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乳がんからあなたをまもりたい ――
  はじめに
 甲状腺のはたらき
 甲状腺の病気
 バセドウ病と橋本病

乳がんからあなたをまもりたい ――


バセドウ病と橋本病


ここでは、甲状腺の病気の中で最も代表的なバセドウ病と橋本病について説明します。
この2つは自己免疫で起こる病気です。
免疫というのは、はしかに一度かかったら二度かからないというように、体を守るためにあるものです。
そしてこの体を守るための免疫反応が体にとって悪い方向に働く状態をアレルギーといいます。
このアレルギー反応というのは、花粉症のように体の外のものに対して起こるものなのですが、その反応が自分の体の組織に対して起きてしまった結果、病気になってしまうことがあります。それを自己免疫疾患というのです。
バセドウ病や橋本病は自分の甲状腺にアレルギー反応を起こしたために起きてくる病気なのです。


バセドウ病
甲状腺機能亢進症の代表的な病気がバセドウ病です。

この病気は、甲状腺臓器の特異性な自己免疫疾患のひとつで、自己の甲状腺に対する抗体(抗TSH抗体)が甲状腺を 刺激するために甲状腺が腫大し、ホルモンの産生、分泌が亢進する疾患と されています。1000人中2〜6人いると言われており、女性患者が男性患者より5倍と多いのも特徴です。

バセドウ病では、甲状腺ホルモンが大量に産生されますので甲状腺機能亢進症となります。
甲状腺ホルモンは、体の代謝に重要なホルモンですが、多すぎると代謝が異常に亢進した状態、例えば激しい運動をした時のような症状がでます。食べても食べても体重が減り、疲れやすくなるのが特徴です。脈が速くいつも動悸を感じ、汗が多く、手のふるえを自覚します。ほとんどの例で甲状腺が腫れます。このはれを甲状腺腫といい、バセドウ病では全体に腫れるのでびまん性甲状腺腫といいます。また、眼の症状もバセドウ病の特徴の一つです。まぶたが腫れる眼瞼浮腫、眼球が飛び出す眼球突出などがよく見られる症状ですが、進行すると眼球運動に支障をきたし、ものが二重に見える複視や、視神経が圧迫されて視力低下をきたす重症例もあります。

バセドウ病の治療
甲状腺の働きが活発になり過ぎるバセドウ病の治療は、甲状腺ホルモンが過剰につくられないようするものです。バセドウ病の治療方法には、抗甲状腺剤の内服、手術(甲状腺亜全摘術)、アイソトープ治療(放射性ヨード内服)の3つの治療法がありますが、病気の程度やライフスタイルによって選択は異なります。

(1)抗甲状腺薬:甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬です。
           MMI(メルカゾール)とPTU(チウラジール・プロパジール)があります。
(2)甲状腺亜全摘術:手術で甲状腺を約5g程度残して切除します。
(3) アイソトープ療法:放射線による治療ですが、内照射といって薬を飲んで
          甲状腺内部から照射する方法です。


どの治療法を選ぶにしても、ポイントは甲状腺ホルモンを正常な量にコントロールする事です。
治療の効果が出て甲状腺ホルモン量が正常になれば、健康な人と変わらない生活ができます。



橋本病
甲状腺機能低下症の代表的な病気が橋本病です。

こちらも女性に多い病気で、成人女性20〜30人にひとり程度の頻度でみられます。
男性では女性に比べて約20分の1程度の人にしか発症しません。

橋本病では通常甲状腺が全体的に腫れており、びまん性甲状腺腫といわれます。稀に甲状腺の腫れがなく、逆に萎縮している場合もあります。炎症があるといっても、通常は甲状腺に痛みがあるわけではなく腫れているだけです。炎症がひどくなくて甲状腺機能が正常に保たれているときは、甲状腺腫以外には症状はありません。また無症状のことも多いので自分では気づかないことがよくあります。

甲状腺が腫大したり、のどの違和感を訴え橋本病と診断されても、すべての橋本病が甲状腺機能低下症を伴うわけではありません。約40%の人に機能異常があります。甲状腺機能が低下してきますと様々な症状が出現します。甲状腺ホルモンは、体の代謝を司り、体中のほぼすべての細胞が必要としていますので、欠乏すると体全体の働きが低下してきます。甲状腺機能低下症の症状を以下にまとめてみました。


 全身症状  だるい、疲れやすい、動作が鈍い、寒がり、体重増加、声かれ、低体温
 顔つき・首  むくみ、甲状腺腫大、のどの違和感
 神経・脳  物忘れ、無気力、眠気、思考力低下、反射遅延、昏睡 
 循環器  徐脈、息切れ、むくみ、心肥大
 消化器  食欲低下、舌が肥大、便秘
 皮膚  汗がでない、皮膚乾燥、脱毛、眉が薄くなる、皮膚の蒼白
 筋肉・骨  脱力感、筋力低下、肩こり、筋肉の疲れ
 月経  月経不順、月経過多
 血液値  コレステロール上昇、肝障害、貧血

橋本病の治療
橋本病で治療が必要なのは、@甲状腺が腫れて大きくなり、のどに違和感がある場合、A甲状腺機能が低下している場合です。
@の場合では、甲状腺ホルモン剤を服用して様子を見ますが、甲状腺が大きくなって気管を狭窄している場合は手術が必要になる場合があります。
Aの場合では、甲状腺ホルモン剤を服用して不足しているホルモンを補充します。補充療法ですから、根本的に治癒しない為に、一生毎日薬を飲み続けて頂く事となります。
橋本病は、甲状腺機能が正常な人は治療の必要はありません。しかし、将来甲状腺ホルモンが低下する可能性があるので、3〜6ヶ月に1度ずつ診察を受ける必要があります。