電圧を(Vs)とすれば
Vs=Vb+Vd
の関係が成立するまで充電されることになる。その間の充電電流は一定で、値はRdにより決まる。この事は、電池の容量から最適な充電電流を求め、
その値が得られる抵抗Rdの値を選択することで目的は達せられるのだ。
2.電圧検出と制御方式
過充電から電池を守るためには、電池の電圧が上限に達した時に充電が停止するように回路を作っておけばよい。
問題は電圧を検出する回路とその結果で充電を停止させる回路の実現方法である。Fig.2で見るように充電電流を制御するため、
Rdなる抵抗が使われているためいささか厄介なのだ。
Fig.3 電圧検出回路
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厄介な問題を解決する方法としてフォトカップラーを使う事にした。カップラーを使えば、単純に電池の両端の電圧を検出し、
その値が所定値になればLEDに電流を流し、その光でトランジスタを制御することが出来る。Rdの値がいくらであっても、
電流がいくらであっても全く関係なくなるため自由度が大幅にふえるのだ。Fig.3にその回路を示す。
製作しようとしている充電器は12Vと6Vの両用である。従って検出回路もスイッチで切り替えるようにした。動作は単純で
、トランジスタのVbeとツエナーダイオードの電圧の和を越す電圧が加わるとトランジスターがオンとなり、
フォトカップラーPS2701に電流が流れそのトランジスターがオンとなるのだ。検出電圧の微調整のために半固定抵抗を使うのは当然の考え方であろう。
3.全回路と製作
以上の要素回路と、その結果で充電のON−OFFをする回路を組み合わせ、Fig.4に示した全回路を完成させた。
スタートSWをONにするとリレーに電流が流れ、トランジスターによりONが持続される。充電が進み、設定した電圧に達するとフォトカップラーがONとなり、
リレー制御トランジスターのバイアスがカットされOFFとなり充電終了となる。そのほかに、強制的に充電を終了させるスイッチを設けておいた。
Fig.4 Ni−Cd 充電器 回路図

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製作はこれもありあわせのユニバーサル基板と、ジャンクのボード(多層基板の立派?な代物)から必要な部分を切り出して利用する方法をとった。
Fig.5に夫々の写真を示しておく。
Fig.5 各ブロックの写真
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定電流充電部 |
制御回路部(表) |
制御回路部(裏) |
DC/DCコンバーター |
電流検出抵抗Rdには6オームを使い、充電電流を約200mAとした。これは対象としているNi−Cd電池の容量が2000mAHなので、
0.1Cに相当する事になる。充電完了までの時間は10時間以上必要となるが、電池の寿命を考えると適当な値のように思っている。
一方、充電完了は電圧検出で行っているで、その電圧を6V用パックでは7.4V、12Vパックでは14.8Vに設定した。
100%充電とはならないようであるが、ありあわせの部品で製作した充電器であるからやむを得ないと慰めている。
最後の課題が充電用の電源である。AC100vの商用電源で動く24VDC電源の手持ちはあるのだが余りにも芸が無い。
ごそごそしている内にDC/DCコンバーターを搭載してあるジャンクボードが手に入った。
COSELの12V入力、出力が±12Vの「ZW10ー1212」だ。これは450mAの電流が得られるオンボードタイプの製品で、
単純に入出力の配線をするだけで簡単に目的が達せられる。
わが家には100W出力の太陽光発電パネルが一枚だけ稼動している。
これで、12Vの鉛蓄電池に充電し、インバーターで100Vに変換して使っている。今回は、12VDC出力を直接DC/DCコンバーターに加え24Vに昇圧し、
製作した充電回路に加えて理想のエコロジー充電システムを完成させた。強いて言えば、立派なケースに入れ、
動作状態を示すメーターやLED等をつけてやれば見栄えの素晴らしい製品になるのだが、エコロジー重視の立場から、そのような無駄は全て省いて、
機能のみに重点を置くことし完了とする。(05/6/27完)
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万歩計を改造した 精米度数計
精米カウンター

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一升瓶に玄米を入れ、棒で搗いて精米する戦後の貧困時代の方法をやってみた。結果が得られるのは経験済みなので、
どうせやるなら回数と精米状態を記録に留めたいと思い、搗く回数を記録する事にした。頭で数え、
100回毎に「正」を書く方法でで記録してもよいのだがそれも面倒なのでストロークカウンター(度数計)を製作することにした。
目的達成プロセスの「軽薄短小」が信条であり、最近政府も力を入れだした3R(reduce/reuse/recycle)を尊重し、使っていない万歩計を活用する事にした。
この万歩計、100円ショップで入手したものの精度が悪いため放置されていた物である。カウント数はそれでも「9万9千9百9十9回」まで液晶表示され、
リセットボタンもついているので目的にぴったりである。
度数計への改造
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万歩計の内部 |
リード線を引き出す |
一升瓶にリードスイッチを取り付 |
出来上がり |
改造は極めて簡単である。要点を記すと次の通り。
@万歩計の裏蓋を取り外し歩数をカウントする稼動片スイッチにパラレルにリード線を引き出す。
(稼動片は動かないようにテープで貼り付ける。・・・写真は省略)
Aリード線をリードスイッチに接続
Bリードスイッチを瓶の入り口付近に取り付け
C搗棒にマグネットを取り付ける。(リードスイッチが作動する位置に調整する)
(注:リードスイッチは磁力の有無でON・OFFするスイッチ)
搗き棒は南天の幹を使用した。庭で大きくなり邪魔になったので間引きし乾燥させたものである。
お箸に使うことがある素材だから搗き棒にはもってこいの材料であった。
玄米を入れ実際に搗くと、正しくカウントしてくれた。但しストロークが不足するとノーカウントとなるので、
最後まできっちりと搗くことが肝要である。チャッタリングによる誤動作は発生していない。欲を言うならば、
カウントした時に音を発してくれると更によいと思ったがそこまでやる必要もなさそうだ。(何回こんな方法で精米する?)
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1.5Vで動作する LED点灯回路
電池1個で点灯する高輝度LED
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高輝度LEDが手に入った。「ガーデニング用のソーラー電池照明器具が故障した」といって持ち込まれたのだが、発電パネルは取り除かれた残骸である。
中身を調べると全て健在で、冬場になって日照時間が少なくなり充電不足になったためだと推察される。
それはさておき、使われているLEDは従来のLEDとは比べ物にならないほど明るい。その明るさに魅せられまたまた悪戯心が目を覚ました。
通常高輝度LEDを点灯するには3V以上の電圧、即ち乾電池なら2個必要とする。それが1個の電池で点灯出来れば面白いし応用範囲も広がると言うものだ。
左の写真は試作点灯回路をNi-Cd電池1個で動作させたものである。つまらないトラブルで完成させるまでに無駄な時間を費やしたが、
出来上がりは充分満足できるものとなったので紹介する。
ガーデニング照明具に学ぶ
ガーデニング・ライトの内部

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左の写真が持ち込まれた照明具の中身である。Ni-Cd1個でLEDを点灯させ、Cdsセンサーで夜間照明のコントロールをしているようだ。
そのための回路がトランジスター3個で構成されている。早速回路を調べたのだが、納得の行く結果が得られない。使われているトランジスタをNET検索で調べ
漸く回路が出来上がった。自分の持つ常識でトランジスタの端子配列を決めていたのが原因だった。
(E-C-Bの配列が普通のTrだが使われていたトランジスタはE-B-Cと配列されていた)
基板からコピーした全回路を右下の図に示しておく。誰が考えたのかシンプルながらも上手く機能し、無駄のない回路構成である。
これを利用し我が目的の達成に役立せてもらう事にした。
照明具の全回路図

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回路図の作成・観測
照明具の回路から目的に必要な部分だけを取り出し作成したのが左下の回路図である。トランジスタ2個・コンデンサー2個・抵抗3個・
インダクタンス1個のこれもシンプルそのものである。使用したトランジスタはジャンク基板から取り外した部品で技術的な根拠は存在しない。
ただしPNPとNPNの使い分けだけは間違わないようにする必要がある。(製作過程で実の所えらく手間取ってしまった。
思い込みから来る錯覚でPNPとNPNを逆に使ってしまい発振せず、部品1個ずつチェックする羽目に陥ってしまった。
今年に入って2回目の思い込みから来る失敗である。)
回路図に基づき製作した現物の出力波形を示しておく。ついでに測定した電流を記載しておいた。
LED点灯回路と出力波形
回路図 | 負荷時の波形(p-p=3.2V)
消費電流=18mA | 無負荷時の波形(p-p=6V)
消費電流=13mA |
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LEDの仕様が不明のため推察になるが、負荷時出力波形の電圧値はLEDの順方向電圧値と一致するものと思う。
この時LEDに流れている電流は8mAであった。また無負荷時の電圧はプラス方向が5Vを示している。
電源電圧は1.25V(NI−Cd使用)だったので4倍に電圧がブースとされている事になる。
LED点灯とは異なった用途へDC/DCコンバーターとして利用できそうだ。その応用例を近々披露できるものと思う。お楽しみに!(06/01/10完)
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ソーラーバッテリーで 鉛蓄電池の補充電
ソーラー式バッテリー充電器

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鉛蓄電池は1日およそ0.1%の自己放電がある。また鉛蓄電池の保存には常時FULL充電状態が理想と言われている。さすれば、
長期間利用されない単身赴任者の車・冬場は乗らないバイク等のバッテリーは滅茶苦茶な扱いを受けていることになる。
子供が所有するバイクがこれに該当し余りにも可愛そうなので、捨てられる寸前のソーラーバッテリーを使い、補充電に挑戦した。
そして、何とか目的達成したので以下に紹介する。
ソーラーパネル
修復された太陽電池

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右の写真は右側が持ち込まれた時のソーラーパネルで表面が風化している。左が風化した表面をコンパウンドで磨き発電機能を取り戻したパネルである。
修復したパネルの能力を測ってみた結果、起電力は2V、短絡出力電流は100mAが観測された。何とかなりそうな微妙な発電能力だ。
鉛蓄電池の自己放電は1日あたり0.1%といわれている。例えば50AHのバッテリーを補充電するなら、1日あたり50mAH、
即ち5mAの充電電流で10時間充電してやれば良い事になる。この時に必要な電力はバッテリー電圧を12Vとすると[12V×5mA=60mW]となる。一方修復した太陽電池は200mW(2V×100mA)発電してくれるから総合変換効率が30%以上の
DC/DCコンバーターが実現できれば目的が達成される計算となる。2Vと低い電圧での動作領域なので可能性は見通せないが実に魅力あるテーマでは無いか!。
高い変換電圧を得る回路
充電昇圧回路

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DC/DCコンバーターに使われるICは数多くある。しかし、ありあわせの部品でで実現するのがシーラカンスの流儀である。
既述のLEDの点灯回路では電源電圧の4倍の出力を観測していた。しかし12Vのバッテリーを充電するにはこの電圧では不十分である。
そこでこの点灯回路で種々実験してみた。その結果、電圧を高くするにはコイルのインダクタンスを大きくすればよい事が判ってきた。
ところがインダクタンスを大きくするにつれエミッタ-ベース間に加わる逆耐電圧も大きくなり規格をオーバーしてしまう。これを保護すべくベースエミッタ間にダイオードを接続してみた。そのとたん、発生する電圧が非常に大きくなってきたのだ。実の所、理屈が全くわかっていないのだが結果は素直に利用すべきだ。
最終の回路図を上に示したが、殆どLED点灯回路と殆ど同じで、ダイオード2個とコンデンサー1個
が追加されているだけである。この回路でコイルを1mHとし2Vの電源電圧でドライブした時、無負荷の出力電圧は65Vを観測した。
電圧だけであれば330µHでも十分であるが充電電流を大きくするためにはロスの少ないコイルが必要で、手持ちの部品の中でACラインフィルターに使われる1mHが一番手ごろなため使用する事にした。
組み立と測定結果
全回路部品と組付け内部

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38×20mmの基板に全部品を搭載した。といっても全部で12点だから知れたものだ。ソーラーパネルは元の照明ライトのケースに再組付けし、
出来上がった基板を取り付けた。使用部品と完成品の内部を右に示しておく。
完成した回路をソーラーパネルの出力電圧2Vで動作させた時、
目標とする充電能力が得られるかどうか確認する必要がある。ところが2Vの電源電圧を得る手段が無い。止む無くジャンク基板を漁り、
ローム製の「BA00AST」なる5端子のシリースレギュレータICを発見、早速基板から取り外し2V電源を作ることにした。
同ICの仕様がはっきりしないのでローム社のサイトから類似する型名のICを探しその技術資料をベースに立派な可変直流電源(1・25V−12V)が完成した。
これもシーラカンス流儀で無ければ作り出せばよいのだ。(電源回路に興味ある方はここをクリック、別画面で表示します)
この電源を使って早速測定し、得られた結果を下表に示す。
(*)負荷バッテリー・電圧12V
電源電圧 |
1次電流 |
消費電力 |
*充電電流 |
充電電力 |
効率 |
2・0V |
90mA |
180mW |
5.6mA |
67mW |
37% |
実際に太陽光をソーラーパネルに当て、充電電流を最大となるよう角度調整すると略同じデータが得られた。冬場で日光が弱く50AHのバッテリーには十分と言えないが小型自動車やバイクに対しては十分役に立つ補充電が見込める。数AHクラスのバッテリーでは夏場には過充電になる可能性もある。早く確認してみたいものだが若しそうであればツエナーダイオードで防止可能である。(06/01/24完)
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