ほ場整備後何年も経った畦畔への苗定植方法

 過去にほ場整備され、既に雑草が繁茂し、刈払いで管理している畦畔では、雑草を刈り払い除去しても種子ではほとんど発芽しないことが確認されました。
 原因はアリがは種した種子を巣穴に運び込むためです。
 アリの害を回避するためには、一旦セルトレーなどで育てた苗を植えつける方法と、1cm深程度の作条は種または点播覆土法があります。作条または点播は覆土厚の加減などでやや不安定なことから、以下には最も確実な育苗定植方法を紹介します。

アリの頭の上の赤いのがセンチピードグラスの種

1 育苗方法
 必要苗数は30cm角で植え付けるため余分をみて12〜15本(穴)/1平方メートル。 育苗方法は、200穴程度のセルトレー育苗。用土はできるだけ植付る畦畔土壌に性質の近い用土がベターですが、市販の園芸用培土でも何でもよく育ちます。自家採土する場合は2mm程度の篩い目を通したものを使います。肥料は市販の用土に追加する必要はありません、自家で採土した用土は無肥料で十分です。
 種播きは一穴に3〜5粒程度は種し、5ミリ程度に薄く覆土し軽く鎮圧し、たっぷりと灌水します。出来れば新聞紙で覆うなどして5〜7日程度は常に湿った状態で発芽を促します。品種選択はココをクリックしてください
 発芽後は十分陽が当たる場所で、朝晩の灌水をします。セルトレーに新聞をかけていてもアリが運び去ってしまうことが、千葉県で確認されていますから、育苗でもアリに気を付けてください。本葉が出はじめたら、セルの排水穴から根が出ないように、トレーを浮かせます。これによってセル土壌が乾燥しやすくなりますので、場合によっては日中にも灌水をするなどして、ストレスをかけずに、根鉢が固く形成された草丈5センチ以上の大苗を作りましょう。大苗ほどが定植後の活着と成長が確実です。

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2 定植畦畔の雑草処理方法
 なお、センチピードグラス苗植付畦畔の雑草種類によって、下表のようにすこし植付前の準備作業と必要期間が異なります。多年生雑草で地下部に栄養体をもつセイタカアワダチソウやクズなどの除草剤に対して強い雑草が繁茂する畦畔や土手では、退治期間を一年間設けるなどして徹底的に無くす必要があります。基本的な処理方法を下表にまとめましたので参考にしてください。 

植え付け前の除草等の作業パターン

 

   type A

   type B

   type C

 雑

 草

一年草
除草剤に弱い多年草
除草剤に強い多年草

    ○
    △(少し)
    ―(無い)

    
    ○

    ―

    △(少し)
    ○
    ◎(多い)

 植付までの必要期間

   1週間

   1ヶ月

    1年

除草等の植付前作業

  除草剤散布
    ↓
  (4日後)
地際で雑草刈り払い
と除去、植付(直後播種可)
 

  除草剤散布
    ↓
  (4日後)
 地際で雑草刈り払いと除去
    ↓
  (3週間後)
再萌芽雑草への除草剤散布、植付(直後播種可)

   除草剤散布
     ↓
  (4日後)
地際で雑草刈り払い
と除去
     ↓
以後植付直前まで雑草再萌芽の都度除草剤散布、刈払いと除去を繰り返す
     ↓
   (翌年5月〜)
   苗を植付

セイタカアワダチソウ

     補-1 除草剤は、グリホサート剤など根まで枯らすものを使います。
     補-2 強い多年生雑草にはセイタカアワダチソウ、クズなどの地下部に栄養体をもつものです。 

 定植方法
 
雑草や地ぎわのコケを除去し、確実に畦畔土壌とセル苗の根鉢が密着するようにした畦畔に、棒などでセル苗の根鉢よりわずかに小さな植穴を開け、根鉢を差し込んで定植します。植穴に雑草やコケのカスが残っていて、土壌と密着していないと活着せずに枯れてしまいます。日照り続きで畦畔土壌が乾燥している場合は、植穴を開けてから、灌水してから、良く湿らせたセル苗を植えましょう。 

4 マルチについて
 
活着後の初期生育時の雑草との競合を回避するために、黒マルチを貼ることは効果的です。マルチの材質は、出来れば六ヶ月〜九ヶ月で分解するものが良く、ポリマルチでは、ランナーの分岐根が貫通せず、繁茂を妨げますので、ランナーがマルチ上にほぼ広がったらマルチを剥ぎ取る必要があります。なお、分解性マルチ、ポリマルチともにマルチが無くなってから、センチピードグラスの完全な被覆と雑草抑制力の発現までの間の雑草の刈払いや多年生雑草のひき抜きは多かれ少なかれ必要です。
 マルチ抑え具の工夫、マルチ定植の勘所はこちらをクリックしてご覧ください。

 競合雑草と施肥等の管理
 
活着後の肥培管理、競合雑草管理は、ほ場整備直後の播種法に準じます。こちらをクリックしてください。
 なお、育苗用土のところで、植付畦畔土壌と性質の似たものがベターであると書きましたが、セル苗の根鉢土壌と畦畔土壌の性質が違うと、よく定植した年は活着はするものの、ランナーの発生がほとんど無い停滞状態になることが観察されています。ただ、定植翌年には、ランナーが発生し始めますから、少しブレーキがかかる程度ともいえます。

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