1.はじめに
SPANAは紫外・可視領域の各種スペクトルを解析するためのプログラムである。a) プログラム本体はMicrosoft Visual Basicで書かれていて、通常のインストール操作によって、標準的なWINDOWS上で作動する。b) プログラムのスムーズな操作のためには500MB以上のメモリーを実装したシステムを使用することが望まれる。
SPANAはASCIIコードで書かれた一定分解能で最大10001点のデータを持つスペクトルデータを最大500本のデータ・チャンネル(Ch.0
- Ch.499)に読み込み、それらのスペクトルの解析を行う。一般のスペクトル・データのデータの読み込みは"*.*"タイプのファイルとして表示される任意のテキスト・ファイルに対してデータ構造を指示して読み込むがc)、Spread-sheetタイプのデータはExcell等の”*.csv"ファイルと互換性のある”*.TAB”ファイルとして読み込むことも出来る。SPANAで処理したデータは下記の"*.DAT"、"*.ANA"、"*.HRS"等として保存される。d)
a) SPANAは一般に一定分解能の横軸に対して任意の物理量を縦軸とする数値データが与えられている2次元データであれば、電子スペクトル以外の任意のデータも取り扱うことが出来る(ex.
chromatography data)。
b) WINDOWSのバージョンによる標準フォントの相違から、画面上で文字化けやエラーを生じる場合、添付のWINDOWS用Font (Arial,
MS Sans Serif, MS Serif, WINGDNG3, Symbol) をWINDOWS-FONTS フォルダーに配置する。また、LINUX
(Ubuntu + Wine)上でもこれらのフォントをシステムに組み入れると作動する。
c) Ver. 5.3.73より、可変分解能データをSPANAの固定分解能データに変換補正して読み込む機能が追加されている。
d) 各社分光器固有のフォーマットを持つ下記のデータは拡張子を指定して直接読み込むことが出来るが、それ以外の分光器固有のデータについては一般textファイルとして読み込む。
2.SPANAによって取り扱うことの出来るスペクトル・ファイル
SPANA はスペクトルデータをそのファイル拡張子によって判別してプログラム内に読み込む。現バージョンで識別されるデータ・ファイルと拡張子の関係を以下に示す。
Data Type | File Extension |
一般テキスト・ファイル(読み込み) | |
Text File written by ASCII Codes (constant and variable resolution) |
* . * a) |
SPANA作成データ | |
SPANA Standard File (1nm resolution) | *.ANA |
SPANA High Resolution file (0.5nm resolution) | *.HRS |
SPANA Spreadsheet File (arbitrary (read) 0.5nm (write) resolution) |
*.TAB b) |
SPANA Universal File (arbitrary (write) multi (read) resolution) |
*.DAT c) |
SPANA Data File for Least Square Calculation) | *.LSQ |
分光器データ | |
Shimazu UV File | *.UVD |
Shimazu Time Course File | *.3D |
Hitachi Fluorescence File | *.FSD |
Hewlett Packard UV File | *.WAV |
Hewlett Packard Time Course File | *.TIM |
JASCO CD File | *.JAC |
JASCO UV & Fluorescence Text File | *.TXT |
3.スペクトルデータ と SPANA のスペクトル領域および分解能
SPANAは標準で180nmを最短波長(Base Coordinate)として0.5nmの分解能(Resolution)をもつ最大10001点から成るデータを取り扱う。従って、標準ではスペクトルの領域は
180nm 〜 5180nm (= 180 + 0.5 x 10000) 内になくてはならない。データの分解能が0.5nmに満たない場合は3次のスプライン補間によって0.5nm分解能のデータに変換して読み込まれる。
標準のスペクトル領域、分解能と異なるスペクトルを読み込む場合は、SPANAのFile-Settings-Spectrum SettingsメニューからBase Coordinate および Resolution を変更する。
これらの変更によってSPANAは
[Base Coordinate] 〜 [Base Coordinate + Resolution x 10000]
の領域のスペクトルを取り扱うことが出来るようになるが、この場合読み込むことの出来るファイル形式は "*.DAT" および "* . *"に限られる。前者はファイル内に、後者は読み込み時に分解能を指定することで任意の分解能のデータを読み込むことが出来る。a)
また、Base Coordinate および Resolution の変更時、既に読み込まれているスペクトルがあると、それらスペクトルは設定されたBase
Coordinate および Resolutionに合わせて3次スプライン補間による修正が加えられる。あるいは、SPANAで設定された分解能と異なるスペクトルデータ・ファイルを読み込むと、同様に3次スプライン補間によってSPANAの分解能に変換して読み込む。従って、この機能によって分解能の異なるスペクトルをSPANA上で一括して表示、解析、処理することが出来る。b)
a) データとSPANAの設定スペクトル領域に整合性がないとエラーを生じるので、Base Coordinate および Resolution
を変更する場合、スペクトルの領域・分解能についてユーザーは十分に把握していることが必要である。
b) SPANAによるスプライン補間は3次曲線への当てはめによる推定・補間・修正で、データの真値と完全に一致するものではないが、多くの場合修正はデータの誤差範囲内の差異しか生じない。しかし、SPANAとデータの分解能が極端に異なるとスペクトルに歪を生じる可能性がある。
4.SPANAにおけるスペクトル演算
SPANAは読み込んだスペクトルに対して以下の演算を行う。
a) スペクトル強度に対する定数の四則演算
b) 2つのスペクトル間の四則演算
c) スペクトル強度の逆数、指数、Log変換
d) スペクトルの正規化
e) スペクトルの微分、積分
f) スペクトルのスムージング、ベースライン推定 (BEADS)
g) スペクトルの波長シフト
h) スペクトルの面積・重なり面積の算出
i )波形分割演算
j )スペクトル間の重回帰分析および主成分分析
etc.
5.SPANAのスペクトル表示
SPANAは以下のスペクトル表示機能をもつ。
a) 表示エリア(強度、波長)の指定。
(通常、SPANAの波長軸はnm、強度軸はAbsorbanceが想定されているが、
プログラムでは読み込むスペクトルに応じて任意の波長(相当)・時間軸、強度軸等の
エリアを指定することが出来る。)
b) 波長、強度軸の目盛指定およびグリッドの有無
c) スペクトルの表示色の指定
d) 波長モードで読み込まれたスペクトルの波数モードでの表示 (vice versa)(表示のみ)
e) 表示スペクトルのプリント出力およびPDFプリンターを初めとする仮想プリンターによる画像ファイル出力
f ) 複数のスペクトルの3次元表示
6.SPANAの解析およびグラフ作成機能
SPANAは読み込んだスペクトル・データについて以下の解析を行う。
a) "Analyses"の項に示した滴定や速度モデルを適用した解析。
b) 解析の結果について、測定データと理論曲線のグラフ化表示。
c) 解析結果に基づく化学種の濃度変化の算出およびグラフ表示。
(グラフ表示の縦・横軸の逆数および対数変換を含む。)
d) 解析結果に基づく滴定の中間体や錯体のスペクトルの推定。
e) スペクトルの波形分割
その他、SPANAは外部プログラムとしてユーザーによって定義された理論値演算関数を用いた一般データに対する最小二乗最適化演算プラットフォームの機能を持つ。