播種または定植後の管理と「信じる心」

0 発芽と初期生長の特徴
1 雑草対策

1)一年生雑草雑草は伸びたら刈る

2)多年生雑草は見つけたら根からひき抜く  
2 積極施肥 1)繁茂までは積極的に 2)「雑草に吸われてしまう」は間違い! 3)繁茂後は無肥料が基本

0 遅い発芽と極めて緩慢な初期成長

 発芽までの日数は、梅雨の時期でも約20日程度を要します。4月中旬播種では30日程度もかかります。なお、参考にシャーレの発芽試験では、5月の室内窓際で5日もあれば初生葉が揃います。

 発芽後ランナーが出始めるまでの成長は、他のイネ科雑草に比べて、まるで止まっているかのような遅さです。夏の日照りには、成長を止めて耐えていますので、目に見えて成長するのは秋になってからです。
 こんな発芽後の成長ですから、雑草に負けてしまうと早合点しがちなのは当然です。しかし、イネ科雑草は秋には枯れてしまい、翌春に一からスタートしますので、決して後退せず、足し算のみのセンチピードグラスが勝ってしまうわけです。
 1年を一日として、センチピードグラスとイネ科雑草が山登りをしたと考えてみてください。センチピードグラスは夜(冬)には止まりますが、翌朝(春)にはまた登り始めます。しかし、イネ科雑草は夜(冬)には登山口まで後戻りして朝(翌春)には一から登り始めなければなりません。これが歩みの遅いセンチピードグラスがウサギのように早く成長する雑草に勝つ秘密です。

1 競合雑草の刈り払いと多年生強雑草のひき抜き

1)一年生雑草は伸びたら刈る
 競合する雑草に比べて、初期生育のきわめて緩慢なセンチピードグラスを成長させるためには、より早く成長する雑草に陽光を遮られないようにすることが大切です。
 雑草が多い畦畔でも、心配することはありません。
 雑草が20〜30cm程度に伸び、地際の小さなセンチピードグラスに陽光が届きにくくなったら、5〜10cm程度の高さで刈り払います。刈草は必ず取り除きます。ナイロンカッターで刈れば、粉々になって取り除く手間が省けます。
 草刈りのタイミングは発芽後までの6月、発芽後の7月、8月、9月の4回程度です。6〜7月の雑草が良く育つ期間にはもう一回追加する必要があるかも知れません。
 
 メヒシバ、オヒシバ、エノコログサ、ヒエといったイネ科の一年生雑草が多いと、小さなセンチピードグラスは大丈夫だろうかと大変気をもみます。ほ場整備後に播種する合意をとりまとめられた役員さん達が一番悩まれるところです。
 しかし、相手が一年生雑草雑草であれば、センチピードグラスの発芽または定植株数が1平方メートルあたり10株以上であれば、必ず、絶対に翌年センチピードグラスが勝ちます。この仕組みは、一年生雑草が晩秋には枯れてしまうことと、翌年はこぼれた種から一から生長しなければならないのに対して、センチピードグラスは冬でも成長を止めているだけで生きていて、翌春には1年目に成長した先から成長を始められるためです。

 このことは、経験がないととても信じられないほどの「一発逆転劇」です。その事例はここをクリックしてご覧ください。2001年に播種した志賀町木戸の南端地区での「センチピードグラスマジック」です。ここは、センチピードグラス播種前年夏にほ場整備され、メヒシバなどの一年生雑草がびっしり生えて、種をどっさりこぼしたため、こんなに激しい競合がおこりました。でも驚くばかりの逆転劇でしたので、みなさんも必ずセンチピードグラスが勝つことを信じてください。
 
なお、雑草の種が少なく、まばらにしか生えていない畦畔ではほとんど草刈りをせずとも、陽光が届きますので、翌年に種をこぼさないために刈り払う程度です。

2)多年生雑草は見つけたら根からひき抜く
 セイタカアワダチソウ、クズなどの根に栄養体を持つ除草剤にも強い多年生雑草は、見つけ次第根を残さないようにひき抜きます。小さなうちにひき抜かないと、根が残ってなかなか絶やすことが出来ません。
 他の多年生雑草では、スギナ、白クローバーなどは、ひき抜いて根絶することは出来ません。この二つは仕方がないのでセンチピードグラスと共生してもやむなしと考えましょう。センチピードグラスを覆ったり、センチピードグラスより高く伸びて見苦しいのであれば、一度センチピードグラスの高さに刈り戻しましょう。
 ヨモギはセンチピードグラスの他感作用によって弱ってしまうようです。

2 積極的な施肥

1)繁茂までは積極的に
 発芽後一回、夏の乾燥期を除き、9月、10月、11月の生育期に月1回程度施肥することで、センチピードグラス成長を目に見えて早めることが出来ます。平均して播種翌年夏にはほぼ被覆しますが、畦畔によっては更にもう一年かかるところもありますので、繁茂するまで施肥を続けましょう。播種翌年の施肥開始は、センチピードグラスの成長が再開する3月から始めましょう。
 施肥量は、畦畔100平方メートル当たり化成肥料(チッソ含量10%〜20%)1kgが基準です。しかし山を切ったままや、山土を客土したようなやせた畦畔土壌では、基準量の数倍を施肥するなどして、早期の被覆を促しましょう。
 肥料の種類は、何でも良いようです。シバの研究をする機関に問い合わせた際には、アンモニア態チッソと硝酸態チッソの別は無いとのことで、そこでは尿素化成を使っているとのことでした。

2)「雑草に吸われてしまう」は大間違い!
 そのとおりで雑草にも吸われますが、シバを育てるために施肥しましょう。雑草は刈り払えば済みます。繰り返しますが、早期被覆のために、雑草にも吸われても、積極的な施肥が必要です。
 右画像のように、メヒシバの間に針のように細いセンチピードグラスが成長を始めました。こんなに雑草がいっぱいでも、積極的に施肥します。
3)繁茂後は無肥料が基本 
 被覆後の施肥は、基本的にはかえって過繁茂や肥焼け、リゾクトニア菌といった感染力が弱い土壌菌による坪枯れを引きおこしますのでやめます。(右画像は過剰(基準の100倍程度)施肥が原因で坪枯れ下した様子)
 しかし、葉色が淡くなって、シバの茎葉の厚みが無くなり、雑草の再侵入が防げなくなるようでしたら、春と秋の年二回程度、畦畔100平方メートル当たり化成肥料1kg程度施肥し、栄養状態を回復させましょう。

真ん中の白いのが肥当たり

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