
成年後見制度は、精神上の障害により判断能力が十分でない方の保護を図りつつ自己決定権の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーション(障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作る)の理念をその趣旨としています。
平成30年における成年後見関係事件の申立件数は、約3万6000件、同年末時点の成年後見制度の利用者は、22万人を超え、ここ数年は毎年1万人以上のペースで増加しています。
日本は超高齢化社会に突入していますので、今後も利用者数の増加が見込まれます。
尚、男女別割合は、男性が約4割、女性が約6割となっており、男女共80歳以上の利用者が最も多く、65歳以上の利用者は、男性では男性全体の6割以上、女性では女性全体の8割以上を占めています。
法定後見制度は、「後見、保佐、補助」の3つに分かれ、本人の精神上の障害の程度によって区別されます。なお、申立全体の約8割が後見で、保佐、補助は2割弱となります。
【後見】ほとんど判断できない人を対象としています。
精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)によって判断能力を欠く常況にある者を保護します。概ね、常に自分で判断して法律行為をすることができないという場合です。
家庭裁判所は本人のために成年後見人を選任し、成年後見人は本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができます。
また、成年後見人又は本人は、本人が自ら行った法律行為に関しては日常行為に関するものを除いて取り消すことができます。
【保佐】判断能力が著しく不十分な人を対象としています。
精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)によって判断能力が特に不十分な者を保護します。簡単なことであれば自分で判断できるが、法律で定められた一定の重要な事項については援助してもらわないとできないという場合です。
家庭裁判所は本人のために保佐人を選任し、さらに、保佐人に対して当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権を与えることができます。
また、保佐人又は本人は、本人が自ら行った重要な法律行為に関しては取り消すことができます。
【補助】判断能力が不十分な人を対象としています。
精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)によって判断能力が不十分な者を保護します。大抵のことは自分で判断できるが、難しい事項については援助してもらわないとできないという場合です。
家庭裁判所は本人のために補助人を選任し、補助人には当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権又は同意権(取消権)を与えることができます。
後見人の仕事には、大きく分けて「財産管理」と「身上監護」の2つがあります。「財産管理」とは、文字どおり本人の預貯金の管理であり、具体的には通帳や印鑑、カードを後見人が預かり保管するということ。
「身上監護」とは、介護施設等への入居手続を言いますが、現実の介護行為は含まれません。
尚、食料品や衣料品等を購入するような日常生活に関する行為については、前述のとおり本人が自由におこなうことができます。
また、本人の居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必要となります。ここでいう「処分」は売買だけでなく、賃貸借や抵当権の設定等の行為も含まれます。
後見人に就任するのに特別な資格や研修は必要ありません。
よって、基本的には誰でも後見人になることができます。
但し、以下の事由に該当する者は後見人にはなれません。
※未成年者
※破産者(すでに免責許可決定を受けていれば大丈夫です)
※被後見人に対し訴訟をし、又はした者、及びその配偶者並びに直系血族
成年後見制度が始まった当初は、本人の親族が成年後見人に就任することがほとんどでしたが、平成24年には親族以外の第三者が成年後見人に選任される件数が全体の約52%となり、制度開始以来、初めて第三者後見人の割合が親族後見人を超え、今も増加傾向にあります。
専門職後見人とは、司法書士や弁護士、社会福祉士等の専門家が後見人になることをいいます。もし、本人の近い親族で後見人になれる適当な人材がみつからない場合は、専門職後見人が家裁により選任されることになります。
尚、子供や兄弟姉妹が後見人になった場合、報酬を請求しないことも多いですが、司法書士等の専門職が後見人になると、本人の資産の中から報酬を支払うこととなります。
但し、金額については後見人が勝手に決めることはできず、家裁が本人の資産額や後見人の業務量に応じて決定し、一月当たり2~3万円が平均です。
宝塚市、西宮市近郊にお住まいで、親族の中に後見人になれる適当な人材がいない場合はお気軽にご相談ください。
○申立書類一覧
※登記事項証明書は、東京法務局が発行する後見開始の審判等を受けていないかあるいは既に受けているかについての証明書のことです。
※身分証明書は、本籍地の役所が発行する破産宣告を受けていない旨の証明書のことです。
申立人、本人、成年後見人(保佐人、補助人)候補者が家庭裁判所に呼ばれて事情を聞かれます。
実際に精神鑑定がおこなわれるのは稀で、申立て全体の約1割に過ぎません。
申立書に記載した成年後見人(保佐人、補助人)候補者がそのまま選任されることも多いですが、場合によっては家庭裁判所の判断により弁護士や司法書士等が選任されることもあります。
裁判所から審判書謄本をもらいます。
東京法務局にその旨の登記がされます。